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「東電テレビ会議で何を話していたの?」 第27回学習交流会報告

いのち・原発を考える新潟女性の会・第27回学習交流会(6月15日)は東電テレビ会議を取り上げました。

東電テレビ会議の映像はすでに全国各地で上映会が開催され、事故発生直後のリアルタイムの状況をご覧になった方々も増えています。新潟県でも、3月に長岡市で上映会が催されました。

一方、テレビ会議は文字起こしされ「福島原発事故東電テレビ会議49時間の記録」のタイトルで岩波書店から出版されています。東電本店が録画した3月12日22:59から15日00:06までのテレビ会議での会話を伝える400頁余(A4版)のうち、今回は12日22:59から13日23:49までをレポートしました。

当日のプレゼンテーションの構成です。
(1)テレビ会議公開の経過
(2)3月11~12日の事故経過
(3)3月13日の“福島第一原発”
(4)浮かび上がる問題

このブログでは、「(4)浮かび上がる問題」の骨子を報告します。

テレビ会議の会話から浮かび上がる問題を5点にまとめました。
① 事故対処のネック ② 情報  ③ 東電本店中枢の認識  ④ メルトダウンの認識  ⑤住民への目線
 
各項目の概要です。
①事故対処のネック 
・物資の枯渇と不足
ガソリン、軽油、水、業務車、注水用消防車、バッテリー、放射線防護装備、工具、お金、食糧、生活用品、PHSの電源・・・物資の不足は事故拡大をもたらした。
(13日07:17)
1F資材班「資材班です。すいません。これからバッテリー等を買い出しに行きます。現金が不足しております。現金をこちらに持ち出している方、ぜひ、お貸しいただきたいと思います。すいません。申し訳ありませんが、現金をお持ちの方貨していただけないでしょうか。よろしくお願いします」

・作業員が入れない高線量の現場
(13日13:36)
本店「…とにかく人が行けないってところが最大のネックだと思うんで」
本店高橋フェロー「そうだね。もう危ないね。はい」

・複数基同時事故による作業員の不足
(13日18:32)
1F吉田所長「すみません、手が回っていません」

・被ばくによる作業員の不足
(13日06:56)
1F保安班「全員ではありませんけど、一部の人において、100ミリに到達する人が出始めます。このままでいきますと、かなり100ミリ到達者になりますんで、作業員確保のためにも応援を計画をお願いします」

・放射能汚染による、民間業者や自衛隊の協力体制の不備
(13日06:56)
1F保安班「自衛隊の方の線量を紹介いたしますと、今日作業してしまいますと、100を超えてしまいます。今日の作業はかなり自衛隊さんにお願いするのは難しいかと思われます…」

②情報
・テレビ会議は、東電本店=福島第一原発=福島第二原発=柏崎刈羽原発=オフサイトセンター、をむすんでいた。当初、保安院、官邸は東電テレビ会議システムに繋がっていなかった。保安院がシステムに入り、リアリタイムのやり取りができるようになったのは2011年3月末、官邸は同年4月7日だった。
・12日早朝にオフサイトセンターに引き揚げた保安検査官(保安院職員)はテレビ会議には声も姿もなく、リアルタイムの情報交換に寄与していない。

・官邸原発事故対策チームが当初いた「中2階」と呼ばれた地下の部屋は通信事情が劣悪で、途中から5階の総理執務室や総理応接室に移らなければならなかった。携帯電話も繋がらなかった。
(13日04:24)
1F吉田所長「もうかかんないよ、この電話。かけてんだけど」
本店「何度かやるとかかるから、何度かトライしてください」
1F吉田所長「むーっ。昨日からずっとこれなんだよなぁ、もう。官邸は」

・官邸に情報が“入らない”理由は、通信状況だけか? 官邸には武黒フェローをはじめ東電幹部がつめていたが、東電と官邸、保安院との間の情報交換・意思疎通は不十分だった。
(12日22:59)
本店武黒フェロー「…大きな官邸という非常に閉ざされたところであんまり情報が十分に伝わらない…きわめて隔離されてほとんど情報が入らないと、今日もあの3時半に爆発があったっていうのは、5時半に菅さんの執務室のテレビ見て、『ぎゃっ』てびっくりしちゃったんだけれども…」

・官邸や保安院は、プレス対応や体面保持のため、政治的意図に基づいた都合のよい情報を求めていた。
(13日00:45)
本店「何かね、官房だか、官邸だかのほうのプレス発表で元々1時頃に目標まで行くよというふうに聞いていたもんで、1時頃までに終わるよって言っちゃいそうなんだけど、今の話だと、この位までかかります、かかって満水にしますってことだから、その数字をえいやで計算してこんなもんて言ってあげないと、なんとなくこのままだと1時に圧力容器満水のなりますっていうふうにプレスでしゃべってしまいそうな勢いらしいんです、正しい数字は」

