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第21回学習交流会報告・その1

第21回学習交流会(“福島とともにシリーズNo4”)報告・その1
日時 11月10日(日)10:00~11:45
会場 クロスパルにいがた 5階 交流ホール2
参加 35人
テーマ 原発事故と東電の責任を考える① 賠償はどうなっているの?
司会 本間伸子  レポーター 桑原三恵

9:30  受付
10:00~10:05  開会 本日の日程、テーマについて
10:05~11:00  問題提起
11:00~11:05  休憩
11:05~11:40  意見交流
11:40~11:45  次回学習交流会について

第21回のテーマは「賠償」です。
これまでも原子力損害賠償支援機構、東電の賠償責任と再建計画等についてとりあげてきましたが、今回は以下の問題提起を柱に「賠償」問題スタート地点の共有をめざしました。

問題提起
1 賠償とは・・・
2 賠償の仕組み
3 賠償の実態
4 賠償の問題点

問題提起項目1、2のポイントを報告します(3は次回にします)。「4 賠償の問題点」は2,3の項目ごとにまとめます。

1 賠償とは・・・
結局はみんな、事故が起きたら責任から逃げる。
規制委はどうせ、「私たちは規制基準に適合していると言っただけです」と言う。政治家は「自治体がよいと言ったからOKした」という話になる。自治体は「(これさえクリアすれば)安全(と言える)基準だからというから私たちは信じました」と言う。
そうすると、誰も責任を取らずに被害にあった人に全部しわ寄せがくるという構造にしか、今のやり方だとならないのではないか。
どれだけこの原発事故で被害を受けた人が苦労しているか。生活再建ができていない。旧ソ連ですら、住居と仕事は保証した。今回の日本はより対応が悪いのではないか。

これは、朝日新聞のインタビュー(10月25日掲載)での泉田知事の発言です。
1F事故では「責任者」と言う札のついた椅子に座ろうとする人がいない、そのしわ寄せを一手に引き受けさせられているのが被害者だ、責任をあいまいにしたままの事故処理を改めない限り、被害者は原発事故被災と無責任体制が及ぼす二重の苦難から逃れられない・・・との知事の言葉に、賠償とはどうあらねばならないかが語られています。

賠償とは-
①被害を及ぼした責任の主体が、被害者が受けた被害をあがなう。
②被害を及ぼした責任の主体は、被害を起こした原因が明確にならねば確認できない。被害を起こした主体が明確になって、責任の主体が明らかになる。
③被害の全容を明確にし、被害の全てが責任の主体によって補償されなければならない。

1F事故の原因と責任は、すべて明らかになっているとは言いがたいです。しかし、現時点で、東電の安全軽視・経営優先、国の推進政策・事故発生当時の対応に原因があったことは明白です。
このことから、被害者への賠償責任は、東電と国(政府)にあると言えます。

では③被害の全容はすべてあきらかになっているでしょうか?
事故は今後新たな被害を生み出すかもしれません。そういう意味では全容の把握は困難ですが、被害が生じた時点でその被害の全容をつかみ、迅速に賠償することが基本です。

福島県はもちろん、関東、東北、新潟県も含めて広範囲の地域の人々が事故によってそれまでの暮らしができなくなりました。そこから生じた被害に対して金銭的補償をするのは言うまでもありません。
しかし、原発事故ではそれだけで元の生活に戻れることにはなりません。放射能による長期環境汚染が住居も仕事も子どもが育つ環境も、人々が集う地域の行事も、人々を支えてきた地域の輪も、根こそぎ奪い去りました。事故責任の主体である国と東電は、それまでの生活基盤を根こそぎ奪われた被害者に対して、生活再建を保障する賠償をしなければなりません。

2 賠償の仕組み
原子力災害の賠償を規定している法律は原賠法(原子力損害の賠償に関する法律 1961年制定、翌年施行)です。

電力会社が原発運転を開始するにあたって、事故の際の賠償に関する法律が必要でした。法律策定に先立って実施した事故の被害試算では、被害総額が当時の国家予算を2~3倍に及ぶことが判明し、政府はこの試算を隠ぺいしました。試算は1990年代に国会で取り上げられ明らかにされました。

*原賠法のポイント
ポイントは3点です。
①電気事業者の無過失責任(故意・過失の有無にかかわらず賠償責任を負う)、責任集中(原子力事業者だけが賠償責任を負う)無限責任(被害の全額を保障しなければならない)

