スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第21回学習交流会報告 その2 賠償の実態と問題点

第21回学習交流会(“福島とともにシリーズNo4”)報告・その2

報告その1では、問題提起・1 賠償とは・・・ と 2 賠償の仕組みについて、問題点も含めてお伝えしました。
その2では、3 賠償の実態と問題点について報告します。

3 賠償の実態
(1)賠償の内容はどのように決定されるのか?
原賠法(原子力損害賠償法)では賠償の範囲や金額等について具体的に定めてはいません。第18条で、「原子力損害賠償紛争審査会」(略称は原賠審とか紛争審査会、文科省に設置)が賠償の範囲や金額等についての「一般的な指針」を定めると規定しています。

原賠審は、事故発災後1か月半あまりの4月28日に第1次指針を提示、その後第2次指針、同追補を経て、2011年8月5日に「中間指針」を公表しました。

中間指針は、被害の全容が見えない状況でとりあえずまとめた賠償の基礎となる指針で、最終的な指針ではないという意味で中間指針となっています。以後この中間指針に必要な指針が追加されています。

(2)原賠審・中間指針の概要
中間指針で示された賠償の対象です。

A 政府による避難等の指示等に係る損害
検査費用、避難費用、一時立ち入り費用、帰宅費用、生命・身体的損害、精神的損害、営業損害、就労不能等に伴う損害、財産価値の喪失・減少等
B 航行危険区域等及び飛行禁止区域の設定に係る損害
営業損害、就労不能等に伴う損害
C 政府等による農林生産物等の出荷制限指示等に係る損害
営業損害、就労不能等に伴う損害、検査費用
D その他の政府指示等に係る損害
営業損害、就労不能等に伴う損害、検査費用
E 風評被害(農林漁業、食品産業、観光業、製造業、サービス業、輸出等)
営業損害、就労不能等に伴う損害、検査費用
F 間接被害(第1次被害者との経済関係を通じて第三者に生じた被害)
営業損害、就労不能等に伴う損害
G 放射線被ばくによる損害
急性・晩発性の放射線障害による生命・健康被害に伴う逸失利益、治療費、薬代、精神的損害等
H その他
地方公共団体または国の財産的損害等

つまり、中間指針は、当然賠償の対象となる項目を整理分類し基本的な考え方を示したものなのです。

例えば避難費用について以下のように示されています。

(指針Ⅰ)賠償すべき損害
①避難するために負担した交通費、家財道具の移動費用
②負担した宿泊費、宿泊に付随して負担した費用
③避難等による生活費増加費用
(指針Ⅱ)損害額算定方法
①交通費、家財道具の移動費用、宿泊費、宿泊に付随して負担した費用は実費を損害額とする。
②避難等による生活費増加費用は、「精神的損害」の額に加算する。
(指針Ⅲ)
避難指示等の解除等から相当期間経過後に生じた避難費用は、特段の事情がある場合を除き、賠償の対象とはならない。

(指針Ⅲ)の内容は、避難解除後相当期間の避難費用は賠償対象とするが、相当期間が過ぎたらもう賠償の対象にはしない、というものです。
今年8月7日に避難指示区域の再編が終了し、避難解除準備区域で具体的な解除時期が検討されることになった現在、この相当期間をどうするか原賠審は示すことが求められ、11月22日に方針を示しています。これについては次回で報告します。

(指針Ⅱ)の ②避難等による生活費増加費用は、「精神的損害」の額に加算する について皆さんはどう思われますか?避難による生活費増加分は避難にかかわる損害です。当然避難費用として交通費等と同様に実費を損害額とすべきです。なぜ「精神的損害」の対象に分類され、加算されるのでしょうか?

これについて次のように説明しています。

・生活費増加費用は対象者の大多数に発生する。
・さほど高額ではなく、個人差も少ない。
・実費の算定は実際上困難で、立証を強いることは酷である。
・生活状況と密接にむすびつくものであり、「精神的損害」に加算して一定額を算定することが公平かつ合理的と判断した。

理由のなかの「実費の算定は実際上困難」で避難者が立証できないというのは「精神的損害」の算定にも通じることで、立証できないことを共通項とした分類のようです。
しかし、生活費増加費用はあくまでも避難にかかわって生じた損害なのですから、避難費用から外さずに公平かつ合理的な一定額を示すべきだったと思います。実は、原賠審は今になって「精神的損害」に加算した生活費増加費用の扱いを変えざるを得なくなっています。これについても次回に報告します。

