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福井地裁判決「大飯原発3,4号機の運転をしてはならない」と新規制基準

7月16日、規制委員会は川内原発1,2号機の新規制基準審査書案を了承し、同原発が新規制基準に適合していることを実質承認しました。今後、パブリックコメント等、一定の手続きを経たのち、早ければこの秋にも再稼働かといわれています。
  
新規制基準の内容や、福島原発事故が明らかにした防災計画をめぐる諸問題については、また別の機会にゆずることにして、ここでは「大飯原発3,4号機の運転をしてはならない」とした福井地裁の「関西電力大飯原発3,4号機運転差止請求事件」判決(5月21日)と新規制基準について違いを見ながら、規制委員会の審査適合とはどういうことかを考えたいと思います。

(1)福井地裁判決と新規制基準審査の根本的な相違

 規制委員会・新規制基準審査は…
・規制委員会の所掌は原発の規制であるとして、原発を今後も稼働させていくのかどうかについては、一切議論しない。
・したがって、規制基準は今後も現存の原発を稼働させていく前提で定められている。
・規制基準は福島原発事故の教訓をもとに「最大限の安全」を求めるとしているが、断層評価の一部を除けば、現存原発に可能な範囲の「最大限の安全」でしかない。
・事象が発生する確率が一定以下の場合は「起きない」と処理し、対策を義務付けていない。
・防災指針策定のみが所掌であり、立地自治体の避難計画の是非の判断は原発稼働の規制対象外としている。

福井地裁・判決は…
・本件訴訟を考える指針は、すべての法分野で最高の価値を持つ人格権で、日本の法制下で人格権を超える価値はない。
・原発の稼働は法的には「経済活動の自由」に属し、憲法上では人格権よりも劣位に置かれる(人格権が優位である)べきものである。
・福島原発事故は、原発の事故が人格権をきわめて広汎に奪う可能性があることを明らかにした。
・よって、福島事故のような事態を招く具体的な危険性が万が一でもあるのかどうかを裁判所は判断すべきであり、この判断こそが裁判所に課せられた最も重要な責務である。

(2)人格権とは?
私たちは、生まれながらに人格権を持っています。例えてみれば、私たちは人格権という“宝の小箱”を体内にセットされてオギャーと生まれてきた、というイメージです。
         
“宝の小箱”には「生命 身体 精神 生活」という、私たちが生きていくのに欠かせない4つのボールが入っています。

4つのボールが入った“宝の小箱”は、不当に奪われないよう、傷つけられないよう、憲法で保障され守られています。

憲法13条〔個人の尊重・幸福追求権〕すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
憲法25条〔生存権と国の責務〕すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上および増進に努めなければならない。

福井地裁判決は、原発事故は広大な範囲の人々の人格権を傷つけ奪うものであるから、万が一でも事故の危険がある場合裁判所は、原発の運転を止める判断をすべきである、と述べています。
 
(3)判決が示した「福島事故のような事態を招く具体的な危険性が万が一でもあるのかどうか」を判断するポイント 
① 放射線の健康被害については様々な見解があるが、20年以上この問題に直面し続けてきたウクライナ共和国、ベラルーシ共和国は、今なお広範囲にわたって避難区域を定めている。この事実は、放射性物質による健康被害について楽観的な見方をしたうえで避難区域は最小限で足りるとする見解に重大な疑問を投げかけている。
② 地震の発生は一度も予知できていない
③ 平成17年以後10年足らずの間に4原発で5回にわたり基準地震動を超える地震が起きている。いずれも、自然の前における人間の能力の限界を示すものであり、関西電力が想定した基準地震動を信頼できる根拠は見いだせず、基準地震動を超える地震が来ないというのは根拠のない楽観的見通しにすぎない。
④ 大事故に至らないよう対策が取られているというが、事故原因につながる事象すべてを取り上げること自体極めて困難であり、事故が発生し事態が深刻になればなるほど混乱と焦燥のなか、原発の従業員に的確・迅速の措置をとることを求めることはできない。
⑤ 事故の進行中に、どこに、どんな損傷が起き、それがどんな事象をもたらしているかを把握することは困難である。
⑥ 防御用設備を複数備えても、地震の際の安全性を大きく高めるものではない。
⑦ 放射性物質が一部でも漏れれば、そこには近寄ることさえできなくなる。
⑧ 何倍かの余裕を持たせて設計しても、基準を超えれば設備の安全は確保できない。
⑨ 福島原発事故において原子力委員会委員長は、使用済み核燃料プールからの放射能汚染が最も重大な被害を及ぼすと想定し、強制移転地域が170㎞以遠にも生じる可能性や、移転を認めるべき地域が250㎞以遠にも発生する可能性を指摘した。使用済み核燃料プールから放射性物質が漏れたとき、原発敷地外に放出されることを防ぐ原子炉格納容器のような堅固な設備はない。
⑩ 大飯原発3,4号機に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ちうる脆弱なものであると、認めざるを得ない。

