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ーフィルタベントの落とし穴ー フィルタなんてなんのその、すいすい通る放射能

第32回学習交流会「柏崎刈羽原発の審査 どうなってるの?」(11月16日)で発行した「会から皆さまへ」(No9)です。


「柏崎刈羽原いのち・原発を考える新潟女性の会」から皆さまへ No9(2014年11月16日
”―フィルタベントの落とし穴― フィルタなんてなんのその、すいすい通る放射能”


フィルタベントをテーマに8月26日に開催された「柏崎刈羽原発6,7号機・新規制基準適合審査会合」で、東電は「自主的な安全性向上対策として、排気ガスに含まれる〝よう素″を除去するための〝よう素フィルタ″を設置する」ことを明らかにしました。

「自主的な安全性向上対策」とはいうものの設置は、他社がすでによう素フィルタ設置を表明していることと無関係ではなさそうです。

フィルタベントには、その名の通りフィルタがついているのに、なぜさらにもう1つ〝よう素フィルタ″をつけるのでしょうか? 答えはかんたん、〝よう素″はフィルタベントのフィルタをすりぬけて外気に出てしまうからです。

格納容器から出て来る高濃度放射性物質のうちフィルタベントが低減(除去ではありません)できるのは「粒子状放射性物質」(代表はセシウム)です。「ガス状放射性物質」は低減できないので、そのまま出ていくことになるのです。

東電は8月26日審査会合の資料で、フィルタベントで低減できない「ガス状放射性物質」である〝希ガス″をどのように低減するかについて、次のように説明しています。

<〝希ガス″の低減方法> 
格納容器内にできるだけ長くとどめ(=ベント実施をできるだけ遅らせる)、放射能量を可能な限り減衰させる。ベント実施を遅らせるために、格納容器スプレイの実施や水源への補給等の対策を講じる。

〝よう素″も「ガス状放射性物質」なのでしょうか? 東電は次のように説明しています。
「圧力容器から格納容器に入ってくる〝よう素″の95%以上が〝粒子状よう素“(CsI)で、最大5%がガス状の〝無機よう素″(I₂)である」

ガス状の〝無機よう素″も〝希ガス″と同じ方法で低減するのでしょうか? 8月26日審査会合資料の説明を紹介します。

<〝よう素″の低減方法>
・サプレッションプール水中に取り込まれた〝粒子状よう素″が、サプレッションプール水中で〝無機よう素″に変化し、〝無機よう素″の一部が時間をかけて〝有機よう素″(CH₃I)に変化する。(〝無機よう素″の一部が時間をかけて〝有機よう素″(CH₃I)に変化する〝」について、 新潟県技術委員会で東電は「無機よう素のうち最大3%が有機よう素に変換する」と説明しています)

・一度生成された〝有機よう素″は格納容器内で除去されることなく、フィルタベントに流入する。

・サプレッションプール水のphを7以上に維持した場合、サプレッションプール水中で〝無機よう素″生成が抑えられ、その結果〝有機よう素″の生成量も抑えられるので、〝よう素″についてはサプレッションプール水のph制御を行うことが有効な低減対策となる。

・フィルタベントに流入したガス状の〝無機よう素″は、スクラバ水(フィルタベント設備に入っている薬液)内のチオ硫酸ナトリウムとの化学反応で〝よう素イオン″となりスクラバ水に溶解する。この化学反応を安定化させるためにはスクラバ水のphをアルカリ性に保つ必要があるので、スクラバ水には水酸化ナトリウムを溶解させる。

・〝よう素イオン″になりきれない〝無機よう素″と〝よう素イオン“にはならない〝有機よう素″は、〝よう素フィルタ“を設置し銀ゼオライト吸着材の中に取り込むことで低減させる。

果たして〝よう素″は東電のねらいどおり低減できるのでしょうか?県技術委員会では「〝無機よう素″の最大3%が〝有機よう素″に変換するというのは1995年段階の知見で、その後2004年に最大ピークで30%近くが〝有機よう素″になるという実験結果が出ている。1995年の3%をあまり前面に出すのはちょっと気になる」(2014年度第2回技術委員会議事録)という意見がありました。

8月26日の適合審査会合では、サプレッションプール水のph制御について「サプレッションプールの水量は膨大なので、ph管理は簡単にいかないのではないか」という懸念が出されています。

フィルタは、すべての放射能を外に出さないようシャットアウトする能力はありません。ベント実施時には、ガス状放射性物質の〝希ガス″全量と、“よう素フィルタ″でなおも取りきれなかった〝無機よう素″と〝有機よう素″等が外気へ流れ出ます。

その被ばく線量率について、8月26日の審査会合資料は次のように説明しています。

<ベント時の被ばく評価 (資料137頁)>
ベント実施にともない、大気中に希ガス等の放射性物質が放出されるため、フィルベント装置周辺の被ばく線量率は上昇する。ベント実施直後における主たる被ばく線源は希ガスであり、フィルタベント装置の放出口付近の作業エリアの被ばく線量率は一時的に1Sv/hを超えると考えられる。ベント実施時に行う消防車への燃料補給等については、被ばく線量率が低下した後に作業を行うものとする。(*1Sv/h:1Sv = 1000mSv  250mSvで急性障害(めまい、吐き気、脱力感等)が出始め、1.5Sv で一部死亡。1Sv/hは致死量に近い被ばく線量率です)

「ベント実施時に行う消防車への燃料補給等については、被ばく線量率が低下した後に作業を行う」とありますが、「被ばく線量率が低下した後」とは「プルームが通過した後」であり、その後プルームは刈羽村や柏崎市を通り風のふくまま県内を流れ、被ばくと土壌汚染をもたらします。(*プルーム:気体状(ガス状あるいは粒子状)の放射性物質が大気とともに煙突からの煙のように流れる状態を放射性プルームといいます。放射性プルームには放射性希ガス、放射性ヨウ素、ウラン、プルトニウムなどが含まれ、外部被ばくや内部被ばくの原因となります)

フィルタをすいすいと通り抜ける放射能の線量率は驚くほど高いです。高濃度放射能を垂れ流すベント実施を前提とした事故対策を、あなたは有効な対策と認めることができますか?「いのち・原発を考える新潟女性の会」6人は大声で言います。
「認めることはできません!」

(2014年11月26日)

つまみ食いデータと確率で作り上げた”虚構の安全”を審査してなにになる?