ではその「精神的損害」の指針はどうなっているのでしょうか。

(指針Ⅰ)賠償すべき損害
①自宅以外での生活を長期間余儀なくされ、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛
②屋内退避を長期間余儀なくされ、行動の自由の制限等を余儀なくされ、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛
(指針Ⅱ)損害額算定方法
生活費増加費用と合算した一定の金額を損害額と算定するのが合理的な算定方法である。年齢にかかわらず、避難等対象者個々人が賠償の対象となる。
(指針Ⅲ)具体的な損害額の算定
算定期間を3段階に分けて算定する。
①第1期(事故発生から6か月間)
1人月額10万円を目安とする。避難所等で避難生活をした期間は1人月額12万円を目安とする。
②第2期(第1期終了から6か月間)
1人月額5万円を目安とする。
③第3期(第2期終了から終期までの期間)
改めて検討する。
(指針Ⅳ)
①損害発生始期は原則2011年3月11日とする。ただし、緊急時避難準備区域の子ども、妊婦、要介護者、入院患者等で6月29日以降に避難した者、及び特定避難勧奨地点から避難した者については実際に避難した日を始期とする。
②避難指示等の解除等から相当期間経過後に生じた精神的損害は、特段の事情がある場合を除き、賠償の対象とはならない。

(指針Ⅲ)具体的な損害額の算定の「①第1期(事故発生から6か月間)1人月額10万円を目安とする。避難所等で避難生活をした期間は1人月額12万円を目安とする」については次のように説明しています。

「第1期(事故発生から6か月間)は地域コミュニティ等が広範囲にわたって喪失し、これまでの平穏な日常生活とその基盤を奪われ、自宅から離れて不便な避難生活を余儀なくされた上、帰宅の見通しもつかない不安を感じるなど、もっとも精神的苦痛の大きい期間と言える。 したがって、損害額の算定にあたっては、負傷を伴う精神的損害ではないことを勘案しつつ、自動車損害賠償責任保険における慰謝料(日額4200円、月額換算12万6千円)を参考にした上、大きな精神的苦痛を被ったことや生活費の増加分も考慮し、一人あたり月額10万円を目安とするのが合理的であると判断した」

月額一人10万円は、自賠責を根拠とするものでした。1F原発事故は、これまで例のない規模の損害を生じています。それを現在行われている賠償枠組みで対応していいのか、対応しきれるのか、疑問があります。一方、新たな賠償概念の構築は時間を要し、被害者への賠償の遅延にもなります。

自賠責を参考とした賠償額算定について、浪江町は低額すぎると今年6月に集団で原発ADRに申し立てています。要求額は25万円追加で月額総額35万円となっています。

(3)原賠審・中間指針の問題点
①賠償対象者が限定されています。
対象は避難対象区域内住民のみで、当時すでに「自主避難」が相次いでいた区域外住民については、出荷制限や風評被害を除いて、賠償を全く考慮していません。
②賠償すべき精神的損害の範囲と期間が極めて狭く、短く限定されています。
事故による精神的苦痛は「日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたため」だけでなく、家族の離散、地域コミュニティの崩壊、ふるさと喪失、先が見通せない不安、健康不安等、多岐の要因によっています。かけがえのないものを二重、三重に奪われ不安にさらされたことへの賠償が月額10万円でいいのでしょうか?
③地方自治体や国の被害範囲が極めて狭く限られていて、除染はとりあげられていません。
地方自治体や国が所有する財物及び民間事業者と同様の立場で行う事業に関する損害については、事故と因果関係が認められる場合にかぎり、また被害者支援等のために加害者が負担すべき費用を負担した場合、賠償対象となるとされています。

①の自主避難に対する賠償については、市民運動の強い要請を受け、原賠審は2011年12月6日に「中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)」を出しました。その内容です。

・自主的避難等対象区域:以下23市町村で避難指示対象区域を除く区域
県北地域(福島市、二本松市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村)
県中地域(郡山市、須賀川市、田村市、鏡石町、天栄村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町)
相双地域(相馬市、新地町)
いわき地域(いわき市)

・対象者:自主的避難等対象区域に住居があった者(避難の有無にかかわらず全員、約150万人)。避難指示区域の子ども、妊婦で自主的避難等対象区域に避難した場合も対象となりました。