判決が指摘した上記の判断のポイントは、新規制基準とその審査の根拠がいかに危うくもろいものかを明らかにしています。

(4)関西電力の「原発必要論」について、判決はどのように述べているか?
関西電力の主張①原発稼働は、電力供給の安定性、コスト低減につながる について判決は…

・きわめて多数の人の生存そのものにかかわる権利と、電気代の高い低いの問題等を並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断したりすることは、法的には許されないことと考えている。

・コストの問題に関連して国富の流出・喪失の議論があるが、原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出・喪失と言うべきでなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると考えている。

関西電力の主張②原発稼働は、CO2排出削減に資するもので環境面に優れてい について判決は…

・原発で深刻な事故が起きた場合の環境汚染はすさまじく、福島原発事故は日本始まって以来の最大公害、環境汚染である。環境問題を原発運転継続の根拠とするのは、甚だしい筋違いである。


判決文は、安倍政権が声高に喧伝している「再稼働すべき論」を見事に砕いています。しかし、誤りを指摘されてなお強弁してはばからないのが安倍政権です。この判決がこれからの日本の道しるべとなるよう、1人でも多くの人にその内容を伝えていきましょう。

(*文献:「大飯原発3,4号機運転差止請求事件判決要旨」)

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「東電テレビ会議で何を話していたの?3月14日の福島第一原発」第28回学習交流会報告

「いのち・原発を考える新潟女性の会」第28回学習交流会(7月20日)は、先回に続き2011年3月14日の東電テレビ会議における会話について話し合いました。

2011年3月14日の1F(福島第一原発)はどのような状況だったのでしょうか?

事故発生から3日目、1Fは3つの危機に襲われました。

<1番目の危機>
深夜01:09、炉心注水の水源だった3号機逆洗弁ピット内の海水が残りわずかとなり、ポンプの破損を防ぐために1号機と3号機への注水を停止。炉心注水がストップした3号機のドライウエル(格納容器)圧力が上昇。
猪苗代から届いた淡水をピットに入れ、03:21に3号機の注水が復活。
しかし06:00近くなっても3号機のドライウエル圧力の上昇が止まらず、06:24には炉心水位がダウンスケールし、燃料が露出、吉田所長は「危機的状況」だとして現場作業員に退避命令。現場作業停止。
07:00頃を境にドライウエル圧力が下降に転じ、最悪の状況を脱した。現場作業、復活

<2番目の危機>
11:01、3号機爆発。
12日の1号機爆発を受けて、13日に2,3号機の爆発回避策を検討。2号機は原子炉建屋壁面に穴をあけ中のガスをぬく、3号機は空調系を動かして窒素や二酸化炭素を格納容器に送り込み爆発が起きない程度にまで水素濃度を下げる方針が確認されていたが、実行されないまま2度目の爆発が起きた。
爆発当初、吉田所長も本店対策本部も水素爆発か水蒸気爆発か明確でなく、テレビ会議には次の会話が記録されている。