第32回学習交流会「柏崎刈羽原発の審査 どうなってるの?」のパワーポイント資料から、末尾の「これまでの審査への疑問」を報告します。

その前に…

・「柏崎刈羽原発の審査」の審査とは? - 原子力規制委員会が実施している新規制基準適合審査のことです。

・「柏崎刈羽原発の審査」の経過です。
<2012年>
9月19日 原子力規制委員会、規制庁発足                
<2013年>
6月19日 新規制基準決定 
7月2日 東電・広瀬社長、安全協定第3条事前了解を破棄して柏崎刈羽原発6,7号機の審査申請を公表
7月5日 東電・広瀬社長、泉田知事に審査と事前了解協議並行を要請、知事は拒否             
9月21日 東電、県の了解前に申請する考えはないと発表
9月26日 知事、条件付きで東電審査申請を承認
9月27日 東電、柏崎刈羽原発6,7号機の審査を申請

・泉田知事が東電の審査申請を承認する際に付けた条件とは?
<審査申請承認の条件>
1 ① ベント操作による住民の被ばくが許容できないと明らかになった場合 ② フィルタベント設備の設置に関して安全協定第3条(事前了解)に基づく協議が整わないと明らかになった場合には、審査申請の証人を取り消す。
2 ① 新潟県の安全協定に基づく協議後に修正申請を行うこと ② フィルタベント設備は地元避難計画との整合性を持たせ安全協定に基づく了解が得られない限り使用できない設備であることを、申請書に明記すること
        
2について、東電は条件通りにしました。1については、現在県技術委員会で検証中です。

・適合審査会合は11月6日までに16回開催されています。
第1回(13年11月21日)申請の概要について
第2回(11月28日)申請内容に係る主要な論点
第3回(14年1月24日)地質について
第4回(7月22日)確率論的リスク評価について
第5回(8月5日)静的機器の単一故障について
第6回(8月26日)フィルタベントについて
第7回(9月2日)  〃
第8回(9月30日)確率論的リスク評価について
第9回(10月2日)事故シーケンスの選定について
第10回(10月3日)地質、調査結果について
第11回(10月14日)有効性評価について
第12回(10月16日)   〃
第13回(10月17日)津波評価について
第14回(10月23日)外部火災影響評価について
第15回(10月28日)内部溢水影響評価について
第16回(11月6日)外部火災影響評価について
このほかに、規制委員会から東電へのヒアリングが106回(11月6日時点)、現地調査が2回(2月17~18日、10月30~31日)行われています。ヒアリングは非公開とされていて議事要旨と資料のみ公開となっています。

・「これまでの審査への疑問」です。
(PRAについて)
・日本では、PRAの実績が十分とは言えない - “つまみ食い”のデータで的確な評価ができるのか?
・PRAは運転開始時(新品状態)のプラントを対象としている - 経年劣化、とりわけ2007年の中越沖地震の影響が反映されていない評価結果は、現実とかけ離れているのではないか?
・地震、津波PRAは、全く実績がない - であれば、確率が小さいことを理由に評価対象から外すのではなく、きびしい評価を徹底すべきではないか?
・地震、津波PRAはそれぞれ単独事象が前提となっている - 地震、津波同時発生のケースを欠いたPRA評価結果は現実から大きくかけ離れているのではないか?

(事故シーケンスについて)
・大規模地震における事故シーケンスを、評価方法の保守性や詳細評価が困難なことを理由にして、評価対象から外している - 福島原発事故から目を背け、大規模地震発生の可能性を軽んじ、都合のいい事故シーケンスで乗り切ろうとしているのではないか?3.11以前の「安全神話」のままなのではないか?

(有効性評価について)
・3ケースとも、6,7号機それぞれ運転員2人で事故発生後10分間でプラント状況を把握するとされている
ー どんな状況下でも可能なのか? 不可能な状況を考慮しているのか?
・タイムフローが示されているが - 精緻であればあるほど、どこか1カ所想定通りにいかないことが起きれば、その後の対応は混乱するのではないか?
・対策が人力に偏っている - そのこと自体、無視できないリスクではないのか?

(外部火災について)
・森林火災影響評価では、過去10年間の気象データから最大風速等を設定している - 気象に関して、過去のデータだけでは不足なのではないか? 温暖化等の影響による気象の異変を十分に考慮しているのか?
・航空機墜落は墜落確率から墜落地点を想定し、火災の影響評価をしている - まるで、影響は及ぼさないという評価結果から逆算して導いた想定のようにみえる。 航空機墜落の影響は火災だけなのか?

(内部溢水について)
・機器破損等での溢水で原子炉隔離時冷却系が機能喪失しても、高圧注水系が機能するので、高圧注水機能は維持されるとしている - 原子炉隔離時冷却系と高圧注水系は、系列が異なっており、原子炉隔離時冷却系の代替を同じ系列で対応すべきではないか?
・地下水溢水の影響評価では、止水措置があり浸水はない、としている ー 対策は万全だという前提に立った評価が通るのか?

(静的機器の単一故障について)
・多重性、多様性を不要とする理由として、故障発生の可能性が極めて小さいことをあげている ー 故障発生の可能性が極めて小さいから単一設計となっているのであれば、事故の可能性を設計思想を理由に否定するのは、深層防護の否定につながるのではないか?

(フィルタベントについて)
・性能評価でph7など、基準数値が示されている - その数値の信頼性を評価しているのか?NUREGの数値をうのみにしてよいのか?
・フィルタベント実施時の水と薬液補給の屋外作業はプルーム通過後に実施するとされている。被ばく抑制の遮へい壁周辺の放出口付近の作業エリアの被ばく線量率は一時的に1Sv/hを超えると考えられるとある - 致死量にも近い線量率になる。作業エリアを通過したプルームは、風に乗って流れ人を被ばくさせ、環境を汚染し、取り返しのつかない被害をもたらすことに痛みはないのか? 

(2014年11月19日)

原発輸出、事故と廃棄物は?


10か月前、新年の目標は「ブログ作成スキルアップと慢性疲労脱却」でした。
既に秋、今年もあと2カ月ちょっとなのに、新年の”決意”は宙にういたまま。

ブログは7月からサボりっぱなし。寄る年波で、疲労はとれるどころか…。
でも、今日はブログを更新します。

昨日24日、政府は「原発賠償条約」締結を閣議決定しました。

輸出した原発が事故を起こしても輸出側は免責、条約締結は原発維持を国際的に約束することにもつながり極めて問題が大きい条約なのですが、マスコミの報道は少なく、出てきた報道は「原発輸出に弾みがつく」と”アベノミクス成長戦略プロパガンダ”ふうです。

「いのち・原発を考える新潟女性の会」は今春から学習交流会毎に「会から皆さまへ」を発行し、参加いただいた方々や手配り等で読んでいただいていますが、今月発行のテーマが「原子力賠償条約」でした。コピペで申し訳ありませんが、ご覧願います。



「いのち・原発を考える新潟女性の会」から皆さまへ No8(2014年10月12日)
原発輸出:事故と廃棄物は?