・賠償対象期間:2011年3月11日~同年12月末と限定されました。

・具体的な損害額の算定
子ども・妊婦:1人40万円 *子どもは18歳以下
子ども・妊婦以外:1人8万円
避難指示対象区域から自主的避難等対象区域に避難した子ども・妊婦:1人20万円

損害額の算定については次のように説明しています。

「身体的損害を伴わない慰謝料に関する裁判例等を参考にしたうえで、精神的苦痛並びに子ども及び妊婦の場合の同伴者や保護者分も含めた生活費の増加費用等について、一定程度勘案することとした」

精神的苦痛と生活費の増加費用等を勘案したということから、避難指示区域住民への精神的損害の算定額と比較してみます。
A 避難指示区域住民への精神的損害の算定額: 
10万円×10か月(3月~12月)=100万円
B 自主的避難等対象区域住民への賠償算定額: 
子ども・妊婦 - 40万円(Aの40%)
上記以外 - 8万円(Aの8%)
C 自主的避難等対象区域住民への1か月あたりの賠償算定額: 
子ども・妊婦 - 1か月 4万円
上記以外 - 1か月 8千円
 
例えば、子ども2人と母親が県外に避難をして父親が土・日曜日に福島から会いに行く場合、2世帯になったための追加生活費が賠償算定額8万円(4万円×2人分)以内に収まるとは考えられません。また、父親が1か月4回会いに行くと1回2千円の賠償でしかありません。

原賠審は「自主的避難等対象区域の住民が放射線被ばくへの相当程度の恐怖や不安を抱いたことには相当の理由があり、また、その危険を回避するために自主的避難を行ったことについてもやむを得ない面がある」と認めたのですから、避難指示区域住民が受け取る「政府による避難等の指示等に係る損害賠償」はともかく、賠償内容が重なる「精神的損害(1か月10万円)」の半分以下(1か月4万円)という額は妥当でしょうか? 

③地方自治体や国の除染に対する除染については、「中間指針第2次追補(政府による避難区域等の見直し等に係る損害について)」で次のように示されました。

「除染等(汚染土壌等の除去、汚染拡散防止の措置、除去土壌の収集、運搬、保管および処分、汚染廃棄物の処理)に伴って必然的に生じた追加的費用、減収分及び財物価値の喪失・減少分は、賠償すべき損害と認められる」

(4)原賠審の「一般的な指針」と実際の賠償の関係
原陪審は、中間指針の「はじめに」で「中間指針」とはどういうものかについて次のように説明しています。

「中間指針は、本件事故による原子力損害の当面の全体像を示すものである。この中間指針で示した損害の範囲に関する考え方が、今後、被害者と東京電力株式会社と間における円滑な話し合いと合意形成に寄与することが望まれるとともに、中間指針に明記されない個別の損害が賠償されないということのないよう留意されることが必要である。東京電力株式会社に対しては、中間指針で明記された損害についてはもちろん、明記されなかった原子力損害も含め、多数の被害者への賠償が可能となるような体制を早急に整えた上で、迅速、公平かつ適正な賠償を行うことを期待する」

「中間指針で明記された損害についてはもちろん、明記されなかった原子力損害も含め」といっているのですから、中間指針は「これを外しちゃダメ」という賠償の最低ラインを示したものと言えます。
原賠審は、中間指針が示した最低ラインを踏まえて、それ以上の賠償を東電に求めています。
では、東電の対応はどうだったのでしょうか?

(5)東電の賠償実態
*賠償のプロセス
実際の賠償は、次のプロセスになります。

原賠審の中間指針 → 東電が中間指針を基に賠償基準を策定 → 被害者が東電の賠償基準をもとに東電に賠償請求 → 東電が賠償請求を査定 → 東電と被害者で賠償額を協議 → 合意 → 支払

このプロセスには2つの問題点があります。
①賠償基準を加害者(東電)が定めている。
②被害者からの賠償請求を加害者(東電)が査定する。

これでは、加害者(東電)有利の賠償金額決定になるのではないでしょうか?
東電と被害者との賠償額協議も、複数の弁護士を抱えた東電という“巨大組織”対“被害者個人”であり、被害者不利は明らかです。
協議が整わなければ訴訟という手段がありますが、時間も労力、費用も被害者の負担は増すばかりです。

