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東電「特別事業計画」への要請

12月27日に、東京電力は原子力損害賠償支援機構と共同で「総合特別事業計画」の認定を内閣府と経産省に申請しました。

5兆円の交付国債による国の東電への支援は、12月24日に23回目の交付1421億円を受け、これまでに補償金1200億円とも合計約3兆5000万円に及んでいます。原子力損害賠償審査会が先ほど示した第4次追補による賠償の見積額を東電は約6600億円とし、その他風評被害賠償増加分等とも約1兆円の資金援助申請を「総合特別事業計画」認定申請と共に提出しています。

東電が今後の再建計画を示した「総合特別事業計画」は、認定後公表ということで、明らかになっていません。マスコミが報道している情報によれば、国民負担増加、柏崎刈羽原発再稼働を前提とした東電にとって実に“虫のいい”内容です。

私たちの税金や、新潟県民の安全に係る「総合特別事業計画」が、全容を知らされずに、認定されることは大きな問題だと思います。とりわけ柏崎刈羽原発再稼働前提の再建計画は容認できるものではありません。

「いのち・原発を考える新潟女性の会」は、安倍総理、茂木経産相、東電広瀬社長に以下の要請書を送付しました。

2013年12月29日  

内閣総理大臣 安倍晋三様
経済産業相 茂木敏充様

いのち・原発を考える新潟女性の会
 山内悦子 大野和 佐藤早苗
 本間伸子 桑原三恵 樋口由美子
  <連絡先> 桑原三恵
  953-0041 新潟市西蒲区巻甲756-15
  TEL・FAX 0256-72-5091


原子力損害賠償支援機構と東京電力の「総合特別事業計画」認定申請について

 12月27日に原子力損害賠償支援機構と東京電力が共同で内閣府機構担当室及び経済産業省資源エネルギー庁に申請した「総合特別事業計画」は、認定後公表のため、マスコミ報道による情報のみとなっています。それによれば、「総合特別事業計画」は12月20日に閣議決定された「原子力災害からの福島復興の加速にむけて」に基づいた交付国債の引き上げ等、国民負担増大につながる内容であり、柏崎刈羽原子力発電所7基の再稼働を前提としたものとなっているとのことです。そのような内容の「総合特別事業計画」が認定されることを、私たち柏崎刈羽原子力発電所立地県民は看過するわけにはいきません。つきましては、以下について趣旨をご理解のうえ要請にお応えください。



1 できるだけ早く「総合特別事業計画」を公表すること。

2 下記の理由により、「総合特別事業計画」を原子力損害賠償支援機構と東京電力に差し戻すこと。
  ①破たん寸前の東京電力株式会社への対応については多様な意見がある。同様の会社への前例と大
きく異なる国民負担増大をもたらす政府の対応について、国会内の議論は極めて不十分であり、国民の意見も反映されていない。

  ②柏崎刈羽原子力発電所7基の再稼働は次の点で容認することはできない。
・福島第一原子力発電所事故の被害者の苦悩は、時間の経過につれて軽減するどころか、一層深まっている。事故がもたらした人と環境への取り返しのつかない甚大な被害、きわめて低額に抑えられている賠償、進まない除染を思えば、東京電力の原発再稼働による会社再建は加害者としての責務を果たさずに経営のみを最優先したものであり、被害者のみならず国民を侮るものである。

・東京電力は、被害者への賠償、汚染水対策等、加害者としての事故の後始末ができていないばかりか、事故について未解明問題を多く抱え、事故の経過、原因も明らかにできてはいない。そのような状況である東京電力が原発の安全性を確保できる保証は皆無であり、東京電力への信頼は大きく崩れている。

・柏崎刈羽原発全7基は、2007年の中越沖地震で設計値を2~3倍超える強い揺れに襲われた被災原発である。すでに1,5,6,7号機が再開したものの、地震による損傷や耐震性、改定された基準地震動、敷地内及び周辺の活断層等、少なからぬ安全上の問題を残したままの再稼働であり、東京電力はそれらについて新潟県民に、未だ明快な説明ができていない。

・柏崎刈羽原発2~4号機3基は中越沖地震後の点検等について新潟県技術委員会の審議を終了していない。よって、中越沖地震後の新潟県知事・柏崎市長・刈羽村長が「安全協定」にもとづいて申し入れた「運転再開に際して地元自治体の了解を得ること」は未了となっている。2~4号機について東京電力は1,5,6,7号機と同様の手順を踏み、安全性・耐震性について新潟県民に説明する必要があり、再稼働を計画できる段階ではない。

・東京電力と保安院(当時)は、中越沖地震で柏崎刈羽原発1~4号機が5~7号機と比べておよそ2倍の強い揺れを観測した要因を ①震源の影響、②深部の複雑な地盤、③敷地地盤が地震の揺れが集中する古い褶曲構造、としている。柏崎刈羽原発は小さな地震でも揺れが増幅し、集中する地盤に立っていることが明らかになった今、再稼働を前提とした再建計画は安全性を無視した無謀な計画であり、新潟県民を原発事故の危険にさらす以外の何物でもない。
以上


2013年12月29日  

東京電力株式会社
社長 広瀬直己様

いのち・原発を考える新潟女性の会
 山内悦子 大野和 佐藤早苗
 本間伸子 桑原三恵 樋口由美子
  <連絡先> 桑原三恵
   953-0041 新潟市西蒲区巻甲756-15
   TEL・FAX 0256-72-5091


「総合特別事業計画」認定申請について
 12月27日に原子力損害賠償支援機構と貴社が共同で内閣府機構担当室及び経済産業省資源エネルギー庁に申請した「総合特別事業計画」は、認定後公表のため、マスコミ報道による情報のみとなっています。それによれば、「総合特別事業計画」は12月20日に閣議決定された「原子力災害からの福島復興の加速にむけて」に基づいた交付国債の引き上げ等、国民負担増大につながる内容であり、柏崎刈羽原子力発電所7基の再稼働を前提としたものとなっているとのことです。そのような内容の「総合特別事業計画」を貴社が申請したことを、私たち柏崎刈羽原子力発電所立地県民は看過するわけにはいきません。つきましては、以下について趣旨をご理解のうえ要請にお応えください。



1 できるだけ早く「総合特別事業計画」を公表すること。

2 下記の理由により、「総合特別事業計画」申請を撤回すること。
  ①破たん寸前の貴社への対応については多様な意見がある。同様の会社への前例と大きく異なる国
民負担増大をもたらす政府の対応について、国会内の議論は極めて不十分であり、国民の意見も反映されていない。そのような状況で国民負担増大を招く計画申請は、貴社への信頼をますます貶めるものと言える。申請を撤回し、国会での議論、国民世論、とりわけ事故の被害者の声に耳を傾け、計画を再考すべきである。

②柏崎刈羽原子力発電所7基の再稼働は次の点で容認することはできない。
・福島第一原子力発電所事故の被害者の苦悩は、時間の経過につれて軽減するどころか、一層深まっている。事故がもたらした人と環境への取り返しのつかない甚大な被害、きわめて低額に抑えられている賠償、進まない除染を思えば、貴社の原発再稼働による会社再建計画は加害者としての責務を果たさずに経営のみを最優先したものであり、被害者のみならず国民を侮るものである。

・貴社は、被害者への賠償、汚染水対策等、加害者としての事故の後始末ができていないばかりか、事故について未解明問題を多く抱え、事故の経過、原因も明らかにできてはいない。そのような状況である貴社が原発の安全性を確保できる保証は皆無であり、貴社への信頼は大きく崩れている。