本店「正確に決めるのが難しいんだったら、釜を満水にするのに必要な容量に対していま1立米位で入れているから所要時間何時間で何日とかそのくらいの感じでもいいんですけど。なるほど、了解、了解。満水になるのね、皆待ってんだって。あの官房とか大臣官房とか、官邸とかで。ちょっと待ってください。だから、えいやとこんなもんですって」

(13日00:56)
本店「すみません、なんかもうニュースで言っちゃったそうです。1時に圧力容器満水になりましたって。…」

・保安院等への報告が迅速ではなかった。
(13日04:26)
本店「先ほど(03:52)のHPCIの件をNISA(保安院)に話すんですけれども、バッテリーの見込みってありますか」

・ マスコミや政府記者会見に神経をとがらして、発表内容を操作しようとしていた。
(13日13:28)
本店「今日、夕方、政府がなんか記者会見やるらしいいんですけど、そん時これ、何をしゃべるのか何か分からないんですけど、これ直すとこ直さないと」

・情報を迅速に公開する理念や体制に欠けていた。
(13日22:28)
本店「えっとですね、これは福島事務所の発信ですけども、福島事務所が本店のモニタリングのデータ
を出そうとしたらですね、表にしたものを出してはいけないと言われたと、というふうに言っておりますが」

・清水社長は、13日午後官邸で「強い注意」を受け、社内関係者に「広報する時は、まず官邸にお伺いを立てて、官邸の許しが出るまでは、絶対に出してはならない」と指示した。
(13日14:43)
本店高橋フェロー「はい。で、昨日の1F1と同じような水素によると思われる爆発が生じる可能性がありますと、そこまで言っとく必要があるんじゃないかと」
オフサイトセンター武藤副社長「分かりました」
本店高橋フェロー「で、まず保安院と官邸にこれを言って、もう一つ相談なんですが、プレスにも言っておいてはどうかと思うんですが、どうでしょうか。みなさんのご意見、どうでしょうか」
本店「あの、官邸とかあれに言ってからプレスだと思うんですけど」
本店高橋フェロー「プレスにも言うよということを前提に話をしてもらうと。どう?」
オフサイトセンター武藤副社長「いいかと思います」
本店「順番を間違えずにプレスにも言うってことだと思います」

③東電本店中枢の認識
・事故の理解が不足し、事故を甘く見ている。事故現場の危機感が共有されていない。
(13日18:55)
本店勝俣会長「もしもし、うん、うん<相手の話をしばらく聞く>うん。あのねえ、あの、1の3はベントをね、開けられそうなのよ。うん。水素?水素の問題?あー、それ、それを言ってんの。それは、まぁ確率的には非常に少ないと思うよ。だから、あのー、そんな話をしてね、国民を、あのー、まぁ騒がせるのがいいのかどうか難しい首相判断だけど。逆に言うとこっちに、次の社長会見でそれを聞かれたら、それは否定するよ。おそらくありえないと。うん、いや、だから結局、だってね、ベントを開いちゃうから恐らく消えてくれるかと思うよ。うんまぁありうるけれど、結構逃がせばなんとかなるかな。うん?」

・事故の進展よりも官邸への報告や官邸からの許可等を優先して、事故対応にあたろうとしている。
(13日08:08)
本店「…本店と官邸と保安院とベントタイミングとかも大体予想時間測りながら官邸の許可受けたりしてるんで、それ守るように基本的にやってね。・・・」

・ 勝俣会長、清水社長の発言に、事故への社会的責任の自覚が感じられない。
(13日23:28)
本店清水社長「・・・福島の今の状況も、必ずしも全く予断を許さないというのは基本認識で、えー、まぁ、したがって、まぁ常にそうでありますが、やっぱり最大のリスク考えて行動すると、対応すると、これはもう言わずもがなでありますが、これまでもそうだと思いますが、えー、まぁぜひ、たいへん、まぁ疲れもたま、たまってるわけですけど、あのー、ぜひここはまぁ踏ん張りどころということで、あのー、よろしくお願いしたいと思います。えー、したがっていま、時間というのがもう11時、もう半に、もうなりましたので、一応ここで、まぁ締めてですね、まぁ交替の方もい、いらっしゃるだろうし、やはり状況判断に基づいて、そのいま、それぞれの班ごとに、いまどういう態勢にするか、そういうあの、今朝もそうだったんですけど、うーん、あー、比較的早い時間に、いー、ま、ちょっと1F3のあれが出ましたんでね、そういうことありうべしということで、ぜひ、あのー、そこは対応に遺漏なきように、あの緊急は、かかるべしということで、重ねてよろしくお願いしたいと思います。はい、じゃあ一応ここで、あのー区切りをつけたいと思います。はい、どうもご苦労さまでした」