原賠審には「一般的な指針」を策定するほかに、賠償が迅速に行われるようにする役割があり、その役割は原賠審のもとに設置された「原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)」が担っています。「原発ADR」は、文科省、法務省、裁判所、弁護士等で構成されています。

協議で合意に至らない場合、被害者が「原発ADR」に申し立てると弁護士等が仲介手続をして合意形成を促し、紛争解決を導くことになっています。「原発ADR」は申立無料で、訴状を作成する必要もなく、仲介委員の聴き取りが中心となっていて、利用しやすいのですが、「責任論」は除外されています。責任を明らかにするためには裁判が必要です。

*「中間指針」から「本補償」へ
東電は2011年8月5日に決定された原賠審「中間指針」に基づいて同月30日に「福島第一原子力発電所および福島第二原子力発電所の事故による原子力損害への本補償に向けた取り組みについて」を公表し賠償基準を示しました。

「本補償」は「中間指針」を超えた賠償を約束するものだったのでしょうか?

避難費用について比較してみます。

<中間指針>
避難するために負担した交通費、家財道具の移動費用、負担した宿泊費、宿泊に付随して負担した費用
実費を損害額とする。

<本補償>
・交通費
  同一県内の移動:1回あたり1人5000円
  都道府県を超える自家用車での移動:車1台あたり移動元、移動先ごとの標準金額
     〃    その他手段の移動:1人あたり移動元、移動先ごとの標準金額
・家財道具の移動費用
  同一都道府県内の自家用車での移動:片道1回5000円
  都道府県を超える自家用車での移動:移動元、移動先ごとの標準金額
  その他手段での移動:実費
・宿泊費
  実費、ただし1泊1人8000円を上限とする。

中間指針が「実費」としたのに対して「本補償」は、定額を示し、実費の場合は上限を定めました。それらを超える場合は「具体的な事情を確認させてもらう」となっていますが、個々の事情がすんなり、あっさり認められるとは限りません。
また、原則として領収書等の必要書類の提出を求めました。
さらに、合意以降「更なる賠償請求はしない」という同意書の提出も求めました。これは批判、非難をあび、のちに撤回しました。

精神的損害は「中間指針」通りの賠償額としました。

就労不能等に伴う損害については、
(従前の平均収入―現在の実収入)+転居費用等 となっています。

「本補償」は、賠償の最低ラインとして示された「中間指針」をほとんどそっくり「賠償基準」としたものと言えます。

*賠償額の若干のプラス
補償金請求書の膨大さ、複雑さ、再度請求はしないとの念書ともいうべき同意書、何より最低ラインを基準とした低い賠償額等について、東電への批判は高まりました。福島県や避難指示区域自治体、被災者、被災者支援団体等の要請や原発ADRの仲介を通じて、東電は賠償内容を若干プラスしています。

①精神的損害
「2011年9月1日~2012年2月29日(第2期)の6か月間は1人月額5万円とする」(中間指針と同内容)を第1期と同様「1人月額10万円」に変更。(2011年11月24日)

②自主的避難等に係る賠償
・原賠審・中間指針追補(2011年12月6日)で示された額に、子ども・妊婦で実際に避難した場合、1人あたり20万円を追加(2012年2月28日)
・原賠審・自主的避難等対象区域以外の県南地域9市町村(白河市、西郷村、泉崎村、中島村、矢吹町、棚倉町、矢祭町、塙町、鮫川村、)の子ども・妊婦に、2011年3月11日~同年12月31日について1人当たり20万円(2012年6月11日)
・宮城県丸森町の子ども・妊婦に、2011年3月11日~同年12月31日について1人当たり20万円(2012年8月13日)
・原賠審・自主的避難等対象区域の子ども・妊婦に、2012年1月1日~同年8月31日について1人当たり精神的損害8万円と追加的費用4万円、計12万円(2012年12月5日)
・県南地域9市町村、宮城県丸森町の子ども・妊婦に2012年1月1日~同年8月31日について1人当たり精神的損害4万円と追加的費用4万円、計8万円(2012年12月5日)

③就労不能損害・算定への「特別の努力」の反映
就労不能損害・算定は、中間指針と同様に(従前の平均収入―現在の実収入)+転居費用等 としていましたが、避難先でのアルバイト等による収入が差し引かれることに批判が高まり、原賠審は「中間指針第二次追補(2012年3月16日)で「事故により通常より困難になった就労で得られた収入は“特別の努力”によるものであり、賠償額から控除しない等の対応が必要」としました。