・柏崎刈羽原発全7基は、2007年の中越沖地震で設計値を2~3倍超える強い揺れに襲われた被災原発である。すでに1,5,6,7号機が再開したものの、地震による損傷や耐震性、改定された基準地震動、敷地内及び周辺の活断層等、少なからぬ安全上の問題を残したままの再稼働であり、貴社はそれらについて新潟県民に、未だ明快な説明ができていない。

・柏崎刈羽原発2~4号機3基は中越沖地震後の点検等について新潟県技術委員会の審議を終了していない。よって、中越沖地震後の新潟県知事・柏崎市長・刈羽村長が「安全協定」にもとづいて申し入れた「運転再開に際して地元自治体の了解を得ること」は未了となっている。2~4号機について貴社は1,5,6,7号機と同様の手順を踏み、安全性・耐震性について新潟県民に説明する必要があり、再稼働を計画できる段階ではない。

・貴社と保安院(当時)は、中越沖地震で柏崎刈羽原発1~4号機が5~7号機と比べておよそ2倍の強い揺れを観測した要因を ①震源の影響、②深部の複雑な地盤、③敷地地盤が地震の揺れが集中する古い褶曲構造、としている。柏崎刈羽原発は小さな地震でも揺れが増幅し、集中する地盤に立っていることが明らかになった今、再稼働を前提とした再建計画は安全性を無視した無謀な計画であり、新潟県民を原発事故の危険にさらす以外の何物でもない。
以上

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第21回学習交流会報告 その3 避難区域再編に伴う賠償と時効について

第21回学習交流会(“福島とともにシリーズNo4”)報告・その3

今回は、「1 避難区域再編に伴う賠償の問題」と、学習交流会で十分取り上げきれなかった「2 時効について」を報告します。

1 避難区域再編に伴う賠償の問題
2011年12月16日に原子力対策本部長・野田首相は「事故そのものは収束に至った」と宣言、12月26日には原子力対策本部が「ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」を公表しました。

(1)「ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」とは

①「ステップ2の完了」とは
「原子炉の冷温停止状態の達成、使用済み燃料プールのより安定的な冷却の確保、滞留水全体量の減少、放射性物質の飛散抑制などの目標が達成されていることから、ステップ2(放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている)の目標達成と完了を確認した」と説明しています。

汚染水問題が明らかになった現在、この「ステップ2の完了」が無理やりこじつけたものだったことは明白です。それにしても、「滞留水全体量の減少」はどういう事実に基づいていたのでしょうか?

でっち上げともいえる「ステップ2の完了」の裏には、「避難指示解除、住民帰還」を急ぐ政府の思惑がありました。政府だけではありません。避難指示解除は賠償の終了、住民帰還促進につながります。東電や地元自治体首長にとっても、避難という非日常を終了させ1日も早い原状復帰は重要でした。

②警戒区域及び避難指示区域の見直し
警戒区域及び避難指示区域(半径20㎞区域と半径20㎞以遠の計画的避難区域)は、2012年3月末を目途に、次の3区域に再編されることになりました。
<避難指示解除準備区域 今年8月現在で約3.3万人>
・年間積算線量が20mSv以下となることが確実である地域
・除染、インフラ復旧、雇用対策等の支援策を実施して住民の1日でも早い帰還を目指す
<居住制限区域 〃 約2.3万人>
・年間積算線量が20mSvを超えるおそれがあり、引き続き避難を継続する地域
・国が計画的に除染を実施する
<帰還困難区域 〃 約2.5万人>
・5年間を経過しても年間積算線量が20mSvを下回らないおそれがある、現時点で年間積算線量が50mSv超の地域
・将来にわたって居住を制限することを原則とする

③3区域再編の基準・年間積算線量20mSvについて
この基準設定について次のように説明しています。

・原子力安全委員会(規制委員会に改組)は解除に関する考え方(2011年8月4日公表)で「解除日以降年間20mSv以下となることが確実であることが避難指示解除の必須要件である」としている。
・年間20mSvの被ばくリスクについては様々な議論があったことから、「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」を設けて国内外の有識者の意見を聞き、検討を進めた。
・その結果「年間20mSv以下の健康リスクは喫煙や飲酒、肥満、野菜不足など他の発がん要因によるリスクと比較して十分に低いものであり、除染や食品安全管理の継続的な実施など適切な放射線防護措置を講ずることにより十分リスクを回避できる水準であることから、今後より一層の線量低減を目指すにあたってのスタートとして用いることが適当である」との評価を得た。

原子力安全委員会が示した年間20mSvは、ICRP(国際放射線防護委員会)のPublication111(原子力事故もしくは緊急放射線被ばく後の長期汚染地域住民の防護に関する委員会勧告 2008年)で示された「汚染地域内に居住する人々の防護の最適化のための参考レベルは1~20mSvの範囲の下方の部分から選定すべきである」によっています。

防護の最適化とは、「被ばくがもたらす不利益と経済的・社会的要素(避難生活の負担、コミュニティの存廃、個人の生活の確保等)とのバランスを図って最適な防護方策が決定されること」をさします。参考レベルとは、その値を超えたら避難等の対策を実行すべき放射線量をさします。

年間20mSv以下は「安全を示す線量値」ではないのです。原子力安全委員会の説明は「ⓐ健康リスクはある、ⓑだけど十分低い、Ⓒ適切な防護措置をすればリスクは回避できる」であり「リスクはゼロ」とは言っていません。「除染や食品安全管理の継続的な実施などで回避できる」としていますが、除染や食品安全管理の継続的な実施が保証されなければリスク回避はできないということです。

年間20mSv以下をどう考えるかについての視点として、放射線管理区域があります。「電離放射線障害防止規則」には「3か月間につき1.3mSvを超える恐れのある区域は放射線管理区域と明示しなければならない」とあります。年間でいうと、5.2mSvを超える区域は放射線管理区域ということです。

もう一つの視点は、国内の法令で定められている公衆の線量限度です。これは年間1mSvとなっています。

原発事故のために避難させられた住民は、ステップ2の完了宣言で、放射線管理区域に相当し、公衆の線量限度をはるかに超えた被ばくをもたらす元の居住地への帰還を求められることになったのです。

④今後の検討課題と対応方針について
・放射能汚染に対する住民の強い不安感を払しょくする。
(対応方針)健康管理実施への支援、住民との継続的な対話実施の体制整備、地域密着の専門家の育成、地域への放射線測定器の配備
・責任をもって着実に除染を実施する。
(対応方針)中間目標(例えば2年後に年間10mSv近傍まで下げる)の設定、子どもの生活環境の除染を最優先、学校再開前に1μSv/h未満を実現、子どもの健康管理や線量測定、学校給食食材等の測定機器の整備促進
・インフラ復旧、雇用対策等に取り組む。
(対応方針)生活インフラや病院・学校等の公共施設の復旧・復興に地元のニーズを踏まえ迅速に対応、安定した雇用の創設や居住の安定確保に向け積極的な施策を実施
・住民の早期生活再建に向けて積極的に関与する。
(対応方針)原子力損害賠償紛争審査会(原陪審)に可能な限り迅速な検討を依頼し、遅くとも見直し実施までに賠償指針を提示するよう要請する。

