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"KK・NOW" 再稼働 するの?できるの? No11

“KK・NOW”柏崎刈羽原発の今シリーズ
「再稼働するの? できるの?」その11 第2楽章-4>

第2楽章―4 中越沖地震後に再稼働した1,5,6,7号機の安全性は確保されているのか

①東電の点検(その3)
中越沖地震のおよそ2か月後、保安院のWG(ワーキング・グループ・検討作業グループ)で“柏崎刈羽原発(KK)被災7基”の点検方針が

「目で見て壊れていない機器が、コンピュータの計算で“設計時の基準(安全を担保する値)”を越えたら、“この機器は設計時の基準より実力があるのだ”と判断する」
一言で言えば
「外側が傷んでいなければ、基準値を超えても、OKにする」

となりました。

● 点検方針の本質

この点検方針のねらいは

・ 機器・設備の経済効率性を低下させない。
・ 点検は目視点検とコンピュータ解析を基本とし、効率化を図り、迅速な再稼働を目指す

でした。

被災7基の点検は、スタートから“経済効率性をモットーとした点検で1日も早い再稼働”を目標とするゆがんだものとなったのです。

基準地震動S2の2~3倍の加速度が原発を襲ったKKの被災は世界で初の原発震災でした。機器・設備はどのような影響を受けたのかを徹底的に検証することこそが、KKのみならず全国の原発の安全性確保にとって必要でした。

そのように主張する科学者や技術者もいましたが、その人達の意見や進言は保安院にも、マスコミにも、もちろん電力業界にも取り上げられることはありませんでした。

とりわけKK7基全機の運転停止が経営を圧迫する東電にとって“時間をかけた丁寧な点検”の主張は“じゃまもの”でした。

国策として原発を推進してきた経産省にとってもKK 7基の早期再稼働は、稼働率の低下を防ぐため日本の技術力を示すため、ひいては国策の正当性をアピールするために必要でした。それは波に乗り始めた“原発輸出”を、中越沖地震による被災の影響で停滞させまいとするメーカーや経済団体からの要請でもありました。

S2を超える地震動にも壊れることがなかったKK7基を目の当たりにした専門家たちのほとんどが、技術力への確信を慢心に変え、周囲の“空気”を巧みにくみ取り、点検方針に疑問や異議を表すことはありませんでした。中越沖地震をきっかけに原発への不信や反対の声が広がることを“科学に無知な愚かさ”ととらえ、専門家集団のオピニオンリーダーの指差す方向に従って自らの学問・研究を進めることが彼らの“生きる道”でした。

● 東電の点検実態 ①点検順序

東電は7基の点検順序を、最新号機(7号機)と使用年数最長号機(1号機)を最初に点検することで被災の全体像をつかみたいとして、7,1号機同時点検→6号機→5号機→3号機→2、4号機、としました。

しかし、点検が開始されるや、7号機の点検のみが先行していきました。

「1号機は一番古い原発なので、設計時の文書等を探すのに時間がかかっている」と言い訳をしていたのですが、「原発輸出の“目玉商品”の7号機(日本が開発したABWR(改良型軽水炉))の安全性確認が喫緊」というのが真の理由であったようです。

● 東電の点検実態 ②点検内容と方法

地震で被災した原発を点検するマニュアルは用意されていませんでしたから(今もそうです)、点検は定期検査として位置づけられました。地震直後の東電のHPにはKK 7基は「定期点検中」となっていました。

点検は、「設備・機器」と「建物・構造物」のそれぞれについて

“設備健全性点検”(地震で健全性は損なわれていないか)と“耐震安全性点検”(将来起きると想定される最大規模の地震に耐えられるか)が実施されました。

・ 「設備・機器」について
“設備健全性点検”(地震で健全性は損なわれていないか):目視点検、作動試験、漏えい試験。安全上重要なものは地震応答解析を実施。
“耐震安全性点検”(将来起きると想定される最大規模の地震に耐えられるか):安全上重要な機器・配管系について基準地震動の揺れによる地震応答解析を実施。

・ 「建物・構造物」について  *設備・機器と同様
“設備健全性点検”(地震で健全性は損なわれていないか):目視点検、作動試験、漏えい試験。安全上重要なものは地震応答解析を実施。 *設備・機器と同様
“耐震安全性点検”(将来起きると想定される最大規模の地震に耐えられるか):安全上重要な建物・構築物について基準地震動の揺れによる地震応答解析を実施。

  *地震応答解析:コンピュータで計算してだした中越沖地震による揺れで機器等がどの程度の加速度を受けたかをコンピュータで計算する。計算結果を設計時の値(ここまでは安全が確保できるという値)と比較する。

● 東電の点検実態 ③点検の範囲

車が追突された、ちょっとへこんだだけだけれど、他にまずい所はないか徹底的に調べなければ安心して運転できませんよね。

まして、原発です。徹底的に隅から隅まで点検しなきゃ…

ところが、実態は…7号機の設備健全性点検では

・ 目視点検等の点検対象機器数:1362
・ 地震応答解析点検対象機器数:635

あの大きな原子炉建屋、タービン建屋等の機器の総数は数万に及ぶそうです。その中のたった1362が点検されただけなのです。

● 東電の点検実態 ④点検の実際

・狭くて作業が困難な箇所、配管等で埋め込みになっている機器、放射線量が高い箇所等は、点検ができません。見える範囲、できる範囲の点検や漏えい試験、近傍の機器等での代替点検で済ませています。

たとえば・・・7号機残留熱除去系配管は地震応答解析で基準値に近かったため、保安院に非破壊試験等の追加点検を指示されましたが(平成20・04・15原因第4号)、放射線量が高く作業は10分程度しかできないので、非破壊試験は不可能で目視点検のみとなりました。

・同一・類似設備・機器は代表点検となっています。

たとえば・・・7号機原子炉冷却材再循環ポンプモータケーシングも、上記の指示(非破壊試験用の追加点検)」の対象でしたが、10台あるポンプのうち代表2台のみファイバースコープで目視点検(放射線量も高く、狭隘部で非破壊検査は不可能であり、現場作業性を考慮すると目視点検を実施するほかなかったようです)しました。原子炉内にある872体の燃料集合体はたった20体(全体の約2%)を点検しただけです。2%程度を点検して「全体で異常はなかった」と結論づけているのが点検の実態です。

・揺れで発生した可能性がある金属内部の目には見えない小さな傷(塑性変形、塑性ひずみとも呼びます)を調べる方法がありません。この傷を放置しておけば、アメリカ・カリフォルニア州の橋が崩壊したように将来突然、疲労破断が起きる可能性もあります。井野博満氏(東京大学名誉教授、柏崎刈羽科学者の会)は「目視点検や、追加点検として実施される非破壊検査で見つかるのはかなり大きなひび割れだけだ。ミクロな塑性変形や脆化は、金属組織学的観察や材料強度試験を実際にやって見なければ解らない。それをするには、原子炉や周辺機器を解体して、試験片を採取することが必要である」と指摘しています。


この“背筋が寒くなるような”、私に言わせれば“手抜き、駆け足などと言うものではない全力疾走”点検を支えているのは「エンジニアリング・ジャッジメント」という思想です。

“技術的に見ればそれで十分”―これが「エンジニアリング・ジャッジメント」です。

(11月8日)
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