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"KK・NOW" 再稼働 するの?できるの? No12

“KK・NOW”柏崎刈羽原発の今シリーズ
「再稼働するの? できるの?」No12 第2楽章-4>

第2楽章―4 中越沖地震後に再稼働した1,5,6,7号機の安全性は確保されているのか

① 東電の点検(その4)

榎本聰明氏(1995年当時KK所長、2002年には東電副社長・原子力本部長)は著書「原子力発電がよくわかる本」(オーム社)のなかで、原発建屋内を「無数の配管機器類の配置…」と表しています。

原発を動かす電力会社はその「無数の配管機器類」を、日常運転時に管理し、定期検査時には点検・補修せねばなりません。でも「無数の配管機器類」の全てを一つ一つ点検していたら定期検査にかかる日数は1年を超えるでしょう。

原発は12~13か月間運転すると定期検査に入りますから、定期検査が運転期間と同じくらいかかるようでは、稼働率50%となり、極めて経済効率の悪い発電方法に落ち込んでしまいます。

稼働率をあげるためには、定期検査期間をできるだけ短縮する必要があり、それはとりもなおさず点検の簡略化と、現場の作業員の被ばく過密労働につながります。

点検の簡略化は、点検を必要最小限にすることです。技術的にぎりぎりまで点検を値切る、どこまで値切るかの判断に使われるのがエンジニアリング・ジャッジメント(技術的に妥当だとする判断)なのだろうと思います。

東電の点検を検証する新潟県技術委員会設備小委員会の委員の一人に、7号機燃料集合体の点検(872体中20本のみ点検)について「それで点検したことになるのか?」と訊いたとき、その委員は少し困ったような表情を浮かべて「技術的にはそれで十分ということになっている」と言いました。“原子力ムラ”とよばれる集団に属しながら、小委員会では“県民にとっての安全安心な原発を目指す”発言をするその委員の顔を見ながら、私は「エンジニアリング・ジャッジメントとは、原発の経済効率性を保障するための“おすみつき”なのだ」と思いました。

今日は前回の ④点検の実際 の続きです。

● 東電の点検実態 ④点検の実際

前回は、“基本点検とされている目視点検等”の実際を取り上げました。
今日は“地震応答解析”の実際です。

中越沖地震で設備・機器・建物・構築物にはどのような力が加わったのか、新たな基準地震動ではどのような力が加わるのかを、簡略化したモデルを作り条件を仮定してコンピュータ計算で求めるのが「地震応答解析」です。

・設備健全性の地震応答解析: 中越沖地震で設備・機器・建物・構築物にはどのような力が加わったのかを計算します。

解析の結果が“ⅢAS(弾性限界:変形しても元に戻る)”の範囲内であれば“健全だ”となります。

ⅢASを超えた場合は、再度解析をやりなおす、追加的な点検を実施する ことになります。

・耐震安全性の地震応答解析: 新たな基準地震動ではどのような力が加わるのかを計算します。

解析の結果が“ⅣAS(機能維持設計許容限界:変形するが放射能は閉じこめる” の範囲内であれば“耐震性はある”となります。

ⅣASを超えた場合は、解析法を変えてやりなおす、詳細検討をする ことになります。

それぞれの解析の基準とした“ⅢAS、ⅣASを超える”ということは、“機器・設備等は健全でない。中越沖地震で損傷している” “耐震安全性はない。基準地震動級の地震に襲われれば変形をして放射能を閉じ込めておくことはできない”ことを意味しています。

であれば解析結果の結論は、当然“そのままでは使えない”となるはずです。

ところが、上記のように、“ⅢAS、ⅣASを超える”場合は解析に問題があることになり、解析の条件等を変えて“解析のやりなおし”をするというのです。

これでは、最初から“問題はない”と答がだされている“出来レース解析”です。

そしてこの“出来レース解析”は「“KK・NOW” 再稼働するの? できるの? No10」(10月27日)でお伝えした

KK点検方針:
「目で見て壊れていない機器が、コンピュータの計算で“設計時の基準(安全を担保する値)”を越えたら、“この機器は設計時の基準より実力があるのだ”と判断する」
一言で言えば
「外側が傷んでいなければ、基準値を超えても、OKにする」