原賠審は2012年3月6日に「中間指針第2次追補(政府による避難区域等の見直し等に係る損害について)」を発表しました。

(2)「中間指針第2次追補(政府による避難区域等の見直し等に係る損害について)」の内容
①再編から避難指示解除までの間の精神的損害賠償額
<避難指示解除準備区域>1人月額10万円を目安とする。
<居住制限区域>1人月額10万円を目安とし、概ね2年分をまとめて1人240万円を請求できる。
<帰還困難区域>1人600万円を目安とする。(5年以上帰還できない状態が見込まれることから損害額を一括して算定することとした)
②旧緊急時避難準備区域の精神的損害賠償額
2011年9月30日に解除されていること等をふまえ、2012年8月末までを目安に、1人月額10万円を目安とする。
③特定避難勧奨地点の精神的損害賠償額
解除後3か月間を当面の目安に、1人月額10万円を目安とする。
④営業損害
賠償の終期は当面示さずに、個別事情に応じて合理的に判断する。
3.11以降得た利益や給与等が「特別の努力」と認められる場合には、損害額から控除しない等の対応が必要である。
⑤就労不能等に伴う損害
賠償の終期は当面示さずに、個別事情に応じて合理的に判断する。
3.11以降得た給与等が「特別の努力」と認められる場合には、損害額から控除しない等の対応が必要である。
⑥財物価値の喪失または減少等
<帰還困難区域>事故発生直前の価値が100%減少(全損)したと推認する。
<居住制限区域、避難指示解除準備区域>解除までの期間等を考慮して、事故発生直前の価値が一定程度減少したと推認する。
⑦自主的避難等に係る損害
中間指針第一次追補(2011年12月6日)では、対象期間を2011年12月末としたが、2012年1月以降については、自主的避難が合理性を有していると認められる場合には賠償の対象とする。
⑧除染等に係る損害について
除染等(汚染土壌の除去、汚染拡散防止等の措置、除去土壌の収集、運搬、保管、処分、汚染廃棄物処理を含む)により生じた追加的費用、減収分、財物価値の喪失・減少分は賠償すべき損害と認める。
地方公共団体や教育機関が行う検査等に係る費用は、賠償すべき損害と認める。

(3)東電の「避難指示区域の見直しに伴う賠償基準」策定経過
第二次追補公表以降、原賠審の会議が開催されないまま、7月20日には経産省が「避難指示区域見直しに伴う賠償基準の考え方について」を公表しました。

賠償基準のもととなる指針は、原賠法第18条により原子力損害賠償紛争審査会が定めることとされ、東電は原陪審の指針を受けて賠償基準を策定してきました。経産省の「賠償基準の考え方について」の公表は、このプロセスを逸脱しています。なぜ、経産省が「賠償基準の考え方について」(さすがに指針という言葉は使っていません)を示すことになったのでしょうか?

経産省の「賠償基準の考え方について」には
「関係閣僚において、避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の考え方について、以下のとおり取りまとめた。今後この考え方を踏まえ、東京電力において賠償基準を公表することとなる」
とあるだけで、原賠審との関連については何も言っていません。

経産省公表直後の8月3日の原賠審の会議で、資源エネルギー庁・原子力損害対応室長守本参事官が次のように説明しています。
「通常でございましたら審査会の指針を出していただいたら、東電がそれに従って基準を作成することになるわけでございます。ただ、今回は、政府としても、東電任せにしないで、前面に出て、自治体、住民の方々のご意見をお伺いして、調整をしてきたということでございます」
その背景として守本参事官は2点をあげています。
1 今回の基準は、避難指示区域見直しと密接に関係する。
2 住民の生活再建については、賠償だけですべての課題解決にはならない。取り組み姿勢を示すグランドデザイン、帰還に向けた政策との整合性を図るという政策的視点が必要だ。

何やらわかりにくい説明ですが、8月3日原賠審の会議録を読み進むと、委員、守本参事官、東電賠償責任者・内藤副社長(広瀬氏<社長就任>の後任者)のやりとりから、次のような構図が見えてきます。
ⓐ「中間指針第2次追補」(2012年3月6日)を受けて東電は、経産省・資源エネルギー庁の指導・助言を受けながら、賠償基準策定に取り組んだ。
ⓑ経産省・資源エネルギー庁(担当は原子力損害対応室)は、再編作業を進めていた内閣府と連携しながら、避難指示解除と賠償との関係について自治体側の意見・要望を聴取、協議した。
Ⓒ経産省・資源エネルギー庁は、自治体側との協議結果等をもとに、賠償問題が再編作業のネックとならないよう、再編作業を急ぐ内閣府と東電の賠償基準策定の間をとりもった。

守本参事官が説明したように、経産省は、再編と密接に関係する賠償基準策定を「東電任せにしないで」、「自治体、住民の方々のご意見をお伺いして」調整をし、基準策定作業の「前面に出て」東電を指導・助言した、のです。

経産省が「避難指示区域見直しに伴う賠償基準の考え方について」を公表した4日後の7月24日に東電は、経産省「考え方について」を踏襲する「避難指示区域の見直しに伴う賠償の実施について」を発表しました。経産省「考え方について」は、東電の賠償基準発表の“露払い”のようなものでした。

経産省が深くかかわった「避難指示区域の見直しに伴う賠償基準」とはどのような内容でしょうか。

(4)東電の「避難指示区域の見直しに伴う賠償の実施について」の内容概要
(宅地・建物)
<帰還困難区域>3.11当時の財物価値を全額賠償
<居住制限区域、避難指示解除準備区域>3.11当時の財物価値を算定した金額を賠償

(家財)
<帰還困難区域>単身325万円、世帯475万円+大人1人60万円+子ども1人40万円
<居住制限区域、避難指示解除準備区域>単身245万円、世帯355万円+大人1人45万円+子ども1人30万円

(建物修復費用)
単価(1㎡あたり14,000円)×床面積(㎡) 上限は1,000万円

(精神的損害)*包括請求方式
<帰還困難区域>5年間分600万円
<居住制限区域>2年間分240万円
<避難指示解除準備区域>1年間分120万円

(就労不能損害)*包括請求方式
3.11当時の収入をもとに2012年6月1日~2014年2月28日の期間

(避難・帰宅等費用)*包括請求方式
から<帰還困難区域>2012年6月1日~2017年5月31日の期間
<居住制限区域>2012年6月1日~2014年5月31日の期間
<避難指示解除準備区域>2012年6月1日~2013年5月31日の期間

上記のほか、次の基準が示されています。
・個人事業主、法人への賠償
・旧緊急時避難準備区域等

この賠償基準で被害者の生活再建が不可能であることは明らかです。

(5)原賠審の指針見直し
原賠審は今年5~6月に避難指示区域を初めて現地調査を実施しました。ということは、中間指針、同第2次追補で示された「財物価値の喪失又は減少等」に関する指針は被災地を視察することなく策定されてきた、ということです。いくら放射線量が高く視察が困難だとしても、被災地の住人がいなくなった家や建物がどのような状況になっているかを把握せずに、よくもまあ指針を策定できたものです。
原発ADR等から実情を聞いてはいたのでしょうが、委員の中に一人でも現地視察を提言した人はいなかったのでしょうか。

原賠審は現地視察後、6月22日に「今後どうしたらいいか検討していきたい」と、以下の福島県内首長に現状を聞く会議を福島市内で開催しました。

佐藤福島県知事、瀬戸福島県市長会長(福島市長)、遠藤福島県町村会副会長(鏡石町長)、冨塚田村市長、桜井南相馬市長、伊藤川俣町副町長、菅野飯舘村長、山田広野町長、松本楢葉町長、遠藤富岡町長、遠藤川内村長、渡辺大熊町長、伊澤双葉町長、馬場浪江町長、松本葛尾村長

市町村長の報告は下記の議事録に載っています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/gijiroku/1337083.htm