11:29
本店広報班 「3号機付近の白煙発生ということで、至近の情勢をまとめたペーパーを作りましたので、ご覧いただきたいと思います」
本店清水社長 「これは何をお知らせしているの?」
本店 「はい、3号機のですね、水蒸気爆発の内容を」
本店 「本日11時1分に3号機原子炉建屋で再度大きな、再度はいらないですね、大きな音が発生し、発生しました」
本店高橋フェロー 「要はさ、1号機を3号機に変えただけだってんでしょ。それで、水素爆発かどうか分かんないけれども、国かなんか保安院が水素爆発と言っているから、もういいんじゃないの、この水素爆発で」
本店 「はい、可能性ということで」
本店小森常務 「水蒸気って、前も言ったんでしたっけ」
本店高橋フェロー 「これはさぁ、保安院がさぁ、さっきテレビで水素爆発と言ってたけど。保安院のやつは言ってたと思うんだけど。歩調を合わした方がいいと思うよ」
本店 「それでは水素爆発だけでしぼってよろしいですか」
本店石崎部長 「もうすでに官邸も水素爆発という言葉を使っているから、それに合わせたほうがいいんじゃないですか」
本店 「いかがでしょうか」
本店清水社長 「はい、あの、いいです。これでいいから、スピード」
本店 「ゴーサインです」
本店清水社長 「スピード勝負」

この爆発の結果、注水の水源だった3号機逆洗弁ピット(3号機ピット3号機タービン建屋海側)は瓦礫で埋まり、消防車は損壊、ポンプも瓦礫の下、注水用のホースは破れ、注水が滞った。その上、がれきの線量は吉田所長が驚くほど高かった。

14:36
1F 「いま現場から帰ってきた放管員が、ピットの周りの線量が400から500mSv/h」
吉田所長 「うわっ」
1F 「平ブルかなんかでガーッと押すかしないかぎり、ブロックが放射化というか、線量になっちゃってますんで」
吉田所長 「本店さん、本店さん、平ブルの手配お願いしたいんですけども」

<3番目の危機>
爆発の混乱がようよう落ち着いた12:49、2号機でそれまで動いていたRCIC(非常用冷却装置の一つで原子炉隔離時冷却系。原子炉内の蒸気の力で復水貯蔵タンク等の水を原子炉に注入する装置。バッテリーが切れるまでの間(およそ8時間程度)動くとされていたが、2号機ではすでに60時間以上も動いていた)がいよいよ機能を喪失、原子炉水位が低下し始めた。
燃料露出想定時刻をにらみながら、吉田所長は給水ラインの設定、3号機ピット給水維持、計器類点検、爆発防止策の実行を指示。
14:49、2号機ブローアウトパネルが開いているのを確認。爆発の影響とみられる。
15:50すぎ、原子炉圧力をぬいて注水するため、まずベントを実施してサプレッションチェンバーの温度と圧力を下げ、その後SR弁を開いて原子炉圧力をぬき、注水する、との手順を確認。
その直後、官邸の原子力安全委員会・班目委員長から「ベントよりSR弁開を先行すべき」との指摘が届く。1F対策本部はSR弁を開いてもサプレッションチェンバーの温度が高いままでは蒸気が凝縮せず原子炉圧力は下がらず、炉水位だけが下がっていくのでベントを先行することを16:20に確認。清水社長も了解。
1分後の16:21
本店清水社長 「清水ですがね、班目先生の方式でやってください」

吉田所長は次のように応じた。
吉田所長 「はい、わかりました。サプチャンベントラインはこのままやってちゃんと生かす、これ絶対重要だから。ただし、今それを待っているとますます燃料が危険な状態になってくる可能性があるから、操作のほうに行くということでいいですか?」
本店清水社長 「イエス、それでやってください」

16:38、SR弁開操作、しかし圧力低下はなし。17;09、2つ目の弁の開操作も失敗、17:18、燃料露出したと推測。
その後ベント弁開操作に取り組むが進まず。19:26、退避基準の検討を開始。
19:52、SR弁、ようやく開くが、本店対策本部では以下の会話が交わされていた。