に則ったものとして、正々堂々まかり通っていったのです。


地震応答解析については、次の問題点も指摘されています。

・ コンピュータ解析はどの程度信頼できるのか(現実を反映しているのか)明確ではない。

・ モデルや条件によって結果は大きく変わる。

・ 東京電力は解析プログラムとそのプロセスを公表していない。よって、東京電力の地震応答解析の妥当性を確認することは不可能となっている。

・ 東京電力の地震応答解析の報告書には、結果がひとつ出ているだけで、それは該当機器のどこの箇所の結果であるのか、条件やモデルはどうなのか等の、評価するための基本的な情報がない。基本的情報がないまま、国の審議会で報告書が承認されていくのは、大きな問題である。


このような点検状況のなかで、被災7基が抱えるいくつかの深刻な問題が明らかになりました。次回は

第2楽章―4 中越沖地震後に再稼働した1,5,6,7号機の安全性は確保されているのか 
② 未解明の問題

をお伝えします。

(11月9日)
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"KK・NOW" 再稼働 するの?できるの? No11

“KK・NOW”柏崎刈羽原発の今シリーズ
「再稼働するの? できるの?」その11 第2楽章-4>

第2楽章―4 中越沖地震後に再稼働した1,5,6,7号機の安全性は確保されているのか

①東電の点検(その3)
中越沖地震のおよそ2か月後、保安院のWG(ワーキング・グループ・検討作業グループ)で“柏崎刈羽原発(KK)被災7基”の点検方針が

「目で見て壊れていない機器が、コンピュータの計算で“設計時の基準(安全を担保する値)”を越えたら、“この機器は設計時の基準より実力があるのだ”と判断する」
一言で言えば
「外側が傷んでいなければ、基準値を超えても、OKにする」

となりました。

● 点検方針の本質

この点検方針のねらいは

・ 機器・設備の経済効率性を低下させない。
・ 点検は目視点検とコンピュータ解析を基本とし、効率化を図り、迅速な再稼働を目指す

でした。

被災7基の点検は、スタートから“経済効率性をモットーとした点検で1日も早い再稼働”を目標とするゆがんだものとなったのです。

基準地震動S2の2~3倍の加速度が原発を襲ったKKの被災は世界で初の原発震災でした。機器・設備はどのような影響を受けたのかを徹底的に検証することこそが、KKのみならず全国の原発の安全性確保にとって必要でした。

そのように主張する科学者や技術者もいましたが、その人達の意見や進言は保安院にも、マスコミにも、もちろん電力業界にも取り上げられることはありませんでした。

とりわけKK7基全機の運転停止が経営を圧迫する東電にとって“時間をかけた丁寧な点検”の主張は“じゃまもの”でした。

国策として原発を推進してきた経産省にとってもKK 7基の早期再稼働は、稼働率の低下を防ぐため日本の技術力を示すため、ひいては国策の正当性をアピールするために必要でした。それは波に乗り始めた“原発輸出”を、中越沖地震による被災の影響で停滞させまいとするメーカーや経済団体からの要請でもありました。

S2を超える地震動にも壊れることがなかったKK7基を目の当たりにした専門家たちのほとんどが、技術力への確信を慢心に変え、周囲の“空気”を巧みにくみ取り、点検方針に疑問や異議を表すことはありませんでした。中越沖地震をきっかけに原発への不信や反対の声が広がることを“科学に無知な愚かさ”ととらえ、専門家集団のオピニオンリーダーの指差す方向に従って自らの学問・研究を進めることが彼らの“生きる道”でした。

● 東電の点検実態 ①点検順序

東電は7基の点検順序を、最新号機(7号機)と使用年数最長号機(1号機)を最初に点検することで被災の全体像をつかみたいとして、7,1号機同時点検→6号機→5号機→3号機→2、4号機、としました。

しかし、点検が開始されるや、7号機の点検のみが先行していきました。

「1号機は一番古い原発なので、設計時の文書等を探すのに時間がかかっている」と言い訳をしていたのですが、「原発輸出の“目玉商品”の7号機(日本が開発したABWR(改良型軽水炉))の安全性確認が喫緊」というのが真の理由であったようです。