先月の学習交流会(9月21日)の話し合いで「政府は原発輸出を進めているけど、日本の原発が輸出先で事故を起こしたら日本が責任をとることになるのか?発生する廃棄物は日本が引き取るのか?」との疑問が出されました。今回はこの2つの問題を取り上げます。

原発が輸出先で事故を起こし責任を求められれば、輸出元のメーカーは倒産しかねません。原発輸出は国策だからと賠償に国税がつぎこまれるかもしれません。そのような事故のリスクを避けようと、政府は手を打ち始めています。

「原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣等会議」…こんな会議があること、知りませんでした。
会議の構成員 
議長 世耕弘成(内閣官房副長官)
構成員 赤羽一嘉(内閣府副大臣兼経済産業副大臣) 岸 信夫(外務副大臣) 櫻田義孝(文部科学副大臣)      井上信治(環境副大臣)

5人の副大臣等は6月12日に第1回会議を開催し、次の2方針を決定しました。
 ①エネルギー基本計画(4月11日閣議決定)を踏まえ、原子力損害賠償制度(国
内制度)を見直す。
 ②2014年内に「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC条約)」を締結する
ために関連法案の国会提出に向けた作業を行う。

原発輸出に関係するのは②の「CSC条約」です。
CSC条約:Convention on Supplementary Compensation for Nuclear Damage

日本弁護士連合会は、この「CSC条約」について8月22日に意見書を公表しています。以下、日弁連の意見書をもとに「CSC条約」についてお伝えします。

<「CSC条約」の概要>
原子力事故が起き、損害が事故発生国の責任限度額(約468億円)を超えたら、加盟各国が原子力設備容量と国連分担金割合に応じて算出された補完基金を拠出、提供する。
 ・損害全てではなく、損害項目を限定する。
 ・賠償責任は原子力事業者のみとする。
 ・損害賠償の除斥期間を事故時から10年とする。(除斥期間:じょせききかん とは、法律関係を速やかに確定させるため、一定期間の経過によって権利を消滅させる制度)
 ・国境を超える損害が発生した場合、損害賠償請求に関する裁判は事故発生国においてのみ行う。

なぜ、今「CSC条約」を急ぐのか?
「CSC条約」(1997年にIAEAで採択された)は、発効要件が整わないため、まだ発効されていない。(発効要件:締約国が5か国、原子炉熱出力の合計が4億kW、 現在の締約国:アルゼンチン、モロッコ、ルーマニア、アメリカ)
日本が加盟すると条約が発効するのでアメリカは日本に加盟を要請している、条約発効で輸出に都合のいい条件(「賠償責任は原子力事業者のみとする」)が整う、輸出先予定各国に条約加盟を促し原発輸出を促進する等が、政府が条約締結を“急ぐ”理由である。

「CSC条約」の問題点
①損害項目が限定されている!
<「死亡又は身体の損害」「回復措置費用・防止措置費用(両方とも“権限ある当局”が承認したものに限る)」に限定。風評被害や精神的損害(慰謝料)は含まれない可能性がある。>

②責任限度額(約468億円)も、各国からの拠出金も金額が低すぎる!
<将来の加盟国をあてにしても、拠出金の合計は211~296億円程度で、実際の原子力損害をカバーするものではないことは福島事故で明らかである。>

③原子力機器メーカーが、輸出においても損害賠償金支払いの責任と経営破たんのリスクを負わないことになる!
<メーカーは製造物責任を負担すべきである>

④損害賠償期間が10年と限られている!

⑤事故に関する裁判は事故発生国のみに限られる!
<事故被害者は自国で訴訟をおこすことができず、訴訟負担のため泣き寝入りさせられる可能性が増大する。>
 
小括
政府によるCSC条約の締結準備は、原発輸出を推進しようとするためのものであるが、原発輸出は、相手国及び周辺国に、回復不可能な人権侵害、環境問題をもたらすおそれのあるもので、行うべきでない。また、条約の内容に照らして、その締結は、原子力被害者の保護に欠けることになることが危惧される。


「CSC条約」締結は最近“降ってわいた話”ではありません。2008年に文科省が所管した「原子力賠償制度の在り方に関する検討会」で取り上げられ、民主党政権が本格検討を着手し、自民党政権が引き継ぎました。

事故が起きても賠償責任を負わずにすむという、メーカーにきわめて有利な「CSC条約」を今年中に締結し、近隣諸国や輸出先の国に締結を促し、事故の責任を回避しながら原発輸出を加速する、これが安倍政権の成長戦略のかなめ“原発輸出戦略”の実態です。〝身勝手、無責任″な戦略で、輸出先の国民に顔向けできない政策です。

発効要件に「原子炉熱出力の合計が4億kW」とあり「加盟各国が原子力設備容量と国連分担金割合に応じて算出された補完基金を拠出」することになっていますから、この条約締結は「原発を手放さずに続ける」ことを意味します。

また、賠償すべき損害項目が限られている(有限責任)CSC条約が締結されれば、事業者に無限責任を課している原子力損害賠償制度(国内制度)の見直しに影響を与える可能性があります。国内制度が有限責任に改悪されれば、損害賠償額は減り、そのぶん原発コストが下がり、原発維持の根拠“原発は安い”を裏付けることができ、政府にとって好都合です。もちろん、電力会社は“ニコニコ顔”です。

原子力政策の根幹に係る条約締結について、政府は私たち国民に何の説明もしていません。9月29日の「所信表明演説」で安倍首相は「徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入により、できる限り原発依存度を低減させてまいります」と言っていますが、「CSC条約」締結が原発依存度低減にどうつながるのか、明快に説明すべきです。

では、輸出された原発が生み出す廃棄物は日本が引き取ることになっているのでしょうか?

2011年7月18日付け共同通信は「包括的燃料サービス構想(CFS構想)の実現に向けた日本、米国、モンゴル3か国政府の合意文が明らかになった」と報じています。  CFS:Comprehensive Fuel Service

CFS構想とは、世界有数のウラン資源があるモンゴルで発掘、製錬したウランを輸出し、輸出されたウランが生み出す核廃棄物をモンゴルが引き受け、処理、保管、埋蔵し、ウラン燃料全体のめんどうをみる、というものです。

 “原発電気”をさんざん使い、何十万年も保管しなければならない“ゴミ(核廃棄物)”を国外に押しつける構想は1970~1990年代にもありました。オーストラリアやパラオ諸島などを候補としたこの構想は、地元の反対で立ち消えとなりました。

21世紀に入って、IAEAやアメリカが「核廃棄物の多国間管理の必要性」を提唱し、2009年5月には、アメリカのシンクタンク2人と経産省官僚がモンゴル政府要人に「使用済み核燃料貯蔵施設を作って、IAEAが管理すれば、中国もロシアもモンゴルに手出しできなくなる。北東アジアの安全保障強化に貢献できる」とさそいかけ、モンゴルを舞台に展開するCFS構想が提起されました。

