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「プロメテウスの罠 内部告発者」が語らなかった2つの事実

3月4日から4月1日まで29回にわたった「プロメテウスの罠 内部告発者」(朝日新聞連載)は、東電「トラブル隠し」(2002年)と福島第一原発1号機格納容器・MARKⅠについて、原発の奥にひそむ安全を脅かすものに挑んだ2人の内部告発者と彼らを巡る人々を描いた秀作でした。

内容はお読みいただくことにして、ここでは「プロメテウスの罠 内部告発者」がとりあげなかった2つの事実を紹介します。

<その1>
元GE社員ケイ・スガオカさんの告発(2000年7月・東電福島第一原発1号機の蒸気乾燥器6か所のひび割れと本来の位置と180度異なる方向に取り付け)を受けた東電は隠ぺい・虚偽報告を繰り返していましたが、2年後の2002年8月、ようやく事実を認め本格的な調査に取り組みました。

その結果、2002年9月13日に13基29件の不正、9月20日8基で新たな隠ぺい、9月25日には発表済みのひび割れの過小報告、10月9日2基27か所で新たなひび割れ兆候発見が公表されました。

調査のなかで、福島第一原発1号機での格納容器定期検査データの偽装(基準を超えた漏えい率を検査時に圧縮空気を注入してごまかした等)が発覚し、10月25日保安院は東電に原子炉等規制法違反で1号機の1年間運転停止命令の行政処分を出すと発表しました。原発へのこの種の処分は、後にも先にもありません。

東電経営陣5人が引責辞任したのですが、南社長は会見で「言い訳になってしまうが、どんな小さな傷もあってはならないという基準が、実態にあっていない」と言いました。(「東京電力原発トラブル隠し事件」Wikipedia)

南社長が漏らしたホンネは、その後原発の安全に係る重大な決定につながりました。

政府は2002年12月に原発の不正再発防止のため、電気事業法等を改正し、再発防止策として「健全性評価制度(維持基準)」を導入しました。

保安院は、2003年4月に発した「原子力発電設備の健全性評価制度(維持基準)の整備について」で「健全性評価制度(維持基準)」を次のように説明しています。

・健全性評価制度(維持基準)とは、原発にひび割れが生じた場合に、その設備の健全性を評価するための手法をルールとしたものである。
・任意に実施されている自主点検を「定期事業者検査」とする。
・「定期事業者検査」では、事業者は設備を構成する機器の非破壊試験(超音波探傷法によるひび割れの有無やその大きさの測定)を行うこととする。
・発見されたひび割れは、進展を予測し、設備の構造上の健全性を評価し、その結果を記録・保存し国に報告しなければならない。
・健全性評価は、学会等の民間規格(日本機械学会の維持基準)を活用することとする。

健全性評価制度(維持基準)とは、①ひび割れ検査を義務付けて、②発見されたひび割れの進展予測をして、③許容基準以下であればひび割れを放置したまま一定期間継続運転できる、ことをルールとして定めたものです。つまり、引責辞任した東電・南社長が言った「どんな小さな傷もあってはならないという基準」を取り払って「実態にあわせた」制度が誕生したのです。

小さなひび割れはへっちゃら、としたこの制度は原発の安全に一層の“危うさ”をもたらすものとして、反対の声があがりました。健全性評価制度(維持基準)はなぜ危険なのでしょうか?

①ひび割れを放置したまま運転することを許可している。
②評価基準(許容基準=維持基準)は国が定めることなく、民間規格を使う。
③評価基準(許容基準=維持基準)は、地震が少ない米国で開発されたものであり、地震国日本に適合するものではない。
④非破壊検査も健全性評価も事業者のみが実施し、国は報告を受けるのみである。検査・評価のチェックがなされない。
⑤ひび割れの状態(長さや深さ)を正確に把握することはできない。
⑥溶接部、埋設部、高放射線量区域等は検査が困難であり、ひび割れが過小評価される可能性がある。

福島第一原発事故では、配管等のSB-LOCA(小破口冷却材喪失事故)があったのではないかという指摘があります。4基のうち一番早くメルトダウンした1号機は、“トラブル隠し”で東電17基中ひび割れ数が最多でした。

健全性評価制度導入8年後に発生した原発事故で、この制度は影響があったのか、なかったのか、取り上げられていません。でも、私の脳裏には、無数の小さなひび割れが未曾有の地震と津波で、つながりあい、亀裂となり、メルトダウンを速めたのではないか、という疑念が消えずに残っています。

ひび割れや亀裂からの漏えいについて、東電は県技術委員会・福島事故検証課題別ディスカッション「地震動による重要機器の影響」で次のように説明しています。

「プラントデータに影響を与えないほどの微小な漏えい(1時間で0.23トン以下)は安全機能に影響を与えるものではありません」(「福島事故検証課題別ディスカッションの課題と議論の整理」)

「微小な漏えい」が複数個所で発生した場合はどうなのでしょうか?そもそも「微小な漏えい」はあったのでしょうか、なかったのでしょうか?3.11直近の健全性評価結果を基に、地震動の影響を解析し、ひび割れが維持基準を超えたかどうかを点検する必要があるのではないでしょうか?

<その2>
2つ目はローカルな事柄です。

東電は、所有する17機の原発(福島第一:1~6号機、福島第二:1~4号機、柏崎刈羽:1~7号機)の13機で、1980年代後半から2000年までの間30超のトラブルを隠ぺいしていました。

隠ぺいがなかったのは、1990年代半ば以降に営業運転を開始した柏崎刈羽の3,4,6,7号機でした。
隠ぺいは、1号機で3件、2号機で2件、5号機で2件と、福島第一、第二と比べると少なかったといえます。

保安院がトラブル隠しを公表した翌日、当時の平山知事は「極めて遺憾」と1号機の即時停止と詳細な検査実施を要請しました。9月に入り、柏崎市議会、刈羽村議会は相次いで「プルサーマル事前了解撤回」を決議し、9月12日には知事、柏崎市長、刈羽村長が共同記者会見をして「安全確保と信頼関係が損なわれた」とプルサーマル事前了解取り消しを表明しました。

福島県でも4町長(双葉、大熊、富岡、楢葉町)がプルサーマル事前了解凍結を決定し、東電は身から出たさびで、ようやくこぎつけたプルサーマルの地元了解をすべて失いました。

トラブル隠し発覚は、プルサーマル事前了解を吹き飛ばしただけではなかったのです。
新潟県の原発関連行政に大きな影響力を発揮することになる技術委員会(正式名称は「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」)を生み出したのです。

技術委員会は、健全性評価制度(維持基準)導入を定めた電気事業法改正(2002年12月)の2か月後2003年2月に誕生しました。任務は「柏崎刈羽原発の運転、保守、管理、その他安全確保に関する事項を県が確認するにあたって、技術的な助言・指導をする」とされ、いわば健全性評価(維持基準)に対する県独自のチェック機関として設置されました。

その後2007年の中越沖地震後には「被災原発の東電や国の調査や対策等について県民の安全・安心の観点から確認する」として技術委員会のもとに2つの小委員会が設置され、原発に批判的な立場の委員がそれぞれ2人ずつ任命されました。地震2日後に運転再開に際して地元自治体の了解を得ること」を東電に申し入れた県、柏崎市、刈羽村は、1,5,6,7号機再稼働の了承に際して、技術委員会の見解を拠りどころとしました。

3.11を経て、2012年7月以降技術委員会は「柏崎刈羽原発の安全に資することを目的として」福島第一原発事故の検証に取り組んでいます。
(2014年4月6日)
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