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消えた「立地審査指針」と新規制基準

“起きない”とされていたシビアアクシデント(大量の放射性物質が原発の敷地外に流れ出る事故)が福島第一原発で発生し、政府はそれまでの規制の仕組み、基準や指針を改めざるを得ませんでした。

規制の仕組みは、原子力安全・保安院(保安院)から原子力規制委員会(規制委員会)に代わりました。福島事故以前から、原発を推進する経産省に属し人事も交流がある保安院を経産省(原発推進)から切り離し独立させるべきだと指摘されていて、IAEAにも勧告されていました。推進の“なべ”のなかにいた規制当局が、福島事故が起きてようやく分離・独立したのです。

2012年9月に発足した規制委員会は、すぐに新規制基準策定にとりかかり、法律で定められた策定期限2013年7月に新規制基準を決定しました。決定と同時に、4電力会社・5原発・10基が審査申請をしました。そのうち九州電力川内原発1、2号機の審査が優先となっています。

新規制基準は、設計基準・重大事故対策・地震、津波に係る設計基準の3本柱からできています。いずれも旧指針を見直し強化していますが、旧指針のうち原発立地の妥当性を審査する「立地審査指針」を規制委員会は「その内容は新基準の中に基本的に含められている」として、なくしてしまいました。

「立地審査指針」の内容は、新規制基準にどのように含められているのでしょうか?

<立地審査指針・原則的立地条件>
①大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろんであるが、将来においてもあるとは考えられないこと。また、災害を拡大するような事象も少ないこと。
②原子炉は、その安全防護との関連において十分に公衆から離れていること。
③原子炉の敷地は、その周辺も含め、必要に応じ公衆に対して適切な措置を講じうる環境にあること。

→<新規制基準では>
・地震・津波の新基準で審査し、設置許可を判断する。
・地震・津波以外の外部事象(火山とか竜巻とか)の範囲を以前より拡大し、設計を審査し、設置許可を判断する。

「新規制基準」では、「立地審査指針」の②、③で定められている公衆(住民)と立地との関連が述べられていません。九州電力川内原発が現在優先審査されているのは、地震、津波、それ以外の自然現象について新基準をみたし基本的立地条件をクリアしているから、と規制委員会は説明しています。

大きく変わったのは「立地審査指針」のつぎの項目です。

<立地審査指針・基本的目標-立地審査の指針>
・敷地周辺の事象、原子炉の特性、安全防護施設等を考慮し、技術的見地からみて、最悪の場合には起るかもしれないと考えられる重大な事故(以下「重大事故」という)の発生を仮定しても、周辺の公衆に放射線障害を与えないこと - 原子炉の周囲は、原子炉からある距離の範囲内は非居住区域であること。
・重大事故を超えるような技術的見地からは起るとは考えられない事故(以下「仮想事故」という)の発生を仮想しても、周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないこと。 仮想事故の場合には、集団線量に対する影響が十分に小さいこと-原子炉からある距離の範囲内であって、非居住区域の外側の地帯は、低人口地帯であること。
原子炉敷地は、人口密集地帯からある距離だけ離れていること。
<立地審査指針・敷地境界の線量基準>
被ばく線量100m㏜以下

→<新規制基準では>
・炉心損傷防止対策でフィルタベント装置を使用する場合、敷地境界での実効線量を評価し、周辺の公衆に対して著しい放射線被ばくのリスクを与えないこと 発生事故あたり概ね5mSv以下を確認すること
・格納容器破損防止対策でフィルタベント装置を使用する場合、環境への影響をできる
だけ小さくとどめることを確認するため、セシウム137の放出量が100テラベクレルを下回っていることを確認すること。


「立地審査指針」では、どのような事故が起ころうとも、敷地境界の線量基準を100m㏜以下に抑えられる原発だけが審査をクリアできることになっていました。福島事故発生当時、福島第一原発はもちろん、日本にあった54基の原発はすべてこの基準をクリアすると判断され、設置を許可されていました。