ユッカマウンテン最終処分地計画が住民の反対で白紙撤回となり早急に代替地が必要なアメリカと、使用済み核燃料の処分・保管場確保を原発輸出の起爆剤としたい日本が、国連加盟国で人口密度が一番低く地盤も強固なモンゴルに白羽の矢を立てたのです。

 2011年には、アラブ首長国連合も仲間に入り、4か国で計画を進めることになり、7月には合意文書原案ができたのですが、交わすまでには至りませんでした。日本では外務省が慎重姿勢をとっていると言われています。

モンゴルを“核のゴミ捨て場”にしようとアメリカと二人三脚してきた経産省は原発輸出に躍起になっています。CFS構想については一言も発していませんが、使用済み核燃料引き取りがセールスポイントであることに変わりはありませんから、決してあきらめたわけではないでしょう。そういえば、安倍総理は昨年3月にモンゴルを訪問しました。訪問の目的は、拉致問題、中国包囲網、鉱山資源開発・・・あやしいですね。CFS構想は首相官邸や経産省でひっそりと成長しつつあるのかもしれません。

最後に、イギリスの内科医、カール・イワン・クロウェスさんから届いた私たち日本人へのメッセージと、彼がイギリスの日本大使館に出した手紙を紹介します。少し長くなりますが、ぜひお読みください。


「2013年11月、私は息子のキアン(ウエールズのロックバンド「スーパーファリーアニマルズ」のキーボーディスト)と共に、PAWB(People Against Wylfa-BウイルファBに反対する市民の会)を代表して訪日しました。福島第一原発での複数の炉心溶融の結果を目の当たりにし、痛ましく思いました。今年の1月、駐英日本大使館宛てに私たちの来日経験の概要を添えて面会依頼を出しましたが、返事は来ませんでした。3月、大使が私の前回の手紙を受け取っていないのではないかと考え、もう一通の手紙を送りました。残念ながら、今も返事はもらえていません。以下に、ホライゾン社と日立が日本の成長戦略の一部としてウエールズのウイルファで建設を計画している原子力発電所について、大使宛てに送った手紙全文を転載します。日本の皆さんが、日本の名のもとに行われているこの不道徳な提案を知って、これをくい止めるために日本政府に働きかけてくださることは、とても重要だと思います。

                          
 日本大使館 林 景一 大使閣下
 
 私は先ごろ、息子と訪日する機会を得ました。息子は音楽の仕事で何度も日本を訪問することがありましたが、私にとっては初めての機会でした。日本でお会いしたすべての方々のホスピタリティと親切心にたいへん感謝しています。

 滞在中、私は福島県を訪ね、福島第一原発での爆発がもたらした問題の核心に携わっている数名の市民運動のリーダー達や福祉サービスを行っている人たちと会いました。誰もが思うように、私も放射能がもたらす結果について愕然としました。あらゆる生活が消え去った避難区域の様子を、私は忘れることができません。空っぽの土地、家や、車、商店、工場。私はそうしたものを二度と再現したくはありません。雇用の喪失や、家族や協同体の分断、事故に関連した疾患など
は、原発事故という人道上の悲劇にさらに追い打ちをかけることになるということが、NHS(イギリス国営医療サービス)で医療に関する責任者を務めていた身として分かりました。

 そうした観点から、多くの日本人が新しい原発建設に関与することに失望し、
4名もの元総理大臣たちが、それに懸念を表明したことは、全く驚くべきことで
はありませんでした。

 私は、日本が経済戦略の鍵となる施策として、原発技術の輸出に注力していることを存じ上げています。私はまた当初、原発輸出プロジェクトで、東京電力が原発メーカーの協力者として、原発施設の海外への導入後の新たな管理プランを提供することになっていたことも存じ上げています。しかし、私たちが目撃したとおり、福島第一原発事故やそれに起因する様々な問題を東京電力が引き起こしてきたことから、この計画はもはや実行不可能なものとなっています。

 原発輸出戦略の構築に深く関与した国際協力銀行の前田匡史氏(代表取締役専務取締役)は、2011年福島第一原発事故を受けて、当初の原発輸出戦略は粉々に打ち砕かれたと述べています。元内閣官房参与でもある前田氏は「私たちは安全性の保障と技術者の訓練を含んだパッケージとしての輸出を計画していました。しかし、東京電力が構想から消えたことで、施設の輸出しかできなくなりました」と語りました

ウイルファに新設しようとしている原発について、日立は原発の運転が可能となった後、彼らの権利を売却すると聞いています。私を含め、地元ウェールズのア二ス・モーン島に住む誰もが懸念を強めています。日立は原発の運転経験はありません。このことは、比較的新しい企業で原発運転経験がない協力企業しかいないウェールズのホライゾン社に、運転パートナーに誰がなるのかについて大きな懸念をなげかけています。

私の最も大きな憂慮を、それはモラルに関することなのですが、最後に提起することをお許しください。
私は日本政府が日本の経済成長のために、自国ではもはや選択肢とは呼びえないような技術を輸出する日立や他の原発メーカーを奨励する決定を行うことは極めて問題の多いやり方だと、心の底から思います。機械トラブル、テロリズム、天災、人災、サイバーテロなど、どのような形態をとるかは分かりませんが、取り返しのつかない出来事を私たちは目の当たりにすることでしょう。それは日本が永遠に悔いつづけ、世界における日本の名声を大きく傷つけることになるでしょう。

 日本国内や海外に原発を建設しようとする現在の方針を変えるために、あなたが持つ大きな影響力を行使すること、そして再生可能で安全で持続可能なエネルギーに関する多くの重要な技術を日本が効果的に推進し、世界に貢献し、大きな名誉を得るように働きかけてください。

 最後に、通例とは異なることとは存じますが、この件について議論を深めるべく話し合いをさせていただくために、あなたの時間を少し分けていただけないでしょうか。ご連絡いただけることをお待ちしております。
敬具」
カール・イワン・クロウェス博士 (OBE 王立内科医協会 公衆衛生学部 フェロー)

<「英国への原発輸出」原子力資料情報室通信484号」2014年10月1日発行> *翻訳: 松久保 肇


福井地裁判決「大飯原発3,4号機の運転をしてはならない」と新規制基準

7月16日、規制委員会は川内原発1,2号機の新規制基準審査書案を了承し、同原発が新規制基準に適合していることを実質承認しました。今後、パブリックコメント等、一定の手続きを経たのち、早ければこの秋にも再稼働かといわれています。
  