東電はこれを受けて「事故以降の新たな勤務先で2012年3月1日以降得た収入のうち月額50万円まで控除しない」(2012年6月21日)としました。

その後、今年6月10日に「2011年3月11日~2012年2月末日も対象期間に拡大、この期間での新たな勤務先で得た収入として賠償金から控除されていた金額を支払う。上限は月額50万円もしくは事故がなければ得られた収入(平均月収額)のうち低いほう」としました。

(6)賠償請求への東電の対応
賠償請求についての東電と被害者の直接交渉は非公開のため、実態はよくつかめていないようですが、大企業対個人の交渉で被害者に有利な状況があるとは思えません。

東電との交渉打開が望めない場合、被害者は原発ADRに申し立て、仲介委員が東電と被害者の和解手続きを進めます。
原発ADRは、2011年9月~12月における活動状況報告で次のように述べています。

「原発ADRへの申立件数が増加していった理由としては・・・東京電力が、直接交渉においては、いわゆる東電基準に固持するのみで、譲歩する姿勢を見せず、中間指針で個別に明記されなかった損害の賠償請求については個別具体的な事情を検討せずに賠償を拒否する(門前払いする)傾向が顕著となり、このような直接交渉における東京電力の態度に不満を抱く被害者が増加していった、東京電力は中間指針で賠償対象として明記された財物価値喪失等の賠償を動産、不動産を問わず先送りしており、このような東京電力の態度に納得できない被害者も増加していったと考えられることなどが挙げられる。・・・

原発ADRを通しての和解成立が遅延している東京電力側の原因としては、
・東京電力が財物価値喪失等及び中間指針に個別に明記されていない損害の賠償請求について和解協議に入ることに消極的な態度をとり続けたこと
・中間指針において目安とされた金額の増額や生活費増加分の賠償になかなか応じないこと
・事件全般につき答弁書における認否留保が多く、積極的な審理促進の態度があまり見られないこと
等が挙げられる」

また、第23回原子力損害賠償紛争審査会(2012年2月17日)で野山原発ADR室長(文科省)は次の発言をしています。

「東電基準が発表された当初、東京電力の賠償の末端の現場、被害者の方々と直接接触がある現場では『中間指針に具体的に書いてないことを賠償することは、中間指針に反するんだ。だから賠償はできないんだ』と、このような説明がなされていたということを、福島県のいろんな方々からのお話とか、当方のコールセンターにかかってくる電話から、そうであったのではないかと推定しております。・・・

いろんな事業者が、こういう累計での損害賠償をということで東京電力に話をすると、それは中間指針に具体的に書いてないから賠償の対象にならないという対応をされるという話は今でもわりかし日常的に聞きますし・・・やはり資料を十分集められない被害者の方が非常に多いのに、とにかく資料を要求して、資料がないとなかなか相対交渉に応じないようなこと、それから、ちょっと卑近な言い方ですけど、何か隙があったらすぐ減額しようとするような態度が見られる、そういう問題があるんだろうと思います」

以上から、東電の賠償に対する問題点をまとめます。
・「中間指針に明記されない個別の損害が賠償されないということのないよう留意されることが必要である」という原賠審の指摘にもかかわらず、中間指針内の賠償(最低ラインの賠償)ですませようとしている。
・資料提出がないと交渉に応じようとしない。
・和解に対して消極的である。

他にも次の点が指摘されています。
・慰謝料(精神的損害)、除染、風評被害について、低額におさえようとしている。
・自主避難者の請求に対して、きわめて不十分な賠償でのぞんでいる。

事故発災から2年9か月の現在、賠償をめぐる状況はごく限定的に改善されただけで、被害者の苦しみは続いています。

7月23日に、福島県内から新潟県に避難している354人が国と東電に約39億円の損害賠償を求めて新潟地裁に提訴しました。原告の7割以上264人が自主避難者で、原発ADRでも低額におさえられてしまう賠償に対して、避難指示区域外であっても健康被害を避けるための避難の判断には合理性があると主張しています。弁護団長の遠藤弁護士は「避難者の救済が進んでいない現状に限界を感じ、訴訟を起こさざるを得なかった」と語っています(新潟日報7月24日)。


次回は、避難指示区域再編に係る賠償の問題等をとりあげます。
(12月2日)

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。