報告のなかで、ぜひ皆さんに知ってもらいたいことを書きます
<冨塚田村市長>
東京電力は損害賠償について1回も市民に説明に来たことはない。
<桜井南相馬市長>
避難指示区域が線量によって3区域に編成されるが、それは賠償の違いにつながり、住民間に大混乱をきたし行政運営ができない。避難指示区域は全区域「全損扱い」にすべきだ。」
<伊藤川俣町副町長>
3.11と2年たった今と何ら変わりなく全町民が不安の中で生活している。精神的損害賠償を全町民に対して続けるべきだ。被害者間で不公平にならないような取組を指針に盛り込むべきだ。生活の再建が成り立つ十分な賠償の指針を改めて作ってもらいたい。
<菅野飯舘村長>
放射能災害はほかの災害と全く違う特異性がある。一人ひとり感じ方が違い、それが決して間違ってもいない。ふつうの災害は心が結束するが放射能災害は心の分断の連続と言ってもいいかもしれない。賠償はさらに心の分断を広げている。飯舘村は地元で仕事をすることが復興に必ず役立つということで室内で働ける職場を残し、避難先から通勤してもらえるようにした。大変な努力をしながら働いている人々が職を失ったわけでないことで賠償の対象にならず、失職して賠償を得た人と格差が生じ、ひいては辞めていくことにもつながる。原賠審では思い至らなかったはずだから、何らかの対応をしてもらいたい。
<山田広野町長>
住民帰還を加速させるためにも帰還住民が直面する生活費の増加分などの困難に着目した新たな賠償を強く要望したい。住民には、事故が収束しているのかどうか、次に何か起きたらだれが責任を取ってくれるのか、前線基地になったような町の交通渋滞、知らない人ばかりの中で暮らす圧迫感、部活動ができない子どもたち等、強い不安と苦痛がある。避難指示を解除したから賠償は打ち切ればいいと、常に打ち切ることが先に出てくる。しかし、帰還に向けて動き出すごとに精神的苦痛は増えてくることをよく考えて、ぜひ見直してもらいたい。
<松本楢葉町長>
財物賠償は当初から全損一括と考えている。防災集団移転等の用地買収の売却益を財物賠償額から控除しないように要望する。
<遠藤富岡町長>
国が我々に寄り添ってもろもろを解決するという姿勢がどんどん後退している。以前私は原賠審に「早く現地に入って第二次追補の前に現地確認をして精度の高い指針を作るべきだ」と言ったが、ようやく2年数か月たって実現した。長期避難による精神的損害の賠償額を増額してもらいたい。町民は心身ともに疲弊しており、精神的な苦痛は並大抵のものではない。住宅はもう住めない。移転保障を基本とした賠償基準にしてもらいたい。東電は原賠審指針を最低線として賠償すべきなのに、上限としている。記載のないものは認めない。指針に盛り込むことが必要なので指針追加を要望する。
<遠藤川内村長>
村が20キロ圏内と圏外の二地域に分断され住民感情が極めて複雑になっている。田畑、農地、財物の賠償について20キロ圏内と圏外のラインを取り払う必要がある。森林についても同様で、現在森林そのものの市場価値が下がってきているが、20キロ圏外も当然賠償の対象である。
<渡辺大熊町長>
現在の財物賠償基準による金額では土地、建物を取得することは困難である。帰還の見通しが立たない中で高齢者を中心に精神的苦痛は増加している。6年目以降の対応を早くしっかりと明示してもらいたい。
<伊澤双葉町長>
不自由な避難生活を送っている町民の現状をみると、平穏な暮らしを原発事故によって突然奪われた町民の労苦に、1人あたり月額10万円が本当にみあっているのかどうか、改めて被害者の立場にたって損害額を見直すことが必要ではないか。自賠責保険の1日4200円×30日=126,000円で、精神的損害賠償額が1か月10万円となったが、私たちは交通事故でなく、国の施策で現在40都道府県に分散避難させられ、家族もバラバラになって暮らしている。その精神的な苦しみが10万円でいいのかと思っている。交通事故のけがなら日に日に症状が緩和されるが、我々の精神的損害は避難帰還が長くなるほどつらさが増幅していく。見直しを強く要望する。津波の犠牲者の捜索、救助ができなかった精神的損害も明示されるべきだ。現在の財物賠償基準による金額では、町民が希望する場所で新たに住居を確保するには不十分だ。新たな場所で生活を再建できるとする考えかたを指針に明示してもらいたい。将来にわたる健康被害への賠償の考え方についてもあきらかにしてもらいたい。審査会委員に被害者代表を参画させるなど、被害者の意見を十分にくみ取った対応を要望する。被害者の東電に対する不信感が根強いなかで時効に対する不安を払しょくするためには法的な担保を明確に定めてもらいたい。
<馬場浪江町長>
被ばく、避難生活(多い人で14回避難所を変更、仮設、借り上げ住宅での生活、子どもたちの転校、高齢者への影響、家族の離散、地域コミュニティの破壊と避難住民の孤立)による精神的損害は相当なものとなっている。精神的損害に交通事故の賠償基準が適用されたこと自体が困難であり、見直しをしてもらいたい。自賠責保険の1日4200円の入院費用は最低ラインだ。4200円×30日=126,000円で、1か月10万円とした精神的損害賠償額では到底生活できない。財物賠償の基準は再調達価格に至っていない。中間指針は最低限であるのに、東電は最上限としている。東電は現状を把握していない。原賠審が 中間指針を見直さなければならない。被害状況の調査に基づく指針を作成してもらいたい。徹底的、継続的な調査をすべきである。被害者の意見を聴取する仕組みを作ってもらいたい。
<松本葛尾村長>
長期避難に係る賠償が不可欠である。山林の価値が下がり大きな損害を被っている。山林賠償基準を速やかに明示してもらいたい。帰村後も十分な生活再建ができるような賠償の枠組みにしてもらいたい。

12市町村長の報告を聞いた能見会長は、指針の見直しについて次のように言いました。

①実情を踏まえて調整しなければならない問題がたくさんある。市町村長の意見を反映させながら適切に対応していきたい。
②戻って生活をしたい人にとって十分な賠償になるようにどういう基準を設けたらいいかを考えたい。
③戻れない人が再建築できる賠償が実際に運用されるよう検討したい。
④精神的損害については、長期(6年以上)にわたって戻れない人に対する慰謝料とのバランスで検討したい。
⑤生活再建支援について賠償として限界がある場合は、審査会の意見のまとめとして政府に提言していきたい。

「見直し」のキーワードは、「解除後の相当期間」「避難指示長期化に伴う賠償」「住宅確保損害」です。それぞれの現状です。

「避難指示解除後の相当期間」
特段の事情がある場合を除き1年を当面の目安とする、ことで原賠審委員の意見がまとまっています。
(根拠)避難指示は政府と住民の協議を経て解除されることになっており、事前準備は可能である。学校や仕事の節目から見ても1年あれば合理的に帰還時期を選択できる。家屋の修繕も解除前から可能であり、工事期間を考慮しても1年で帰還は可能と思われる。

…でしょうか?
帰還するかどうかは将来に係る重大な選択であり、政府との協議内容を見ながら考えるというケースも多いと思われます。協議期間を「帰還準備期間」としていいのでしょうか?
家屋の修繕や解体・改築が1年で十分でしょうか?業者が対応できるでしょうか?修繕や解体で出る廃棄物の処理に自治体は対応できるでしょうか?