新規制基準の内容や、福島原発事故が明らかにした防災計画をめぐる諸問題については、また別の機会にゆずることにして、ここでは「大飯原発3,4号機の運転をしてはならない」とした福井地裁の「関西電力大飯原発3,4号機運転差止請求事件」判決(5月21日)と新規制基準について違いを見ながら、規制委員会の審査適合とはどういうことかを考えたいと思います。

(1)福井地裁判決と新規制基準審査の根本的な相違

 規制委員会・新規制基準審査は…
・規制委員会の所掌は原発の規制であるとして、原発を今後も稼働させていくのかどうかについては、一切議論しない。
・したがって、規制基準は今後も現存の原発を稼働させていく前提で定められている。
・規制基準は福島原発事故の教訓をもとに「最大限の安全」を求めるとしているが、断層評価の一部を除けば、現存原発に可能な範囲の「最大限の安全」でしかない。
・事象が発生する確率が一定以下の場合は「起きない」と処理し、対策を義務付けていない。
・防災指針策定のみが所掌であり、立地自治体の避難計画の是非の判断は原発稼働の規制対象外としている。

福井地裁・判決は…
・本件訴訟を考える指針は、すべての法分野で最高の価値を持つ人格権で、日本の法制下で人格権を超える価値はない。
・原発の稼働は法的には「経済活動の自由」に属し、憲法上では人格権よりも劣位に置かれる(人格権が優位である)べきものである。
・福島原発事故は、原発の事故が人格権をきわめて広汎に奪う可能性があることを明らかにした。
・よって、福島事故のような事態を招く具体的な危険性が万が一でもあるのかどうかを裁判所は判断すべきであり、この判断こそが裁判所に課せられた最も重要な責務である。

(2)人格権とは?
私たちは、生まれながらに人格権を持っています。例えてみれば、私たちは人格権という“宝の小箱”を体内にセットされてオギャーと生まれてきた、というイメージです。
         
“宝の小箱”には「生命 身体 精神 生活」という、私たちが生きていくのに欠かせない4つのボールが入っています。

4つのボールが入った“宝の小箱”は、不当に奪われないよう、傷つけられないよう、憲法で保障され守られています。

憲法13条〔個人の尊重・幸福追求権〕すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
憲法25条〔生存権と国の責務〕すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上および増進に努めなければならない。

福井地裁判決は、原発事故は広大な範囲の人々の人格権を傷つけ奪うものであるから、万が一でも事故の危険がある場合裁判所は、原発の運転を止める判断をすべきである、と述べています。
 
(3)判決が示した「福島事故のような事態を招く具体的な危険性が万が一でもあるのかどうか」を判断するポイント 
① 放射線の健康被害については様々な見解があるが、20年以上この問題に直面し続けてきたウクライナ共和国、ベラルーシ共和国は、今なお広範囲にわたって避難区域を定めている。この事実は、放射性物質による健康被害について楽観的な見方をしたうえで避難区域は最小限で足りるとする見解に重大な疑問を投げかけている。
② 地震の発生は一度も予知できていない
③ 平成17年以後10年足らずの間に4原発で5回にわたり基準地震動を超える地震が起きている。いずれも、自然の前における人間の能力の限界を示すものであり、関西電力が想定した基準地震動を信頼できる根拠は見いだせず、基準地震動を超える地震が来ないというのは根拠のない楽観的見通しにすぎない。
④ 大事故に至らないよう対策が取られているというが、事故原因につながる事象すべてを取り上げること自体極めて困難であり、事故が発生し事態が深刻になればなるほど混乱と焦燥のなか、原発の従業員に的確・迅速の措置をとることを求めることはできない。
⑤ 事故の進行中に、どこに、どんな損傷が起き、それがどんな事象をもたらしているかを把握することは困難である。
⑥ 防御用設備を複数備えても、地震の際の安全性を大きく高めるものではない。
⑦ 放射性物質が一部でも漏れれば、そこには近寄ることさえできなくなる。
⑧ 何倍かの余裕を持たせて設計しても、基準を超えれば設備の安全は確保できない。
⑨ 福島原発事故において原子力委員会委員長は、使用済み核燃料プールからの放射能汚染が最も重大な被害を及ぼすと想定し、強制移転地域が170㎞以遠にも生じる可能性や、移転を認めるべき地域が250㎞以遠にも発生する可能性を指摘した。使用済み核燃料プールから放射性物質が漏れたとき、原発敷地外に放出されることを防ぐ原子炉格納容器のような堅固な設備はない。
⑩ 大飯原発3,4号機に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ちうる脆弱なものであると、認めざるを得ない。

判決が指摘した上記の判断のポイントは、新規制基準とその審査の根拠がいかに危うくもろいものかを明らかにしています。

(4)関西電力の「原発必要論」について、判決はどのように述べているか?
関西電力の主張①原発稼働は、電力供給の安定性、コスト低減につながる について判決は…

・きわめて多数の人の生存そのものにかかわる権利と、電気代の高い低いの問題等を並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断したりすることは、法的には許されないことと考えている。

・コストの問題に関連して国富の流出・喪失の議論があるが、原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出・喪失と言うべきでなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると考えている。

関西電力の主張②原発稼働は、CO2排出削減に資するもので環境面に優れてい について判決は…

・原発で深刻な事故が起きた場合の環境汚染はすさまじく、福島原発事故は日本始まって以来の最大公害、環境汚染である。環境問題を原発運転継続の根拠とするのは、甚だしい筋違いである。


判決文は、安倍政権が声高に喧伝している「再稼働すべき論」を見事に砕いています。しかし、誤りを指摘されてなお強弁してはばからないのが安倍政権です。この判決がこれからの日本の道しるべとなるよう、1人でも多くの人にその内容を伝えていきましょう。

(*文献:「大飯原発3,4号機運転差止請求事件判決要旨」)

「東電テレビ会議で何を話していたの?3月14日の福島第一原発」第28回学習交流会報告

「いのち・原発を考える新潟女性の会」第28回学習交流会(7月20日)は、先回に続き2011年3月14日の東電テレビ会議における会話について話し合いました。

2011年3月14日の1F(福島第一原発)はどのような状況だったのでしょうか?