19:55
本店高橋フェロー 「1号、3号、炉心溶融ですよね」
本店峰松顧問 「そうなっちゃうんだよなぁ。注水できないんだから」
本店高橋フェロー 「3機、炉心溶融ですもんね。これ、退避は何時になっているんだろうな?作れって言ったんだけど」
本店 「あとベントができればOK]
本店高橋フェロー 「武藤さん、これ、全員のサイトからの退避というのは何時頃になるんですかね」

20:06、いったん回復するかに見えた炉水位が再度ダウンスケール(燃料露出)。ベント弁は開かないまま、ドライベント(格納容器内のガスを水を通さずに出すので、放射線量はけた違いに高くなる)を検討。
20:16、避難に関する具体的な方針が出される。

20:16
本店高橋フェロー 「本店本部の方、ちょっと聞いていただけますか。えっと今ね、1Fの人たちみんな2Fのビジターホールに避難するんですよね」
本店清水社長 「足があるのか」
本店高橋フェロー 「2Fの、増田君の意見を聞いてください」
2F増田所長 「1Fからの怪我人はビジターズホールで受け入れます。それ以外の方は、全部体育館に案内します。2Fはいま、安全な状態じゃないものですから。それと水がありません。除染するだけの水がありませんから、水をぜひ持ってきてください」

周囲への影響が極めて大きいドライベントについて保安院は「東電の責任でやるのは構わない」と応じていたが、清水社長はあくまでも国の判断で実施しようとしていた。
21:04
本店清水社長 「現在、国のほうに(ドライベントの)決断を仰いでいます」

21:14、SR弁の2弁目が開き、ようやく水位が出たものの、22:53には再度原子炉圧力がかなり上昇、SR弁が閉まっていることを確認。23:24、炉水位ダウンスケール。ドライウエル圧力も上昇。

23:32
本店武藤副社長 「SR弁、早く開けないと、どんどん上がっていっちゃう」
1F 「ベントですね、ベントが一番先だ」
本店 「そう、ベントが先だね、ベント」
1F 「でもできないですから」
1F 「ベントができないと、格納容器が壊れる」
1F 「ドライウエルの小弁、開けるしかないんじゃないですか」
1F 「そう、それしかない」

その後、ドライベントかウエットウエルベント(サプレッションチェンバーの水を通してガスを出す。放射線量が低減される)かで1F,本店、柏崎刈羽の間で議論。
15日00:00、ドライベント弁を開く。しかし00:06時点でも下がるはずのドライウエル圧力は低下せず。

・1号機は12日に、3号機も13日に、原子炉には海水が注入されるようになっていました。
1Fは海に面していますが、海水面から10メートル以上ある原子炉に海水をくみ上げるだけのパワーを持つポンプはありませんでした。
そこで、津波で海水が満タンになっていた3号機逆洗弁ピットにポンプをつなぎ、そこから1,3号機に送水していたのですが、ピットも底が見えてきてピットへの海水給水が課題となりました。
4号機逆洗弁ピットはカラになっており、4号機放水口からの給水工事も難航、結局「物揚場」(船から機器を下す場所)から給水しピットへ送ることになりました。14日午後には、1,2号機に物揚場から直接送水するラインも敷設されました。