原賠審は「状況に変更が生じた場合は柔軟に判断していく、個々に事情がある場合も個別具体的な事情に応じて柔軟に判断することが適当だ」としていますが、「東電は指針以外を認めない」との12市町村長の報告を反映していると言えるでしょうか。

原賠審会議で「1年では短すぎる」との意見が強く出ましたが、大多数の委員が「1年は妥当」としました。結局、原賠審の判断の底流には「修繕、改築も終わり新たな生活を始めて、なお賠償を受けているとしてもそれが解除後1年間であれば社会的にも容認される」があるように思います。

原賠審の議事録を読んでいると、被害者に寄り添う賠償指針追及と同時に、社会全体としての公平性の確保に強い意識が向けられていると感じます。公平性も重要なファクターではありますが、今回の事故は日本社会がこれまで経験しなかった規模のものであり、その賠償を既存の賠償にあてはめて考えることは、
伊澤双葉町長が訴えているように、適切とは言えません。社会全体としての公平性の確保に留意するほど、被害者間の不公平は深くなっていく現状もあります。

被害者間の最大の不公平は、避難指示区域内と区域外の線引きで生じています。この線引きは政府の指示という絶対的な権威で支えられ、賠償内容がその1線で大きく変わることを「自明の理」としています。しかし、区域外でも区域内より高線量となっている地点や家屋があることを具体的に知っている被害者が、絶対とは言えない放射線量測定値で引かれた線を「うのみ」にできるわけはありません。
だからこそ、原賠審は自主避難の賠償指針を示したのですが、その内容は区域内と比べてあまりにも不公平です。12市町村長も強く見直しを求めたのですが、どうやら追加指針は考えていないようです。新たな状況が誰の目にも明らかにならない限り、原賠審がいったん示した指針を見直すことはないようです。

キーワードの2つ目「避難指示長期化に伴う賠償」の現状です。
避難指示が6年を大きく超えて長期化することが見込まれる地域(帰還困難区域と帰還困難区域が大半を占める市町村の居住制限区域、避難指示解除準備区域で帰還の計画が策定されていない地域)の住民に、最終的に帰還するか否かを問わず「長年住み慣れた住居及び地域が見通しのつかない長期間にわたって帰還不能となり、そこでの生活の断念を余儀なくされた精神的苦痛等」を一括して賠償する、方向
でまとまっています。
算定方法の考え方として次が示されています。
①精神的損害額に含められていた生活費増加分は合算しない。(賠償の対象となる生活費増加費用が生じた場合はその実費を損害額とする)
②中間指針第2次追補で示した一括払い600万円のうち、事故後3年後以降分を控除して追加賠償額を算定して示す。
③対象とならない地域とのバランスも考慮する。

この考え方をもとに12月9日の原賠審・審査会で支払額案、精神的損害賠償額10年分1200万円(10万円×12か月×10年)等を基に総額を1000万~1400万円として、すでに受領している750万円(10万円×75か月<2011年3月~2017年5月>)を控除した250万~650万円を一括で支払う、が示されました。
この算定には、交通事故死亡遺族慰謝料基準額・2800万円、地滑り等で自治体などから受ける災害見舞金や慰謝料・600万~800万円も参考にしたとのことです。

慰謝料について原賠審はこれで打ち切りの方向を出していますが、地元では、避難が終了していない中での打ち切りに強い批判が出ています。
「避難生活も半ばの現時点で慰謝料の全体像を示すことはできないはずだ。机上の空論だ」(富岡町・宮本町長)<朝日新聞12月10日>
「避難者の精神的ダメージは時間とともに増す。慰謝料を簡単に打ち切ることは考えるべきではない」(浪江町・馬場町長)< 同 >

キーワード3つ目は「住宅確保損害」です。
移住を余儀なくされる場合(避難指示長期化に伴う賠償の対象となる場合)、帰還して住宅を確保する時その費用が元の住宅(または宅地)の事故前価値を終える場合、必要かつ合理的な追加費用を従来の財物損害とは別に賠償すべき損害として認める、方向でまとまっています。
 
費用項目は ①住宅取得・修繕に要する追加的費用 ②宅地取得に要する追加的費用 ③解体費用 ④登記等の諸費用 です。

費用項目それぞれの必要かつ合理的な追加費用の算定方法です。
①住宅取得・修繕に要する追加的費用
被害者が事故時と同等の居住環境を確保する観点から、公共用地取得の補償額(新築時点相当価値の5割程度)より、再建築費用に近づけることが望ましい。被害者間の公平性等を総合的に考慮して、新築時点相当価値と事故前価値の差額の50~75%を上限として、住宅取得・修繕費用と事故前価値の差額を必要かつ合理的な追加費用と認める。
②宅地取得に要する追加的費用
同じ面積を確保する必要性を認めることは困難であり、被害者の多くが土地単価の周辺地域に避難していること等を踏まえて、周辺地域での標準的な宅地取得の必要性を認めることが合理的である。元の宅地面積に宅地単価の差額を乗じた額と、取得した土地の価格と事故前価値の差額、のいずれか小さいほうの金額を必要かつ合理的な追加費用と認める。
③解体費用
実際に発生した費用を必要かつ合理的な追加費用と認める。
④登記等の諸費用 
実際に発生した費用を必要かつ合理的な追加費用と認める。

以上の「見直し」は第4次追補として12月末に示される予定です。

「2 時効について」
2014年3月で事故発災後3年となります。そこで、問題になるのが「民法の損害賠償請求権時効3年」です。
5月29日に、「民法の損害賠償請求権時効3年」を過ぎても被害者が東電に提訴できるようにする「特例法」が成立しました。

ただし、提訴の前提として、原発ADRに申し立てをしていることが必要です。
原発ADRの仲介が不調に終わった場合、打ち切り通知から1か月以内であれば提訴できるというのが「特例法」の内容でした。
これでは、不十分だと、法案に「本年度中に何らかの法的措置の検討を政府に求める」付帯決議が全会一致で採決されました。

今年5月末時点で避難を指示された約16万人のうち1万人以上が未請求でした。

12月4日、「民法の損害賠償請求権時効3年」を10年に延長する「特例法」が成立しました。
数年後の健康被害を想定して、賠償請求権を行使できる「除斥期間」を「事故時から20年」ではなく「損害が生じてから20年」ともしています。

日弁連では、営業損害や自主避難費用等を請求していない被害者が10万人近くいるとしています。
賠償問題は、被害者の権利行使の問題であり、加害者である東電と国の責任履行の問題です。今後の原発存続にもかかわる問題です。これからも長く続く賠償問題について、「いのち・原発を考える新潟女性の会」は考えていきます。

なぜ非公開? 県技術委員会・福島事故検証課題別ディスカッションの公開を!