事故発生から3日目、1Fは3つの危機に襲われました。

<1番目の危機>
深夜01:09、炉心注水の水源だった3号機逆洗弁ピット内の海水が残りわずかとなり、ポンプの破損を防ぐために1号機と3号機への注水を停止。炉心注水がストップした3号機のドライウエル(格納容器)圧力が上昇。
猪苗代から届いた淡水をピットに入れ、03:21に3号機の注水が復活。
しかし06:00近くなっても3号機のドライウエル圧力の上昇が止まらず、06:24には炉心水位がダウンスケールし、燃料が露出、吉田所長は「危機的状況」だとして現場作業員に退避命令。現場作業停止。
07:00頃を境にドライウエル圧力が下降に転じ、最悪の状況を脱した。現場作業、復活

<2番目の危機>
11:01、3号機爆発。
12日の1号機爆発を受けて、13日に2,3号機の爆発回避策を検討。2号機は原子炉建屋壁面に穴をあけ中のガスをぬく、3号機は空調系を動かして窒素や二酸化炭素を格納容器に送り込み爆発が起きない程度にまで水素濃度を下げる方針が確認されていたが、実行されないまま2度目の爆発が起きた。
爆発当初、吉田所長も本店対策本部も水素爆発か水蒸気爆発か明確でなく、テレビ会議には次の会話が記録されている。

11:29
本店広報班 「3号機付近の白煙発生ということで、至近の情勢をまとめたペーパーを作りましたので、ご覧いただきたいと思います」
本店清水社長 「これは何をお知らせしているの?」
本店 「はい、3号機のですね、水蒸気爆発の内容を」
本店 「本日11時1分に3号機原子炉建屋で再度大きな、再度はいらないですね、大きな音が発生し、発生しました」
本店高橋フェロー 「要はさ、1号機を3号機に変えただけだってんでしょ。それで、水素爆発かどうか分かんないけれども、国かなんか保安院が水素爆発と言っているから、もういいんじゃないの、この水素爆発で」
本店 「はい、可能性ということで」
本店小森常務 「水蒸気って、前も言ったんでしたっけ」
本店高橋フェロー 「これはさぁ、保安院がさぁ、さっきテレビで水素爆発と言ってたけど。保安院のやつは言ってたと思うんだけど。歩調を合わした方がいいと思うよ」
本店 「それでは水素爆発だけでしぼってよろしいですか」
本店石崎部長 「もうすでに官邸も水素爆発という言葉を使っているから、それに合わせたほうがいいんじゃないですか」
本店 「いかがでしょうか」
本店清水社長 「はい、あの、いいです。これでいいから、スピード」
本店 「ゴーサインです」
本店清水社長 「スピード勝負」

この爆発の結果、注水の水源だった3号機逆洗弁ピット(3号機ピット3号機タービン建屋海側)は瓦礫で埋まり、消防車は損壊、ポンプも瓦礫の下、注水用のホースは破れ、注水が滞った。その上、がれきの線量は吉田所長が驚くほど高かった。

14:36
1F 「いま現場から帰ってきた放管員が、ピットの周りの線量が400から500mSv/h」
吉田所長 「うわっ」
1F 「平ブルかなんかでガーッと押すかしないかぎり、ブロックが放射化というか、線量になっちゃってますんで」
吉田所長 「本店さん、本店さん、平ブルの手配お願いしたいんですけども」

<3番目の危機>
爆発の混乱がようよう落ち着いた12:49、2号機でそれまで動いていたRCIC(非常用冷却装置の一つで原子炉隔離時冷却系。原子炉内の蒸気の力で復水貯蔵タンク等の水を原子炉に注入する装置。バッテリーが切れるまでの間(およそ8時間程度)動くとされていたが、2号機ではすでに60時間以上も動いていた)がいよいよ機能を喪失、原子炉水位が低下し始めた。
燃料露出想定時刻をにらみながら、吉田所長は給水ラインの設定、3号機ピット給水維持、計器類点検、爆発防止策の実行を指示。
14:49、2号機ブローアウトパネルが開いているのを確認。爆発の影響とみられる。
15:50すぎ、原子炉圧力をぬいて注水するため、まずベントを実施してサプレッションチェンバーの温度と圧力を下げ、その後SR弁を開いて原子炉圧力をぬき、注水する、との手順を確認。
その直後、官邸の原子力安全委員会・班目委員長から「ベントよりSR弁開を先行すべき」との指摘が届く。1F対策本部はSR弁を開いてもサプレッションチェンバーの温度が高いままでは蒸気が凝縮せず原子炉圧力は下がらず、炉水位だけが下がっていくのでベントを先行することを16:20に確認。清水社長も了解。
1分後の16:21
本店清水社長 「清水ですがね、班目先生の方式でやってください」

吉田所長は次のように応じた。
吉田所長 「はい、わかりました。サプチャンベントラインはこのままやってちゃんと生かす、これ絶対重要だから。ただし、今それを待っているとますます燃料が危険な状態になってくる可能性があるから、操作のほうに行くということでいいですか?」
本店清水社長 「イエス、それでやってください」

16:38、SR弁開操作、しかし圧力低下はなし。17;09、2つ目の弁の開操作も失敗、17:18、燃料露出したと推測。
その後ベント弁開操作に取り組むが進まず。19:26、退避基準の検討を開始。
19:52、SR弁、ようやく開くが、本店対策本部では以下の会話が交わされていた。

19:55
本店高橋フェロー 「1号、3号、炉心溶融ですよね」
本店峰松顧問 「そうなっちゃうんだよなぁ。注水できないんだから」
本店高橋フェロー 「3機、炉心溶融ですもんね。これ、退避は何時になっているんだろうな?作れって言ったんだけど」
本店 「あとベントができればOK]
本店高橋フェロー 「武藤さん、これ、全員のサイトからの退避というのは何時頃になるんですかね」

20:06、いったん回復するかに見えた炉水位が再度ダウンスケール(燃料露出)。ベント弁は開かないまま、ドライベント(格納容器内のガスを水を通さずに出すので、放射線量はけた違いに高くなる)を検討。
20:16、避難に関する具体的な方針が出される。

20:16
本店高橋フェロー 「本店本部の方、ちょっと聞いていただけますか。えっと今ね、1Fの人たちみんな2Fのビジターホールに避難するんですよね」
本店清水社長 「足があるのか」
本店高橋フェロー 「2Fの、増田君の意見を聞いてください」
2F増田所長 「1Fからの怪我人はビジターズホールで受け入れます。それ以外の方は、全部体育館に案内します。2Fはいま、安全な状態じゃないものですから。それと水がありません。除染するだけの水がありませんから、水をぜひ持ってきてください」

周囲への影響が極めて大きいドライベントについて保安院は「東電の責任でやるのは構わない」と応じていたが、清水社長はあくまでも国の判断で実施しようとしていた。
21:04
本店清水社長 「現在、国のほうに(ドライベントの)決断を仰いでいます」

21:14、SR弁の2弁目が開き、ようやく水位が出たものの、22:53には再度原子炉圧力がかなり上昇、SR弁が閉まっていることを確認。23:24、炉水位ダウンスケール。ドライウエル圧力も上昇。

23:32
本店武藤副社長 「SR弁、早く開けないと、どんどん上がっていっちゃう」
1F 「ベントですね、ベントが一番先だ」
本店 「そう、ベントが先だね、ベント」
1F 「でもできないですから」
1F 「ベントができないと、格納容器が壊れる」
1F 「ドライウエルの小弁、開けるしかないんじゃないですか」
1F 「そう、それしかない」