・14日には、作業員の線量限度が100m㏜から250m㏜に引き上げられました。
その経緯を伝える会話です。

12:41
吉田所長 「ちょっと、あの、こんな時になんなんだけども、やっぱり2つの爆発があってですね、かなりショックっていうか、まぁ、いろんな状態あってですね。職員が、たぶん、みんなもう落ち込んでんですよ。やれることはやるんですが、かなり士気が衰えると思います。それでいろんな業務あるんですけども、なかなか、それと被ばく線量がかなりもう、みんなパンパンになってきてますので、なかなかこの業務がですね、差し支えると思うんで、その辺の配慮をぜひお願いしたいなと思っております」
オフサイトセンター武藤副社長 「なかなか全部っていうのはあれだけど、他から新しい人入れて、入れ替えていくようなことを系統立ててできるよう考える必要があると思います。で、業務で検討しております」
本店清水社長 「職員の皆さま、たいへん、大変な思いで、対応していただいていると思います。確かに要員の問題があるんで、可能な範囲で対処方針、対処しますので、なんとか、今しばらくはちょっとがんばっていただく」
13:17
本店高橋フェロー 「官邸からちょっと電話があって、とにかく急げってことで、当然なんだけど、もう線量のこともかまわないで、500ミリまでいいんだからやれって、そういう話がありました」
14:03
1F保安班 「本店が保安院と調整しまして、緊急復旧時の個人被ばく、250まで認めるということで調整されたそうです。企業さんについては、事前契約と作業員に説明できているのが前提です。企業さんには、事前に契約が必要となります」
本店高橋フェロー 「もうこんな時に契約なんか後で何とでもなるんじゃないの、それ? まぁ本人がいやだって言えばしょうがないんだけど、とぼくは思うんだけど。まぁ、がんばってください」
オフサイトセンター武藤副社長 「250ってのは相当に限界的な数字なので、しっかり守ることが大事だと思います」
14:07
1F 「さっき武藤副社長が言われたように本当に限界的な値だと思います。したがって、これありきで作業を依頼するんでなくて、当然100を超えるような場合には、まず本部でもってちゃんと報告してもらって本当に必要性があるものに限ってのみ、認めるとかそういうふうにされるべきだと思いますけど」
吉田所長 「各班で作業の必要性をちゃんと把握したうえでお願いします。なおその上ですね、これ保安班にちゃんと話をして厳密な管理をお願いいたします」
本店高橋フェロー 「はい、私からもよろしくお願いします」

1F吉田所長が本店対策本部に要請したのは、疲労困憊し士気の衰えが懸念され、線量限度に近い被ばくをしている作業員への配慮でした。
武藤副社長もその趣旨を理解し「他から新しい人を入れ替えていくようなことを系統立ててできるよう考える」と応じました。

しかし、官邸は1F作業員の現状と吉田所長の訴えを無視するかのように「線量など構わない、500m㏜
までいいから作業を続けろ」と伝え1時間もたたないうちに「本店と保安院が調整」して線量限度が250
m㏜に引き上げたのです。

250m㏜への引き上げが、1F対策本部が決して望んでいたことではなかったことも上記会話から推察できます。

・浮かび上がる問題:問題に係る会話のごく一部のみ引用します。
① 原子炉に注水できなければ、事故の拡大をくい止めることはできない
② 原子炉に注水できても、最終的な除熱〈ファイナル・ヒートシンク)ができなければ、やがて事故は拡大していく

13:24
吉田所長 「いつSR弁が吹いても対応できるように、まず、まず、水、水。水源の確保。これ、いまどうなっている?現場行ってる?」
1F復旧班 「はい、復旧班。物揚場から3号機のピットに付けた注入ラインの健全性と、爆発寸前まえにですね、このポンプ2つ取り出し口があって、・・・」
吉田所長 「え、そこはね、そこはもう二次的でいいから。まずさ、いま水位があるんだったら、2号機の給水ラインが生きてるかどうか、これが一番重要なんで。そこを最優先に点検して、もし、それさえOKであれば、いつでも水が入れられるわけだから、そこを最優先でいきましょう。2号機の水源確保、最優先お願いします」
1F復旧班 「はい」