非公開となっている「県技術委員会・福島事故検証課題別ディスカッション」について質問と要望を県に提出しました。

2013年12月9日  
新潟県知事 泉田裕彦 様
原子力安全対策課長 須貝幸子 様

いのち・原発を考える新潟女性の会
山内悦子 大野和 佐藤早苗
本間伸子 桑原三恵 樋口由美子
<連絡先> 桑原三恵
953-0041 新潟市西蒲区巻甲756-15
TEL・FAX 0256-72-5091

「福島事故検証課題別ディスカッション」非公開についての質問と要望

 県政への日頃のご尽力に感謝申し上げます。
2012年に始まりました福島事故検証技術委員会は9回におよんでいます。いずれも公開され、私たち県民は、各事故調査委員会の報告、委員の議論等を直接聴取し、福島事故や柏崎刈羽原発の安全性等について考え話し合うことができました。しかし、10月末から始まった「福島事故検証課題別ディスカッション」は非公開とされ、県民は傍聴できなくなり、マスコミ取材も限られたものになっています。突然の方針転換について、県当局の説明は不十分であり、県民のなかに、県当局への不信の声も出ています。
 私たち「いのち・原発を考える新潟女性の会」はこれまでに「技術委員会に県民代表をいれること」(2012年6月20日に要請)、「県の原子力防災協議機関に複数の女性委員をいれること」(2013年8月12日)等、県民の声が直接届く県の原子力行政を要望してきました。原子力防災はもちろんのこと、柏崎刈羽原発の安全性に関しても県民置き去りの県行政はあり得ません。県当局はあらゆる機会をとらえて原子力行政への県民参加を促進すべきであり、「ディスカッション非公開」はそれに逆行しています。同時に、県民の傍聴をシャットアウトし、マスコミ取材も限定した非公開は、私たち県民の“知る権利”と“県政に参加する権利”を侵すものです。
 つきましては、次の2点につきご回答をお願いします。



1 非公開となった経過と根拠を説明してください。

2 柏崎刈羽原発の安全性にも係る「福島事故検証課題別ディスカッション」を県民、マスコミに公開し、福島事故検証について、県民の知る権利、県政に参加する権利を保障してください。

以上


                      

第21回学習交流会報告 その2 賠償の実態と問題点

第21回学習交流会(“福島とともにシリーズNo4”)報告・その2

報告その1では、問題提起・1 賠償とは・・・ と 2 賠償の仕組みについて、問題点も含めてお伝えしました。
その2では、3 賠償の実態と問題点について報告します。

3 賠償の実態
(1)賠償の内容はどのように決定されるのか?
原賠法(原子力損害賠償法)では賠償の範囲や金額等について具体的に定めてはいません。第18条で、「原子力損害賠償紛争審査会」(略称は原賠審とか紛争審査会、文科省に設置)が賠償の範囲や金額等についての「一般的な指針」を定めると規定しています。

原賠審は、事故発災後1か月半あまりの4月28日に第1次指針を提示、その後第2次指針、同追補を経て、2011年8月5日に「中間指針」を公表しました。

中間指針は、被害の全容が見えない状況でとりあえずまとめた賠償の基礎となる指針で、最終的な指針ではないという意味で中間指針となっています。以後この中間指針に必要な指針が追加されています。

(2)原賠審・中間指針の概要
中間指針で示された賠償の対象です。

A 政府による避難等の指示等に係る損害
検査費用、避難費用、一時立ち入り費用、帰宅費用、生命・身体的損害、精神的損害、営業損害、就労不能等に伴う損害、財産価値の喪失・減少等
B 航行危険区域等及び飛行禁止区域の設定に係る損害
営業損害、就労不能等に伴う損害
C 政府等による農林生産物等の出荷制限指示等に係る損害
営業損害、就労不能等に伴う損害、検査費用
D その他の政府指示等に係る損害
営業損害、就労不能等に伴う損害、検査費用
E 風評被害(農林漁業、食品産業、観光業、製造業、サービス業、輸出等)
営業損害、就労不能等に伴う損害、検査費用
F 間接被害(第1次被害者との経済関係を通じて第三者に生じた被害)
営業損害、就労不能等に伴う損害
G 放射線被ばくによる損害
急性・晩発性の放射線障害による生命・健康被害に伴う逸失利益、治療費、薬代、精神的損害等
H その他
地方公共団体または国の財産的損害等

つまり、中間指針は、当然賠償の対象となる項目を整理分類し基本的な考え方を示したものなのです。

例えば避難費用について以下のように示されています。

(指針Ⅰ)賠償すべき損害
①避難するために負担した交通費、家財道具の移動費用
②負担した宿泊費、宿泊に付随して負担した費用
③避難等による生活費増加費用
(指針Ⅱ)損害額算定方法
①交通費、家財道具の移動費用、宿泊費、宿泊に付随して負担した費用は実費を損害額とする。
②避難等による生活費増加費用は、「精神的損害」の額に加算する。
(指針Ⅲ)
避難指示等の解除等から相当期間経過後に生じた避難費用は、特段の事情がある場合を除き、賠償の対象とはならない。

(指針Ⅲ)の内容は、避難解除後相当期間の避難費用は賠償対象とするが、相当期間が過ぎたらもう賠償の対象にはしない、というものです。
今年8月7日に避難指示区域の再編が終了し、避難解除準備区域で具体的な解除時期が検討されることになった現在、この相当期間をどうするか原賠審は示すことが求められ、11月22日に方針を示しています。これについては次回で報告します。

(指針Ⅱ)の ②避難等による生活費増加費用は、「精神的損害」の額に加算する について皆さんはどう思われますか?避難による生活費増加分は避難にかかわる損害です。当然避難費用として交通費等と同様に実費を損害額とすべきです。なぜ「精神的損害」の対象に分類され、加算されるのでしょうか?

これについて次のように説明しています。

・生活費増加費用は対象者の大多数に発生する。
・さほど高額ではなく、個人差も少ない。
・実費の算定は実際上困難で、立証を強いることは酷である。
・生活状況と密接にむすびつくものであり、「精神的損害」に加算して一定額を算定することが公平かつ合理的と判断した。

理由のなかの「実費の算定は実際上困難」で避難者が立証できないというのは「精神的損害」の算定にも通じることで、立証できないことを共通項とした分類のようです。
しかし、生活費増加費用はあくまでも避難にかかわって生じた損害なのですから、避難費用から外さずに公平かつ合理的な一定額を示すべきだったと思います。実は、原賠審は今になって「精神的損害」に加算した生活費増加費用の扱いを変えざるを得なくなっています。これについても次回に報告します。

ではその「精神的損害」の指針はどうなっているのでしょうか。

(指針Ⅰ)賠償すべき損害
①自宅以外での生活を長期間余儀なくされ、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛
②屋内退避を長期間余儀なくされ、行動の自由の制限等を余儀なくされ、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛
(指針Ⅱ)損害額算定方法
生活費増加費用と合算した一定の金額を損害額と算定するのが合理的な算定方法である。年齢にかかわらず、避難等対象者個々人が賠償の対象となる。
(指針Ⅲ)具体的な損害額の算定
算定期間を3段階に分けて算定する。
①第1期(事故発生から6か月間)
1人月額10万円を目安とする。避難所等で避難生活をした期間は1人月額12万円を目安とする。
②第2期(第1期終了から6か月間)
1人月額5万円を目安とする。
③第3期(第2期終了から終期までの期間)
改めて検討する。
(指針Ⅳ)
①損害発生始期は原則2011年3月11日とする。ただし、緊急時避難準備区域の子ども、妊婦、要介護者、入院患者等で6月29日以降に避難した者、及び特定避難勧奨地点から避難した者については実際に避難した日を始期とする。
②避難指示等の解除等から相当期間経過後に生じた精神的損害は、特段の事情がある場合を除き、賠償の対象とはならない。

(指針Ⅲ)具体的な損害額の算定の「①第1期(事故発生から6か月間)1人月額10万円を目安とする。避難所等で避難生活をした期間は1人月額12万円を目安とする」については次のように説明しています。

「第1期(事故発生から6か月間)は地域コミュニティ等が広範囲にわたって喪失し、これまでの平穏な日常生活とその基盤を奪われ、自宅から離れて不便な避難生活を余儀なくされた上、帰宅の見通しもつかない不安を感じるなど、もっとも精神的苦痛の大きい期間と言える。 したがって、損害額の算定にあたっては、負傷を伴う精神的損害ではないことを勘案しつつ、自動車損害賠償責任保険における慰謝料(日額4200円、月額換算12万6千円)を参考にした上、大きな精神的苦痛を被ったことや生活費の増加分も考慮し、一人あたり月額10万円を目安とするのが合理的であると判断した」