無過失責任については「巨大な天災地変または社会的動乱によって損害が生じた場合は免責される(第3条)」と規定されています。この規定に乗って東電は当初、今回の事故が想定できない天災が原因として賠償の免責を主張していましたが、経産省は一貫して否定し、東電に賠償責任があるとしました。

②電気事業者は責任を担保する責任保険の契約と補償契約の締結をしなければならない。
・責任保険は日本原子力保険プール(民間保険業者)と契約、一般的な事故の場合上限1200億円が支払われる。
・補償契約は政府と締結、一般的な事故以外の天災や正常運転での事故、後発損害などに政府が上限1200億円を支払う。

今回の事故では補償契約により国が上限の1200億円を2011年秋に東電に支払いました。
各電力会社の年額補償契約保証料は1万分の3(3600万円)ですから、2011年当時には総額で150億円程度しかなく、東電に支払った1200億円の大部分は税金があてられました。
年額補償契約保証料は、2012年1月に7倍引き上げられ、1万分の20(2億4千万円)となりました。

損保23社でつくる「日本原子力保険プール」は、2011年秋に「リスクが高い」と東電との契約を打ち切りました。それまでの契約が2012年1月15日にきれるため、文科省の要請により東電は東京法務局に供託金1200億円を納めました。

③補償(賠償)総額が、責任保険・補償契約の上限1200億円を超える場合は、国会の議決の範囲内で原子力事業者に対し国が必要な措置(援助)を行う。

保険の支払額を超えたら国が面倒をみる、というのが3つ目のポイントです。民間事業者の事故賠償を国が手助けすることがあらかじめ法律で定められているのは、ほかにありません。つまり、原子力災害は保険で対応できず、国庫負担を前提にしなければならないものなのです。

今回の事故で国はどのようにして援助することになったかは、後段にします。

*原賠法の問題点
①原賠法が掲げる2つの目的(「損害賠償に関する基本的制度を定め、被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的とする」第1条)が矛盾していることは、今回の事故で明らかになっています。「被害者の保護」と「原子力事業の健全な発達」のバランスをとる賠償制度があってはなりません。「損害賠償に関する基本的制度」を定める法律なのですから、目的はあくまでも「被害者の保護」です。

②責任集中(原子力事業者だけが賠償責任を負う)でいいのでしょうか。メーカーや当該原子力事業を支えた出資者や債権者の責任を問わないことを法律で規定すれば、無責任体制というモラルハザードを温存することになり、防げる事故も防げない脆弱な社会に陥ってしまうのではないでしょうか。原賠法策定当時、原子炉メーカーはアメリカの企業で、アメリカ側から責任集中への強い要請があったようなのです。策定当時の情報を公開・検証する必要があります。

③国が国策として原発を推進してきたのですから、国にも賠償責任があることを明記すべきです。該当する条項がないため、今回の事故賠償では国は「補償(賠償)総額が、責任保険・補償契約の上限1200億円を超える場合は、国会の議決の範囲内で原子力事業者に対し国が必要な措置(援助)を行う(第17条)」存在として位置づけられているだけです。その結果国の事故責任は口先だけのあいまいなものになってしまっています。国の賠償責任が規定されないことが、推進政策の点検を阻み、独走を許したといえるのではないでしょうか。

④無過失責任、責任集中、無限責任を課し、責任保険の契約と補償契約の締結を義務づけたとはいえ、責任保険・補償契約の上限1200億円を超える場合は国が援助するのですから、原子力事業者にとって無過失責任、責任集中、無限責任は実質軽減されています。国が厳しい責任を課す一方で補てんもするこの法体系は原子力事業者の事故責任の範囲を限定し、あいまいにしてしまっています。おそらく、法律案策定段階で賠償責任の限定や国の援助について、電力会社等から政府に相当の働きかけがあったのでしょう。
国が援助することになったのですから、そのぶん国は厳しい規制方針でのぞむべきだったのですが、実態は規制当局の保安院は電力会社・電事連と一体化し、原子力安全委員会との“2重のチェック”も機能しませんでした。その結果世界最悪の3基メルトダウン・メルトスルーという事故に至ったのですから、国(政府)はこれまでの推進政策の見直しと原賠法改正に即刻着手すべきです。しかし、国の責任があいまいにされたまま、政府は2年半余を過ぎて政策の根本的検証をせずに、原賠法も手つかずのまま原発依存に回帰していこうとしています。
無限責任の免責条項(第3条)も線引きはあいまいです。原発を運転して利益をえる電力会社は、あらゆる事態に対してシビアアクシデントを起こさない対策をする責任があります。それが経営として成立するかどうかは電力会社が判断すべきです。免責条項を外すことも含めて、原子力事業者に“賠償の逃げ道”を与えない原賠法にすべきです。