③ 代替電源には、限界がある
21:52
本店高橋フェロー 「SR弁の電池、なくなりそうですか?」
1F 「大丈夫と思うんですけど、もちろん怖いと思ってますんで、新しいバッテリーほしいです」
本店高橋フェロー 「120Vのバッテリーがいくつもほしいって、そういうことでしょ?」
1F 「はっきり言って120Vが30組位ほしいです」
本店高橋フェロー 「小名浜にあるか調べてもらってるんで、あれば持ってけるんだけど、その前にサイトに予備が30個位あるよね」
1F 「えーと、ちょ、ちょっと確認します。まとめてもう1回、あの、ご連絡します」
本店高橋フェロー 「予備がなかったんじゃ、1個はずして、大事にとっとかなきゃいけないから」

④ 放射能放出・汚染は事故を拡大する最大要因の1つである
22:31
本店武藤副社長 「流量止まっちゃわないように、現場で見てるんだよね、これ」
吉田所長 「簡単に言われるんですけど、どのエリアもものすごい高い、あれなんで。避難場所もないところで監視するってのは、ものすごく大変なことなんです。なんで見てなかったってよく言われるんですけど、見てられないんですよ。この人間で。その線量の所で。それはご理解いただきたい」

⑤ 外部要因による事故、とりわけ地震との複合災害となった場合は、何重にも困難が重なり、事故は破局に向かって拡大していく

⑥ 事故対応が複数基におよんだ場合、対処は極めて困難となり、当該事業所は本社も含めて、機能不全に陥り、事故処理能力を喪失する
22:00
本店高橋フェロー 「2号のベントってあきらめちゃったんだっけ?」

本店武藤副社長 「3号、水入ってんだっけ?」

吉田所長 「あのね、あの、ここでさ、もう明確に頭が明晰なやつ、ほとんどいないから、いきなりガンガン聞かれてもさ、答えづらいんだけど」

⑦ 発生する事象について、短時間で的確な判断をすることは、ほぼ不可能である
11:16
本店清水社長 「どういうことが起こったのか、まだわからない?」
本店小森常務 「水素爆発がまず考えられますけど、ちょっと規模が大きいことになると」
吉田所長 「11時15分のパラメータを取った結果、格納容器は健全と判断しております。したがいまして、1号機の事象とほぼ同等と考えています」
本店小森常務 「しかし、何かちょっと、炉圧が」

⑧ 事故対応設備・機器・車両等は、いくら用意しても、操作・運転・管理等の人的配置の裏付けがなければ、役に立たない
22:04
吉田所長 「あとですね、いま、現場が一番混乱してるのは、いろんなもの注文するんだけど、それをさばく人がものすごく弱いんです。そんで、物がわかって、ちゃんとデリバーできて、チェックできて、そういうことができるチーム化してもらいたいと思ってんですけどね」

⑨ 原発事業所の経営トップは同時に技術トップでないと、重要事項の決断を誤る可能性がある

⑩ 国当局は、事故に際して的確な判断やアドバイスができるのか、疑問だ

⑪ 東電の線量評価は、公表されなかった
06:52
本店保安班 「被ばく評価結果です。前提条件は100%放出。ヨウ素が支配的です。3時間後最大ポイントは敷地境界辺りで5700m㏜、ヨウ素です。250m㏜圏内がずっと相馬郡のほうまで3時間以内に広がっていくという評価になります」
オフサイトセンター武藤副社長 「20㎞の所はどのくらいの線量になるの?」
本店保安班 「3時間積算線量で250m㏜です。時間経過につれて線量も増えていきます。24時間後のデータです。風が陸地側に吹いているという前提で考えると、20㎞ちょっと先の所まで250m㏜を超えるエリアが広がっています」