月額一人10万円は、自賠責を根拠とするものでした。1F原発事故は、これまで例のない規模の損害を生じています。それを現在行われている賠償枠組みで対応していいのか、対応しきれるのか、疑問があります。一方、新たな賠償概念の構築は時間を要し、被害者への賠償の遅延にもなります。

自賠責を参考とした賠償額算定について、浪江町は低額すぎると今年6月に集団で原発ADRに申し立てています。要求額は25万円追加で月額総額35万円となっています。

(3)原賠審・中間指針の問題点
①賠償対象者が限定されています。
対象は避難対象区域内住民のみで、当時すでに「自主避難」が相次いでいた区域外住民については、出荷制限や風評被害を除いて、賠償を全く考慮していません。
②賠償すべき精神的損害の範囲と期間が極めて狭く、短く限定されています。
事故による精神的苦痛は「日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたため」だけでなく、家族の離散、地域コミュニティの崩壊、ふるさと喪失、先が見通せない不安、健康不安等、多岐の要因によっています。かけがえのないものを二重、三重に奪われ不安にさらされたことへの賠償が月額10万円でいいのでしょうか?
③地方自治体や国の被害範囲が極めて狭く限られていて、除染はとりあげられていません。
地方自治体や国が所有する財物及び民間事業者と同様の立場で行う事業に関する損害については、事故と因果関係が認められる場合にかぎり、また被害者支援等のために加害者が負担すべき費用を負担した場合、賠償対象となるとされています。

①の自主避難に対する賠償については、市民運動の強い要請を受け、原賠審は2011年12月6日に「中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)」を出しました。その内容です。

・自主的避難等対象区域:以下23市町村で避難指示対象区域を除く区域
県北地域(福島市、二本松市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村)
県中地域(郡山市、須賀川市、田村市、鏡石町、天栄村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町)
相双地域(相馬市、新地町)
いわき地域(いわき市)

・対象者:自主的避難等対象区域に住居があった者(避難の有無にかかわらず全員、約150万人)。避難指示区域の子ども、妊婦で自主的避難等対象区域に避難した場合も対象となりました。

・賠償対象期間:2011年3月11日~同年12月末と限定されました。

・具体的な損害額の算定
子ども・妊婦:1人40万円 *子どもは18歳以下
子ども・妊婦以外:1人8万円
避難指示対象区域から自主的避難等対象区域に避難した子ども・妊婦:1人20万円

損害額の算定については次のように説明しています。

「身体的損害を伴わない慰謝料に関する裁判例等を参考にしたうえで、精神的苦痛並びに子ども及び妊婦の場合の同伴者や保護者分も含めた生活費の増加費用等について、一定程度勘案することとした」

精神的苦痛と生活費の増加費用等を勘案したということから、避難指示区域住民への精神的損害の算定額と比較してみます。
A 避難指示区域住民への精神的損害の算定額: 
10万円×10か月(3月~12月)=100万円
B 自主的避難等対象区域住民への賠償算定額: 
子ども・妊婦 - 40万円(Aの40%)
上記以外 - 8万円(Aの8%)
C 自主的避難等対象区域住民への1か月あたりの賠償算定額: 
子ども・妊婦 - 1か月 4万円
上記以外 - 1か月 8千円
 
例えば、子ども2人と母親が県外に避難をして父親が土・日曜日に福島から会いに行く場合、2世帯になったための追加生活費が賠償算定額8万円(4万円×2人分)以内に収まるとは考えられません。また、父親が1か月4回会いに行くと1回2千円の賠償でしかありません。

原賠審は「自主的避難等対象区域の住民が放射線被ばくへの相当程度の恐怖や不安を抱いたことには相当の理由があり、また、その危険を回避するために自主的避難を行ったことについてもやむを得ない面がある」と認めたのですから、避難指示区域住民が受け取る「政府による避難等の指示等に係る損害賠償」はともかく、賠償内容が重なる「精神的損害(1か月10万円)」の半分以下(1か月4万円)という額は妥当でしょうか? 

③地方自治体や国の除染に対する除染については、「中間指針第2次追補(政府による避難区域等の見直し等に係る損害について)」で次のように示されました。

「除染等(汚染土壌等の除去、汚染拡散防止の措置、除去土壌の収集、運搬、保管および処分、汚染廃棄物の処理)に伴って必然的に生じた追加的費用、減収分及び財物価値の喪失・減少分は、賠償すべき損害と認められる」

(4)原賠審の「一般的な指針」と実際の賠償の関係
原陪審は、中間指針の「はじめに」で「中間指針」とはどういうものかについて次のように説明しています。

「中間指針は、本件事故による原子力損害の当面の全体像を示すものである。この中間指針で示した損害の範囲に関する考え方が、今後、被害者と東京電力株式会社と間における円滑な話し合いと合意形成に寄与することが望まれるとともに、中間指針に明記されない個別の損害が賠償されないということのないよう留意されることが必要である。東京電力株式会社に対しては、中間指針で明記された損害についてはもちろん、明記されなかった原子力損害も含め、多数の被害者への賠償が可能となるような体制を早急に整えた上で、迅速、公平かつ適正な賠償を行うことを期待する」

「中間指針で明記された損害についてはもちろん、明記されなかった原子力損害も含め」といっているのですから、中間指針は「これを外しちゃダメ」という賠償の最低ラインを示したものと言えます。
原賠審は、中間指針が示した最低ラインを踏まえて、それ以上の賠償を東電に求めています。
では、東電の対応はどうだったのでしょうか?

(5)東電の賠償実態
*賠償のプロセス
実際の賠償は、次のプロセスになります。

原賠審の中間指針 → 東電が中間指針を基に賠償基準を策定 → 被害者が東電の賠償基準をもとに東電に賠償請求 → 東電が賠償請求を査定 → 東電と被害者で賠償額を協議 → 合意 → 支払

このプロセスには2つの問題点があります。
①賠償基準を加害者(東電)が定めている。
②被害者からの賠償請求を加害者(東電)が査定する。

これでは、加害者(東電)有利の賠償金額決定になるのではないでしょうか?
東電と被害者との賠償額協議も、複数の弁護士を抱えた東電という“巨大組織”対“被害者個人”であり、被害者不利は明らかです。
協議が整わなければ訴訟という手段がありますが、時間も労力、費用も被害者の負担は増すばかりです。

原賠審には「一般的な指針」を策定するほかに、賠償が迅速に行われるようにする役割があり、その役割は原賠審のもとに設置された「原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)」が担っています。「原発ADR」は、文科省、法務省、裁判所、弁護士等で構成されています。

協議で合意に至らない場合、被害者が「原発ADR」に申し立てると弁護士等が仲介手続をして合意形成を促し、紛争解決を導くことになっています。「原発ADR」は申立無料で、訴状を作成する必要もなく、仲介委員の聴き取りが中心となっていて、利用しやすいのですが、「責任論」は除外されています。責任を明らかにするためには裁判が必要です。

*「中間指針」から「本補償」へ
東電は2011年8月5日に決定された原賠審「中間指針」に基づいて同月30日に「福島第一原子力発電所および福島第二原子力発電所の事故による原子力損害への本補償に向けた取り組みについて」を公表し賠償基準を示しました。

「本補償」は「中間指針」を超えた賠償を約束するものだったのでしょうか?