④メルトダウンの認識
・“メルトダウン”という用語は、13日のテレビ会議では勝俣会長が1回使っている。
(13日18:52)
本店勝俣会長「それはね、総理の会見は19時なんだし、それこそ、社長の会見が20時なんだよ。だから、総理の会見のときに、そのう、メルトダウンはありうるか、それらしいとか」

・1F所員は、「炉心溶解」「炉心溶融」と言っている。
(13日04:53)
1F技術班「3号機TAF到着まで1時間弱と評価しています。TAF到着から炉心溶解まで4時間くらいというふうに評価しています」
(13日06:20)
1F 「炉心損傷が6時15分に始まったとすると、炉心溶融が8時15分。ラプチャーが破れてベントになるのが、えっと、8時半ということになります」

・「3号機炉心溶融の可能性」はテレビ会議を通じて認識されていた。
(13日08:08)
1F技術班 「燃料が露出してからしばらく時間が経ってますので、炉心溶融となっている可能性があります。炉心溶融となっている可能性がありますので、お知らせいたします」

・吉田所長の「もうかなり溶けてるよ」の「溶けてるよ」は、東電が映像公開に際してプライバシーの保護のためにかぶせた「ピー音」の対象となり消されていたが、東電作成記録には記載があった。13日の段階では、吉田所長は“メルトダウン”を強く意識しながら、最悪の事態回避のため、あらゆる手段による注水を試みることに専心していたのではないか。
(13日06:24)
1F「…急速減圧して…0.5MPa以下くらいまでもっていけるかと。今のD/Dポンプの吐出圧からすると…ちょっとリスクが大きいので、SLC(ホウ酸水注入系)ポンプとMUW(復水補給水系)を生かすのを優先して考えて。…8時めどでやってます」
吉田所長「8時だともうかなり××。遅いよ」(××(ピー音):東電作成記録には「溶けてるよ」の記述がある)…まずはさ、まずはさ、最優先は水突っ込むんだから、早やくさ、ベントして消火ポンプをいかして突っ込むと。並行してSLCをいかして・・・どんどん入れていくと、そういう手順じゃないの。SLCが遅すぎるんだもん、だって。・・・やっぱり減圧冷却、チャレンジせざるをえないでしょ」

・12日の会見で「炉心溶融の可能性」を指摘した保安院は同日深夜に担当者が“メルトダウン”の進行を否定し、13日の会見で「溶融はわからない」とした。保安院の発言内容の変化に東電が関与していたかどうかはわからない。
*“メルトダウン”に関する保安院会見内容
12日9時 「被覆管の一部溶け始めていると考えられる」
  14時 「炉心溶融の可能性がある。進んでいるのではないか」
13日5時 「溶融の可能性は否定できない」
  17時 「溶融はわからない」  

⑤住民への目線
・吉田所長は、住民への説明が不足していることを意識していた。本店幹部は、吉田所長の提起を受けるまで、避難住民への対応の必要性を認識していなかった。
(12日23:07)
吉田所長「あのーちょっと、いま、我々プラントのほうに力いってるし、もちろんNISA(保安院)だ、官邸というところにあるんですけども。避難している人たちの中から、やっぱりものすごく不満があって、東京電力が説明しに来ないというかですね、いつまでこんな生活が続くんだと、こういうようなご不満が多々出ているようで、なかなかそれにですねえ、ちょっと応えきれてないなと。今後のことを考えると多分ものすごい我々今回のことで鼻つまみ者になっちゃうわけですけれども。このタイミングでやっぱり手を打っておかないとですね、ますますそういう感じがしてて、ただあまりそこに人が割けないというところが困ったなぁ、と思ってる」
本店高橋フェロー(本店担当とサイト広報で相談するという提案を、吉田所長にサイトにその余裕はない、と言われて)「じゃ、ちょっと立地地域部と相談しますよ」

・避難指示が出たエリアについては、避難済みとして、ベント実施に係る対応は必要なしとしている。
(13日07:04)
本店保安班「3号機ですけども、ベントをしたときの放射能の拡散挙動です。…陸側の最大が86、海側の最大が109が評価結果です。いずれも避難しているエリアになりますので、特段プラスアルファの措置はいらないかと思います」

文献 
・福島原発事故 東電テレビ会議49時間の記録
(福島原発事故記録チーム編  解説:宮﨑知己、木村英昭 岩波書店2013年9月)
・福島原発事故 タイムライン2011~2012
(福島原発事故記録チーム編  著者:宮﨑知己、木村英昭 小林剛 岩波書店2013年9月)

次回学習交流会で「福島原発事故 東電テレビ会議49時間の記録」の後半、3月14日00:00~15日00:06)をレポートし、浮かび上がる問題を提起します。どうぞご参加ください。
・次回(第28回)学習交流会
  7月20日(日)13:30~16:00 クロスパルにいがた 4階402講座室
  テーマ:「東電テレビ会議で何を話していたの?(その2)― 2011年3月14日の“福島第一原発”―」
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