福島事故では、2011年3月11日~2012年3月31日の間の敷地境界・積算線量はおよそ1190mSv(2011年3月11日~同年3月31日まではおおよそ234 mSv )となっています*。「敷地境界の線量基準100mSv」を明らかに超えたのですから、福島第一原発の設置許可は取り消しです。そして、この基準で設置許可された全原発について、福島事故と同等の事故が発生した場合「敷地境界の線量基準100mSv」を守れるのかどうかを点検し、守れない原発は設置許可を取り消さねばなりません。
 *「原子力規制の新基準に重大事故の敷地境界被ばく線量の評価を」滝谷紘一(科学 2013年5月号 岩波書店)「立地評価をしない原子力規制の新基準」滝谷紘一(科学 2013年6月号 岩波書店)

これについて2012年6月5日の衆議院環境委員会で質問が出ましたが、当時の保安院長は「福島第一原発はすでに廃止の届けがあり、電気工作物としての取り扱いは終わっている」と回答をしています。そして、その11日後6月16日に、「立地審査指針」による再審査もないまま、野田首相は大飯原発の再稼働を決定しました。


「新規制基準」では基本的目標・立地審査の指針・敷地境界の線量基準の項目がなくなりました。その結果「周辺住民に放射線障害を与えないこと」も「周辺住民に著しい放射線災害を与えないこと」も消え、それゆえ、2つを保障する「敷地境界の被ばく線量は100mSv以下」も消えました。

周辺住民を被ばくから守る基準が消えたかわりに登場したのが、フィルタベント使用時の基準です。

 ①炉心損傷を防止するために(炉心損傷以前に)フィルタベントを使う場合は  
  敷地境界で、発生事故あたり概ね5mSvを超えないこと

 ②格納容器破損を防止するために(炉心損傷以降に)フィルタベントを使う場合は
  セシウム137の放出量が100テラベクレルを超えないこと

「新規制基準」でこのように整理したことについて、昨年度第2回新潟県技術委員会(2013年9月14日)で規制委員会担当者は次のように説明しています。

  「立地審査指針で想定した事故は、炉心損傷はするが格納容器は損傷せずに維持され、設計上許可されている漏えい率で格納容器から漏れ出たとして計算した線量を、敷地境界の線量基準としていた。福島のような事故(シビアアクシデント)が起きた時に、敷地線量を何ミリシーベルト以下に抑えなさいと言うのは無理で現実的でないので、新規制基準では敷地境界の線量評価を基準としないよう方針転換をした。ただし、居住できなくなるようなことを防ごうということで、セシウム137の放出量を100テラベクレル以下に抑えることを基準とすることにした」

福島事故を見ればシビアアクシデント時に「敷地線量を何ミリシーベルト以下に抑えなさいと言うのは無理で現実的でない」ことは明らかです。であればこそ、被ばくと環境汚染が避けられない事故の可能性がある原発は止めるべきです。

なぜ、セシウム137だけを放出量上限基準値としたかについて規制委員会・田中委員長は国会(衆議院原子力問題調査特別委員会 2013年5月18日)で次のように説明しています

 「セシウム137は半減期が30年と長く、いったん汚染されると長期に汚染が続く。100テラベクレルはあくまでもセシウム137について規定したもので、この程度の対策をしておけば、それほど重篤な問題は起きないと判断して基準とした」

田中委員長はまるで「重篤な問題が起きなければそれでいい」と言っているようです。

「新規制基準」では、シビアアクシデントで住民の被ばくを抑えるいかなる基準値もありません。セシウム137は100テラベクレルまで放出することが許可されているのですから、それによる被ばくと汚染を引き起こしても電力会社は責任を一切問われず、住民は被ばくと環境汚染を“がまん”しなければならないことになります。セシウム137以外の放射性物質の上限規制値はありません。いわば、流しほうだいです。「新規制基準」は、電力会社の放射能放出を許可し、住民に犠牲を強いる“きば”を隠しもっているのです。

安倍政権は「規制委員会の新規制基準審査をクリアした原発は無条件で再稼働を認める」としています。私たちが再稼働を認めれば、身に降りかかる犠牲を認めることになります。「再稼働はダメ」と心の中で響き渡る言葉を、声にだしていきましょう。

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