*補償財源(1200億円を超える被害補償措置=国の援助措置)はどうなったか
(1)2011年3~4月にかけて援助措置A,Bをめぐる激しい攻防が、政府、経産省、財務省、金融機関等で繰り広げられました。
・援助措置A:国からただ援助をうけるのではなく、東電の株主、経営者、債権者が応分の負担をすべきだ=東電の責任を明確に果たさせるべきだ
・援助措置B:東電破たんとそれによる株主、経営者、債権者の負担を回避するため、公的資金の注入等によって東電を支援すべきだ=東電の責任を要求せずに(東電を破たんさせずに)援助すべきだ

2案のせめぎあいの結果です。
2011年4月17日 東電が「事故の収束に向けた道筋」を公表し、政府に支援要請。

5月13日 関係閣僚会合が「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する        政府支援の枠組みについて」を決定
・「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府支援の枠組みについて」の内容
→これまで政府と原子力事業者が共同して原子力政策を推進してきた社会的責務を認識しつつ、原賠法の枠組みの下で、国民負担の極小化を図ることを基本として東電に対する支援を行う。将来にわたって原子力損害賠償の支払い等に対応できる枠組みを設けることとし、東電以外の原子力事業者にも参加を求める。

6月14日「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府支援の枠組みについて」 閣議決定

(2)「政府支援の枠組み」とは
① 「原子力損害賠償支援機構」を設ける。
② 原子力事業者11社(9電力会社+日本原子力発電+日本原燃)が参加し、負担金を支払う。負担金は事業コストから支払う(=電力料金に転嫁できる)。
③ 援助には上限を設けず、必要があれば何度でも援助し、損害賠償、設備投資等のために必要とする金額のすべてを援助できるようにし、原子力事業者を債務超過にさせない。
④ 政府または機構は、被害者からの相談に応じる。機構は、原子力事業者からの資産の買取りを行う等、円滑な賠償のために役割を果たす。
⑤ 政府は機構に対し、交付国債の交付等必要な援助を行う。
⑥ 政府は援助に先立って、原子力事業者から申請を受け、必要な援助の内容、経営合理化等を判断し、一定期間原子力事業者を監督する。
⑦ 原子力事業者は、毎年の事業収益等を踏まえて設定される特別負担金を支払う。
⑧ 機構は負担金等を国庫納付する。
⑨ 負担金の支払いで電力安定供給に支障が出る場合には、政府が援助する。

「原子力損害賠償支援機構」は2011年9月に発足しました。

原子力事業者11社が支払う負担金(一般負担金)は私たちが払う電気料金から支払われています。負担金率・額は年度ごとに支援機構の運営委員会の議決を経て定められます。2012年度は、東北電力は約62億円、東電は約388億円、11社合計は約1008億円となっています。

東電が一般負担金のほかにおさめねばならない特別負担金は、東電の収益から支払うことになっています。赤字続きの東電はまだ特別負担金を一銭も納入していません。

原子力事業者11社は一般負担金と特別負担金(東電のみ)で、政府から受けた援助全額を返済します。

(3)支援機構を巡るお金の流れ
政府は5兆円(交付国債)を用意して支援機構の要請に応じて支援機構に支払い → 支援機構は東電の要請に応じて東電に支払い → 東電は賠償・除染費用に充当
10月23日時点で、政府が支援機構を通して東電に援助した総額は3兆964億円です。東電が支払った賠償総額は約2兆9千億円です。

原子力事業者11社が支援機構に一般負担金を支払う → 支援機構は政府に返納
東電は利益から特別負担金を支援機構に支払う → 支援機構は政府に返納
東電が政府から援助してもらった3兆964億円のうち、政府に返納したのは約672億円(一般負担金2011年度約388億円+2012年度約284億円)で、その原資は東電管内の電気料金です。
結局、東電の国への借金返済の相当部分を私たちが電気料金でまかなっているのです。それだけではありません。政府が民間金融機関に支払う利子分は私たちの税金で賄われています。