避難費用について比較してみます。

<中間指針>
避難するために負担した交通費、家財道具の移動費用、負担した宿泊費、宿泊に付随して負担した費用
実費を損害額とする。

<本補償>
・交通費
  同一県内の移動:1回あたり1人5000円
  都道府県を超える自家用車での移動:車1台あたり移動元、移動先ごとの標準金額
     〃    その他手段の移動:1人あたり移動元、移動先ごとの標準金額
・家財道具の移動費用
  同一都道府県内の自家用車での移動:片道1回5000円
  都道府県を超える自家用車での移動:移動元、移動先ごとの標準金額
  その他手段での移動:実費
・宿泊費
  実費、ただし1泊1人8000円を上限とする。

中間指針が「実費」としたのに対して「本補償」は、定額を示し、実費の場合は上限を定めました。それらを超える場合は「具体的な事情を確認させてもらう」となっていますが、個々の事情がすんなり、あっさり認められるとは限りません。
また、原則として領収書等の必要書類の提出を求めました。
さらに、合意以降「更なる賠償請求はしない」という同意書の提出も求めました。これは批判、非難をあび、のちに撤回しました。

精神的損害は「中間指針」通りの賠償額としました。

就労不能等に伴う損害については、
(従前の平均収入―現在の実収入)+転居費用等 となっています。

「本補償」は、賠償の最低ラインとして示された「中間指針」をほとんどそっくり「賠償基準」としたものと言えます。

*賠償額の若干のプラス
補償金請求書の膨大さ、複雑さ、再度請求はしないとの念書ともいうべき同意書、何より最低ラインを基準とした低い賠償額等について、東電への批判は高まりました。福島県や避難指示区域自治体、被災者、被災者支援団体等の要請や原発ADRの仲介を通じて、東電は賠償内容を若干プラスしています。

①精神的損害
「2011年9月1日~2012年2月29日(第2期)の6か月間は1人月額5万円とする」(中間指針と同内容)を第1期と同様「1人月額10万円」に変更。(2011年11月24日)

②自主的避難等に係る賠償
・原賠審・中間指針追補(2011年12月6日)で示された額に、子ども・妊婦で実際に避難した場合、1人あたり20万円を追加(2012年2月28日)
・原賠審・自主的避難等対象区域以外の県南地域9市町村(白河市、西郷村、泉崎村、中島村、矢吹町、棚倉町、矢祭町、塙町、鮫川村、)の子ども・妊婦に、2011年3月11日~同年12月31日について1人当たり20万円(2012年6月11日)
・宮城県丸森町の子ども・妊婦に、2011年3月11日~同年12月31日について1人当たり20万円(2012年8月13日)
・原賠審・自主的避難等対象区域の子ども・妊婦に、2012年1月1日~同年8月31日について1人当たり精神的損害8万円と追加的費用4万円、計12万円(2012年12月5日)
・県南地域9市町村、宮城県丸森町の子ども・妊婦に2012年1月1日~同年8月31日について1人当たり精神的損害4万円と追加的費用4万円、計8万円(2012年12月5日)

③就労不能損害・算定への「特別の努力」の反映
就労不能損害・算定は、中間指針と同様に(従前の平均収入―現在の実収入)+転居費用等 としていましたが、避難先でのアルバイト等による収入が差し引かれることに批判が高まり、原賠審は「中間指針第二次追補(2012年3月16日)で「事故により通常より困難になった就労で得られた収入は“特別の努力”によるものであり、賠償額から控除しない等の対応が必要」としました。

東電はこれを受けて「事故以降の新たな勤務先で2012年3月1日以降得た収入のうち月額50万円まで控除しない」(2012年6月21日)としました。

その後、今年6月10日に「2011年3月11日~2012年2月末日も対象期間に拡大、この期間での新たな勤務先で得た収入として賠償金から控除されていた金額を支払う。上限は月額50万円もしくは事故がなければ得られた収入(平均月収額)のうち低いほう」としました。

(6)賠償請求への東電の対応
賠償請求についての東電と被害者の直接交渉は非公開のため、実態はよくつかめていないようですが、大企業対個人の交渉で被害者に有利な状況があるとは思えません。

東電との交渉打開が望めない場合、被害者は原発ADRに申し立て、仲介委員が東電と被害者の和解手続きを進めます。
原発ADRは、2011年9月~12月における活動状況報告で次のように述べています。

「原発ADRへの申立件数が増加していった理由としては・・・東京電力が、直接交渉においては、いわゆる東電基準に固持するのみで、譲歩する姿勢を見せず、中間指針で個別に明記されなかった損害の賠償請求については個別具体的な事情を検討せずに賠償を拒否する(門前払いする)傾向が顕著となり、このような直接交渉における東京電力の態度に不満を抱く被害者が増加していった、東京電力は中間指針で賠償対象として明記された財物価値喪失等の賠償を動産、不動産を問わず先送りしており、このような東京電力の態度に納得できない被害者も増加していったと考えられることなどが挙げられる。・・・

原発ADRを通しての和解成立が遅延している東京電力側の原因としては、
・東京電力が財物価値喪失等及び中間指針に個別に明記されていない損害の賠償請求について和解協議に入ることに消極的な態度をとり続けたこと
・中間指針において目安とされた金額の増額や生活費増加分の賠償になかなか応じないこと
・事件全般につき答弁書における認否留保が多く、積極的な審理促進の態度があまり見られないこと
等が挙げられる」

また、第23回原子力損害賠償紛争審査会(2012年2月17日)で野山原発ADR室長(文科省)は次の発言をしています。

「東電基準が発表された当初、東京電力の賠償の末端の現場、被害者の方々と直接接触がある現場では『中間指針に具体的に書いてないことを賠償することは、中間指針に反するんだ。だから賠償はできないんだ』と、このような説明がなされていたということを、福島県のいろんな方々からのお話とか、当方のコールセンターにかかってくる電話から、そうであったのではないかと推定しております。・・・

いろんな事業者が、こういう累計での損害賠償をということで東京電力に話をすると、それは中間指針に具体的に書いてないから賠償の対象にならないという対応をされるという話は今でもわりかし日常的に聞きますし・・・やはり資料を十分集められない被害者の方が非常に多いのに、とにかく資料を要求して、資料がないとなかなか相対交渉に応じないようなこと、それから、ちょっと卑近な言い方ですけど、何か隙があったらすぐ減額しようとするような態度が見られる、そういう問題があるんだろうと思います」

以上から、東電の賠償に対する問題点をまとめます。
・「中間指針に明記されない個別の損害が賠償されないということのないよう留意されることが必要である」という原賠審の指摘にもかかわらず、中間指針内の賠償(最低ラインの賠償)ですませようとしている。
・資料提出がないと交渉に応じようとしない。
・和解に対して消極的である。

他にも次の点が指摘されています。
・慰謝料(精神的損害)、除染、風評被害について、低額におさえようとしている。
・自主避難者の請求に対して、きわめて不十分な賠償でのぞんでいる。

事故発災から2年9か月の現在、賠償をめぐる状況はごく限定的に改善されただけで、被害者の苦しみは続いています。

7月23日に、福島県内から新潟県に避難している354人が国と東電に約39億円の損害賠償を求めて新潟地裁に提訴しました。原告の7割以上264人が自主避難者で、原発ADRでも低額におさえられてしまう賠償に対して、避難指示区域外であっても健康被害を避けるための避難の判断には合理性があると主張しています。弁護団長の遠藤弁護士は「避難者の救済が進んでいない現状に限界を感じ、訴訟を起こさざるを得なかった」と語っています(新潟日報7月24日)。


次回は、避難指示区域再編に係る賠償の問題等をとりあげます。
(12月2日)

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