その後、ドライベントかウエットウエルベント(サプレッションチェンバーの水を通してガスを出す。放射線量が低減される)かで1F,本店、柏崎刈羽の間で議論。
15日00:00、ドライベント弁を開く。しかし00:06時点でも下がるはずのドライウエル圧力は低下せず。

・1号機は12日に、3号機も13日に、原子炉には海水が注入されるようになっていました。
1Fは海に面していますが、海水面から10メートル以上ある原子炉に海水をくみ上げるだけのパワーを持つポンプはありませんでした。
そこで、津波で海水が満タンになっていた3号機逆洗弁ピットにポンプをつなぎ、そこから1,3号機に送水していたのですが、ピットも底が見えてきてピットへの海水給水が課題となりました。
4号機逆洗弁ピットはカラになっており、4号機放水口からの給水工事も難航、結局「物揚場」(船から機器を下す場所)から給水しピットへ送ることになりました。14日午後には、1,2号機に物揚場から直接送水するラインも敷設されました。

・14日には、作業員の線量限度が100m㏜から250m㏜に引き上げられました。
その経緯を伝える会話です。

12:41
吉田所長 「ちょっと、あの、こんな時になんなんだけども、やっぱり2つの爆発があってですね、かなりショックっていうか、まぁ、いろんな状態あってですね。職員が、たぶん、みんなもう落ち込んでんですよ。やれることはやるんですが、かなり士気が衰えると思います。それでいろんな業務あるんですけども、なかなか、それと被ばく線量がかなりもう、みんなパンパンになってきてますので、なかなかこの業務がですね、差し支えると思うんで、その辺の配慮をぜひお願いしたいなと思っております」
オフサイトセンター武藤副社長 「なかなか全部っていうのはあれだけど、他から新しい人入れて、入れ替えていくようなことを系統立ててできるよう考える必要があると思います。で、業務で検討しております」
本店清水社長 「職員の皆さま、たいへん、大変な思いで、対応していただいていると思います。確かに要員の問題があるんで、可能な範囲で対処方針、対処しますので、なんとか、今しばらくはちょっとがんばっていただく」
13:17
本店高橋フェロー 「官邸からちょっと電話があって、とにかく急げってことで、当然なんだけど、もう線量のこともかまわないで、500ミリまでいいんだからやれって、そういう話がありました」
14:03
1F保安班 「本店が保安院と調整しまして、緊急復旧時の個人被ばく、250まで認めるということで調整されたそうです。企業さんについては、事前契約と作業員に説明できているのが前提です。企業さんには、事前に契約が必要となります」
本店高橋フェロー 「もうこんな時に契約なんか後で何とでもなるんじゃないの、それ? まぁ本人がいやだって言えばしょうがないんだけど、とぼくは思うんだけど。まぁ、がんばってください」
オフサイトセンター武藤副社長 「250ってのは相当に限界的な数字なので、しっかり守ることが大事だと思います」
14:07
1F 「さっき武藤副社長が言われたように本当に限界的な値だと思います。したがって、これありきで作業を依頼するんでなくて、当然100を超えるような場合には、まず本部でもってちゃんと報告してもらって本当に必要性があるものに限ってのみ、認めるとかそういうふうにされるべきだと思いますけど」
吉田所長 「各班で作業の必要性をちゃんと把握したうえでお願いします。なおその上ですね、これ保安班にちゃんと話をして厳密な管理をお願いいたします」
本店高橋フェロー 「はい、私からもよろしくお願いします」

1F吉田所長が本店対策本部に要請したのは、疲労困憊し士気の衰えが懸念され、線量限度に近い被ばくをしている作業員への配慮でした。
武藤副社長もその趣旨を理解し「他から新しい人を入れ替えていくようなことを系統立ててできるよう考える」と応じました。

しかし、官邸は1F作業員の現状と吉田所長の訴えを無視するかのように「線量など構わない、500m㏜
までいいから作業を続けろ」と伝え1時間もたたないうちに「本店と保安院が調整」して線量限度が250
m㏜に引き上げたのです。

250m㏜への引き上げが、1F対策本部が決して望んでいたことではなかったことも上記会話から推察できます。

・浮かび上がる問題:問題に係る会話のごく一部のみ引用します。
① 原子炉に注水できなければ、事故の拡大をくい止めることはできない
② 原子炉に注水できても、最終的な除熱〈ファイナル・ヒートシンク)ができなければ、やがて事故は拡大していく

13:24
吉田所長 「いつSR弁が吹いても対応できるように、まず、まず、水、水。水源の確保。これ、いまどうなっている?現場行ってる?」
1F復旧班 「はい、復旧班。物揚場から3号機のピットに付けた注入ラインの健全性と、爆発寸前まえにですね、このポンプ2つ取り出し口があって、・・・」
吉田所長 「え、そこはね、そこはもう二次的でいいから。まずさ、いま水位があるんだったら、2号機の給水ラインが生きてるかどうか、これが一番重要なんで。そこを最優先に点検して、もし、それさえOKであれば、いつでも水が入れられるわけだから、そこを最優先でいきましょう。2号機の水源確保、最優先お願いします」
1F復旧班 「はい」

③ 代替電源には、限界がある
21:52
本店高橋フェロー 「SR弁の電池、なくなりそうですか?」
1F 「大丈夫と思うんですけど、もちろん怖いと思ってますんで、新しいバッテリーほしいです」
本店高橋フェロー 「120Vのバッテリーがいくつもほしいって、そういうことでしょ?」
1F 「はっきり言って120Vが30組位ほしいです」
本店高橋フェロー 「小名浜にあるか調べてもらってるんで、あれば持ってけるんだけど、その前にサイトに予備が30個位あるよね」
1F 「えーと、ちょ、ちょっと確認します。まとめてもう1回、あの、ご連絡します」
本店高橋フェロー 「予備がなかったんじゃ、1個はずして、大事にとっとかなきゃいけないから」

④ 放射能放出・汚染は事故を拡大する最大要因の1つである
22:31
本店武藤副社長 「流量止まっちゃわないように、現場で見てるんだよね、これ」
吉田所長 「簡単に言われるんですけど、どのエリアもものすごい高い、あれなんで。避難場所もないところで監視するってのは、ものすごく大変なことなんです。なんで見てなかったってよく言われるんですけど、見てられないんですよ。この人間で。その線量の所で。それはご理解いただきたい」

⑤ 外部要因による事故、とりわけ地震との複合災害となった場合は、何重にも困難が重なり、事故は破局に向かって拡大していく

⑥ 事故対応が複数基におよんだ場合、対処は極めて困難となり、当該事業所は本社も含めて、機能不全に陥り、事故処理能力を喪失する
22:00
本店高橋フェロー 「2号のベントってあきらめちゃったんだっけ?」