つまり、東電は原賠法に基づく賠償責任の椅子に座りながら、自らの資産によらず、国民の財布の中から賠償金を支払っているのです。これで東電は責任を果たしているといえるのでしょうか?特別負担金を支払うためにも柏崎刈羽原発を動かして収益をあげたい、というのも事故の責任、社会への責任を棚上げした企業利益最優先の考え方です。

(4)政府援助5億円の全額回収はいつか?
会計検査院は全額回収時期を初めて試算し、10月16日に公表しました。
最長2044年度、利子に支払われる税金(国民負担)は最大794億円とのことです。しかし、この試算は5億円を援助した場合であり、追加援助すべきという自民党の提言を受けて財務省は交付国債発行枠を現在の5兆円から8~9兆円に拡大する方針ですから、国民負担は増加することになります。

*政府援助の仕組みの問題点
支援機構を通して政府が東電を援助するという仕組みの問題点です。
①政府がはたすべき事故に対する責任が、東電への援助にすりかえられ、責任逃れをきたしています。
②支援機構の「援助には上限を設けず、必要があれば何度でも援助し、損害賠償、設備投資等のために必要とする金額のすべてを援助できるようにし、原子力事業者を債務超過にさせない」という役割は、被害者の保護ではなく、東電保護となっています。
③「原子力事業者11社が支払う負担金は電力料金に転嫁できる」とすることによって、東電や株主、債権者の資産を温存保護し、国民が払う電気料金で賠償を援助する仕組みが出来上がりました。支援機構は、電力会社を介して国民に東電の借金の肩代わりをさせる役割を果たしています。

政権は常に政権に利する政策を実行するための財源を求めています。税金を増額したり、新たな税金を設けたり、手法はいろいろですが、どの政権も国民がそれと気づかぬうちにコッソリと国民の財布から引き出す策に長けています。もちろん国民に内緒でやっているのではなく、制度として提起、了承、明記されいわば“正々堂々”とやってはいるのですが、すべての場合といっていいほど国民への説明が全く不足しているのです。それどころか「国民負担の軽減を最大限図った」などと言ったりもします。説明すると反発をかうので、説明を要しないように政府が直接国民の財布に手を入れる方式ではなく、間接的にほかの仕組みに乗せて財布から引き出させることも多く、その典型が電気料金への上乗せです。

原賠法が規定した「補償(賠償)総額が、責任保険・補償契約の上限1200億円を超える場合は、国会の議決の範囲内で原子力事業者に対し国が行う必要な措置(援助)」も、結局は国民負担です。私たちの財布からお金をとっていくのですから、どういう根拠で、どんな目的で、どのくらいの額をどうやってとるのか、政府はきちんと説明しなければなりません。
同時に政府は、なぜ原賠法の規定による国民負担を課すようになったのかを政策責任主体として説明し、政策の見直しも含めた検証を明らかにせねばなりません。負担を最大限軽減する取組はいうまでもありません。東電の資産を保護しながら国民に負担させるなど、とんでもありません。

日本弁護士連合(日弁連)がこの援助仕組みに対してオルタナティブ「福島第一原子力発電所による損害賠償の枠組みについての意見書」(2011年6月17日)を公表しています。
日弁連の案です。
1 損害賠償の枠組みについては次の3つの原則が確立されるべきである。
(1)東電の現有資産による賠償がまずなされること。
(2)不足部分は国が上限を定めず援助する法律上の義務があること。
(3)原発災害を完全に防止するために、損害賠償の枠組みは、持続可能なエネルギー供給・受容体性の構築と調和するものであること。

2 上記原則に基づいた援助策
(1)国が東電の送配電事業の譲渡を受け、その対価として損害賠償債務を引き受ける。東電所有の保養所等の資産を民間に売却し原資とする。
(2)プルサーマル計画を中止し、再処理積立金を活用する。
(3)賠償額が(1)(2)を超える場合は、東電の原発以外の発電事業の収益及び国が買い取った送配電事業の収益をあてる。
(4)東電による資産散逸・資産の浪費を防ぎ、資産の譲渡金を確保するため、東電の法的整理を検討すべきである。
(5)送配電事業は、リスクに強い、分散型の、スマートグリッドを整備すべきである。送配電事業は、損害賠償が終了するまで国または公的機関が管理する。


問題提起3 賠償の実態 は次回にします。
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