⑫ 事故が厳しい状況になればなるほど、国・事業所は情報を操作し、隠ぺいする  
08:40
1F広報班 「いま、3号機格納容器圧力上昇ということでプレス文を用意しておりますが、国がマスコミを止めているということです。一方で、福島県から、9時に関係部長会議を開くのでそれまでにこのプレスを行うよう依頼されております。調整をお願いします」
本店小森常務 「県と保安院で調整してもらうしかなくて、いま原子力災害特別措置法に基づいた国のガバナンスがうんと強くなってるわけだから」
本店 「じゃあ、まず官邸に告げ口、官邸に告げ口。県からこう言われて困っていると」
本店石崎部長 「そういう状況を説明しても、県は必ず単独でプレスすることになるから、その時どうするかってことを考えてといたほうがいい」
08:55
本店 「先ほどのプレスに関する情報ですが、絶対にダメだと言うのが保安院の強い指示だそうです」
09:37
本店 「先ほどの圧力高(3号機格納容器)の話、作業員一時退避としてNHKに放送されているようです」
本店石崎部長 「福島県には、(東電)福島事務所が話をして関係部長は了解、部長が知事に話して知事もしぶしぶ了解、9時の関係部長会議では15条プレス文はでなかったと、聞いています」
本店小森常務 「テレビにこんなのが出て、県としては印象悪いでしょうね」
本店石崎部長 「ええ、相当悪いと思います。県知事のスタンスは県民の安全を守るという観点で情報を出さないのはけしからんと。後々ちょっと辛い立場になることは間違いないですね」

⑬ 事故が限りなく破局に近づき、打つ手がなくなり、事業所員が避難した場合、事故現場の最終的な責任は、誰が、どのようにとるのか

⑭ 事故対策については、下請け企業に依存せず、事業所員で100%完遂できる態勢が必要である
08:57
本店総務班 「要するに避難区域の中に入っていくということに対して、民間の会社の人たちは当然拒否を始めてるんです。そうなれば、うちの人間しかいない、そのなかで(トラックを運転できる)大型免許を持っている人を探すのがまた、大変な騒ぎになる、じゃあ自衛隊かというのも、今すごい拒絶反応がありまして、官邸を通してやってはもらうんですけども、現実には部隊班長の判断になりまして結局行かせられないみたいな話になっちゃう状況です。自衛隊はあんまりあてになんないなぁっていう感じです」

⑮ 3号機の爆発を防げなかったことは、東電が事故処理能力を喪失していたことの現れである


事故発生3日目の14日、東電は本店も含めて機能不全に陥り、事故処理能力を喪失していました。更なる最悪の事態、2号機の爆発、4号機使用済み燃料プールの冷却不能が避けられたのは、まさに偶然による「運のよさ」でした。

津波想定の甘さ、あまりに無防備だった事故対策等、事故発生・拡大の原因が指摘されています。しかし、3月12~14日の東電テレビ会議の会話は、原発の事故は対策が万全に用意されていても、そのうちの1つでもうまくいかないと対策は機能せず、事故は想定を超えて拡大し、止めることはできないことを明らかにしています。

1Fサイトにとって事故の本質とは、2度目の爆発を防ぎ、3基のメルトダウンを止めることは不可能だったことであり、そのことを認めることは東電が果たすべき責任の第1歩だと思います。そこをあいまいにして、消防車を何十台も配備すれば、防潮堤を高く積み上げれば、電源車を高台に配備すれば等々、事故は防げるとする東電は、核エネルギーを制御できるという、事実に反する極めて危険な思い込みに陥ったまま、柏崎刈羽原発を再稼働させようとしています。

原子炉に注入された大量の海水は、炉心損傷・燃料溶融していた原子炉内で「高濃度汚染水」となりました。「循環注水」に転じたとはいえ、事故発生直後からの「原子炉冷却汚染水問題」は解決方法のめどが未だついていません。事故は収束していません。終わっていません。

にもかかわらず、柏崎刈羽原発を再稼働するという東電は、まるで火事を起こした工場が、火を消し終えず後始末も終えていないのに新たな工場を建て始めるようなものです。そんな「無責任きわまりない」ことは許されないはずなのに、なぜ原発ではまかり通るのか、そこに原発が抱える深い暗闇と根深い問題があるのだと思います。「いのち・原発を考える新潟女性の会」は、皆さんと共にその暗闇と問題に挑み、新たな時代を開くことにわずかでも貢献したいと思っています。

文献:「福島原発事故東電テレビ会議49時間の記録」
    紙面の都合で発言内容を若干縮小等しました。
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