本店武藤副社長 「3号、水入ってんだっけ?」

吉田所長 「あのね、あの、ここでさ、もう明確に頭が明晰なやつ、ほとんどいないから、いきなりガンガン聞かれてもさ、答えづらいんだけど」

⑦ 発生する事象について、短時間で的確な判断をすることは、ほぼ不可能である
11:16
本店清水社長 「どういうことが起こったのか、まだわからない?」
本店小森常務 「水素爆発がまず考えられますけど、ちょっと規模が大きいことになると」
吉田所長 「11時15分のパラメータを取った結果、格納容器は健全と判断しております。したがいまして、1号機の事象とほぼ同等と考えています」
本店小森常務 「しかし、何かちょっと、炉圧が」

⑧ 事故対応設備・機器・車両等は、いくら用意しても、操作・運転・管理等の人的配置の裏付けがなければ、役に立たない
22:04
吉田所長 「あとですね、いま、現場が一番混乱してるのは、いろんなもの注文するんだけど、それをさばく人がものすごく弱いんです。そんで、物がわかって、ちゃんとデリバーできて、チェックできて、そういうことができるチーム化してもらいたいと思ってんですけどね」

⑨ 原発事業所の経営トップは同時に技術トップでないと、重要事項の決断を誤る可能性がある

⑩ 国当局は、事故に際して的確な判断やアドバイスができるのか、疑問だ

⑪ 東電の線量評価は、公表されなかった
06:52
本店保安班 「被ばく評価結果です。前提条件は100%放出。ヨウ素が支配的です。3時間後最大ポイントは敷地境界辺りで5700m㏜、ヨウ素です。250m㏜圏内がずっと相馬郡のほうまで3時間以内に広がっていくという評価になります」
オフサイトセンター武藤副社長 「20㎞の所はどのくらいの線量になるの?」
本店保安班 「3時間積算線量で250m㏜です。時間経過につれて線量も増えていきます。24時間後のデータです。風が陸地側に吹いているという前提で考えると、20㎞ちょっと先の所まで250m㏜を超えるエリアが広がっています」

⑫ 事故が厳しい状況になればなるほど、国・事業所は情報を操作し、隠ぺいする  
08:40
1F広報班 「いま、3号機格納容器圧力上昇ということでプレス文を用意しておりますが、国がマスコミを止めているということです。一方で、福島県から、9時に関係部長会議を開くのでそれまでにこのプレスを行うよう依頼されております。調整をお願いします」
本店小森常務 「県と保安院で調整してもらうしかなくて、いま原子力災害特別措置法に基づいた国のガバナンスがうんと強くなってるわけだから」
本店 「じゃあ、まず官邸に告げ口、官邸に告げ口。県からこう言われて困っていると」
本店石崎部長 「そういう状況を説明しても、県は必ず単独でプレスすることになるから、その時どうするかってことを考えてといたほうがいい」
08:55
本店 「先ほどのプレスに関する情報ですが、絶対にダメだと言うのが保安院の強い指示だそうです」
09:37
本店 「先ほどの圧力高(3号機格納容器)の話、作業員一時退避としてNHKに放送されているようです」
本店石崎部長 「福島県には、(東電)福島事務所が話をして関係部長は了解、部長が知事に話して知事もしぶしぶ了解、9時の関係部長会議では15条プレス文はでなかったと、聞いています」
本店小森常務 「テレビにこんなのが出て、県としては印象悪いでしょうね」
本店石崎部長 「ええ、相当悪いと思います。県知事のスタンスは県民の安全を守るという観点で情報を出さないのはけしからんと。後々ちょっと辛い立場になることは間違いないですね」

⑬ 事故が限りなく破局に近づき、打つ手がなくなり、事業所員が避難した場合、事故現場の最終的な責任は、誰が、どのようにとるのか

⑭ 事故対策については、下請け企業に依存せず、事業所員で100%完遂できる態勢が必要である
08:57
本店総務班 「要するに避難区域の中に入っていくということに対して、民間の会社の人たちは当然拒否を始めてるんです。そうなれば、うちの人間しかいない、そのなかで(トラックを運転できる)大型免許を持っている人を探すのがまた、大変な騒ぎになる、じゃあ自衛隊かというのも、今すごい拒絶反応がありまして、官邸を通してやってはもらうんですけども、現実には部隊班長の判断になりまして結局行かせられないみたいな話になっちゃう状況です。自衛隊はあんまりあてになんないなぁっていう感じです」

⑮ 3号機の爆発を防げなかったことは、東電が事故処理能力を喪失していたことの現れである


事故発生3日目の14日、東電は本店も含めて機能不全に陥り、事故処理能力を喪失していました。更なる最悪の事態、2号機の爆発、4号機使用済み燃料プールの冷却不能が避けられたのは、まさに偶然による「運のよさ」でした。

津波想定の甘さ、あまりに無防備だった事故対策等、事故発生・拡大の原因が指摘されています。しかし、3月12~14日の東電テレビ会議の会話は、原発の事故は対策が万全に用意されていても、そのうちの1つでもうまくいかないと対策は機能せず、事故は想定を超えて拡大し、止めることはできないことを明らかにしています。

1Fサイトにとって事故の本質とは、2度目の爆発を防ぎ、3基のメルトダウンを止めることは不可能だったことであり、そのことを認めることは東電が果たすべき責任の第1歩だと思います。そこをあいまいにして、消防車を何十台も配備すれば、防潮堤を高く積み上げれば、電源車を高台に配備すれば等々、事故は防げるとする東電は、核エネルギーを制御できるという、事実に反する極めて危険な思い込みに陥ったまま、柏崎刈羽原発を再稼働させようとしています。

原子炉に注入された大量の海水は、炉心損傷・燃料溶融していた原子炉内で「高濃度汚染水」となりました。「循環注水」に転じたとはいえ、事故発生直後からの「原子炉冷却汚染水問題」は解決方法のめどが未だついていません。事故は収束していません。終わっていません。

にもかかわらず、柏崎刈羽原発を再稼働するという東電は、まるで火事を起こした工場が、火を消し終えず後始末も終えていないのに新たな工場を建て始めるようなものです。そんな「無責任きわまりない」ことは許されないはずなのに、なぜ原発ではまかり通るのか、そこに原発が抱える深い暗闇と根深い問題があるのだと思います。「いのち・原発を考える新潟女性の会」は、皆さんと共にその暗闇と問題に挑み、新たな時代を開くことにわずかでも貢献したいと思っています。

文献:「福島原発事故東電テレビ会議49時間の記録」
    紙面の都合で発言内容を若干縮小等しました。
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