● 東電の点検実態 ②点検内容と方法

地震で被災した原発を点検するマニュアルは用意されていませんでしたから(今もそうです)、点検は定期検査として位置づけられました。地震直後の東電のHPにはKK 7基は「定期点検中」となっていました。

点検は、「設備・機器」と「建物・構造物」のそれぞれについて

“設備健全性点検”(地震で健全性は損なわれていないか)と“耐震安全性点検”(将来起きると想定される最大規模の地震に耐えられるか)が実施されました。

・ 「設備・機器」について
“設備健全性点検”(地震で健全性は損なわれていないか):目視点検、作動試験、漏えい試験。安全上重要なものは地震応答解析を実施。
“耐震安全性点検”(将来起きると想定される最大規模の地震に耐えられるか):安全上重要な機器・配管系について基準地震動の揺れによる地震応答解析を実施。

・ 「建物・構造物」について  *設備・機器と同様
“設備健全性点検”(地震で健全性は損なわれていないか):目視点検、作動試験、漏えい試験。安全上重要なものは地震応答解析を実施。 *設備・機器と同様
“耐震安全性点検”(将来起きると想定される最大規模の地震に耐えられるか):安全上重要な建物・構築物について基準地震動の揺れによる地震応答解析を実施。

  *地震応答解析:コンピュータで計算してだした中越沖地震による揺れで機器等がどの程度の加速度を受けたかをコンピュータで計算する。計算結果を設計時の値(ここまでは安全が確保できるという値)と比較する。

● 東電の点検実態 ③点検の範囲

車が追突された、ちょっとへこんだだけだけれど、他にまずい所はないか徹底的に調べなければ安心して運転できませんよね。

まして、原発です。徹底的に隅から隅まで点検しなきゃ…

ところが、実態は…7号機の設備健全性点検では

・ 目視点検等の点検対象機器数:1362
・ 地震応答解析点検対象機器数:635

あの大きな原子炉建屋、タービン建屋等の機器の総数は数万に及ぶそうです。その中のたった1362が点検されただけなのです。

● 東電の点検実態 ④点検の実際

・狭くて作業が困難な箇所、配管等で埋め込みになっている機器、放射線量が高い箇所等は、点検ができません。見える範囲、できる範囲の点検や漏えい試験、近傍の機器等での代替点検で済ませています。

たとえば・・・7号機残留熱除去系配管は地震応答解析で基準値に近かったため、保安院に非破壊試験等の追加点検を指示されましたが(平成20・04・15原因第4号)、放射線量が高く作業は10分程度しかできないので、非破壊試験は不可能で目視点検のみとなりました。

・同一・類似設備・機器は代表点検となっています。

たとえば・・・7号機原子炉冷却材再循環ポンプモータケーシングも、上記の指示(非破壊試験用の追加点検)」の対象でしたが、10台あるポンプのうち代表2台のみファイバースコープで目視点検(放射線量も高く、狭隘部で非破壊検査は不可能であり、現場作業性を考慮すると目視点検を実施するほかなかったようです)しました。原子炉内にある872体の燃料集合体はたった20体(全体の約2%)を点検しただけです。2%程度を点検して「全体で異常はなかった」と結論づけているのが点検の実態です。

・揺れで発生した可能性がある金属内部の目には見えない小さな傷(塑性変形、塑性ひずみとも呼びます)を調べる方法がありません。この傷を放置しておけば、アメリカ・カリフォルニア州の橋が崩壊したように将来突然、疲労破断が起きる可能性もあります。井野博満氏(東京大学名誉教授、柏崎刈羽科学者の会)は「目視点検や、追加点検として実施される非破壊検査で見つかるのはかなり大きなひび割れだけだ。ミクロな塑性変形や脆化は、金属組織学的観察や材料強度試験を実際にやって見なければ解らない。それをするには、原子炉や周辺機器を解体して、試験片を採取することが必要である」と指摘しています。


この“背筋が寒くなるような”、私に言わせれば“手抜き、駆け足などと言うものではない全力疾走”点検を支えているのは「エンジニアリング・ジャッジメント」という思想です。

“技術的に見ればそれで十分”―これが「エンジニアリング・ジャッジメント」です。

(11月8日)
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